新専門医制度の基本領域19学会まとめ【初期研修医必読】

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。
医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

業界動向

公開日:2021.02.18
更新日:2023.07.26

新専門医制度の基本領域19学会まとめ【初期研修医必読】

新専門医制度の基本領域19学会まとめ【初期研修医必読】

2018年4月からスタートした新専門医制度の新設により、数ある専門医資格を取得するためには19の基本領域(2021年2月現在)の専門医取得が必須となりました。しかし、数ある選択肢の中で、数年先を見据えたキャリアを選択するのはなかなか難しいもの。

今回は、専門医の選択を控える初期研修医の方に向けて、新専門医制度の「19の基本領域」、また基本領域に指定されている19の学会それぞれの特徴について解説していきます。どのような選択があり、各学会でどのような取組みを行っているかなどキャリア選択の参考にしてみてくださいね。

新専門医制度の「基本領域」

新専門医制度の「基本領域」?

画像:サブスペシャルティ領域の専門研修について(医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会 平成30年度)

従来の制度では、各学会が独自の認定プログラムを運用して専門医資格を認定しており、医師の技術レベルにばらつきがある点が懸念されていました。また、複数の学会で同時に専門医資格をとれたために、集患を目的に様々な診療科の専門医資格を広告に使用するなど、「専門医の意義」が問い直されてきた背景があります。

2018年4月からはじまった新専門医制度は、各学会により独自に組まれてきたプログラムを中立の立場となる日本専門医機構で運用することで、 "より質の高い医療を提供できる医師の養成"を目的に新設されました。

専門医を取得するためには原則として、医師は2年の初期臨床研修を終えたあと、内科や外科、産婦人科などを含む19の基本領域から診療科を選び3年以上「専攻医」として研修を積むことが定められています。また、より専門性の高いサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得するためには、関連する基本領域の専門医資格の取得が必須条件となります。

「19の基本領域」の研修は3~5年間のプログラム制ですが、基本領域とサブスペシャルティ領域を同時に研修できる「連動研修」が認められるケースもあるので、研修プログラムについては事前によく確認しておきましょう。

「基本領域」19学会の特徴を徹底解説!

「基本領域」19学会の特徴を徹底解説!

ここでは、専門医資格を取得するうえで必要となる19の基本領域に指定されている学会について、それぞれの特徴と概要を説明していきます。基本領域には具体的にどのような種類があり、どのような特徴を持っているのかを確認していきましょう。

内科

日本内科学会は、「超高齢社会化の進む日本の医療を支えられる内科医」、「患者一人ひとりの生活の質に配慮し、全身を診る臓器横断的な診断治療ができる内科医」の育成を目指しています。内科専門医は、消化器病、循環器、呼吸器、血液、内分泌代謝、糖尿病、腎臓、肝臓、アレルギー、感染症、老年病、神経内科、リウマチ、消化器内視鏡、がん薬物療法のサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得できます。

▽参考記事はコチラ
一般社団法人 日本内科学会

小児科

日本小児科学会は、小児医療・小児科学の発展と、子どもの健康・人権・福祉の充実・向上を目指しています。専門研修では外来、病棟、健診などで臨床経験を積み、5つの小児科医像「子どもの総合診療医」「育児・健康支援者」「子どもの代弁者」「学識・研究者」「医療のプロフェッショナル」を達成できるよう専門知識を習得していきます。

▽参考記事はコチラ
公益社団法人 日本小児科学会

皮膚科

皮膚科専門医は、皮膚にまつわるすべての疾患が診療対象となります。日本皮膚科学会は、日本でハンセン病や性感染症の治療と撲滅をけん引してきたほか、世界皮膚科学会連合と協力して諸外国の皮膚科医育成事業に貢献するなど、国内・国外で積極的に活動しています。今後は、アトピー性皮膚炎や遺伝性皮膚疾患の研究・治療の発展に注目が集まっています。

▽参考記事はコチラ
公益社団法人 日本皮膚科学会

精神科

「こころと脳」を対象に、うつ病、双極性障害、発達障害、PTSD、睡眠障害、認知症、精神科救急など多岐にわたる精神疾患を専門とします。患者さまの脳・神経の働きを知るために最新知識を駆使しながら、目の前にいる人の「こころ」に耳を澄ませ、医師として人として寄り添う高い倫理性と診療態度が求められます。日本精神神経学会は、信頼される精神医療を築くことを目指し、学問研究・精神科医研修の質を高めています。

外科

日本外科学会は、外科学の学術文化の発展と医療の向上に貢献し、国民の健康と福祉に寄与することを掲げています。また、働き方改革や女性外科医への活動支援、情報通信技術の活用による遠隔医療の実現など、若手外科医の働きやすい環境の整備にも積極的です。外科専門医は、6つのサブスペシャルティ領域(消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺、内分泌外科)の専門医取得を目指すことができます。

▽参考記事はコチラ
一般社団法人 日本外科学会

整形外科

整形外科は、運動器官を構成するすべての肉体組織を対象に、病態の解明と診療を行う専門領域です。超高齢社会に向かうなか、老若男女がより充実した生活を送れるような体と運動器の健全性を維持・向上することが大切であり、整形外科の社会的需要はますます高まっています。日本整形外科学会は、ロコモティブシンドロームの概念を提唱し、国民の健康寿命の延伸に貢献する活動を続けています。

産婦人科

日本産婦人科学会は、女性と生まれてくる子どもたちの幸せのために、生殖・婦人科腫瘍・周産期・女性ヘルスケアなど、あらゆる年代の女性と子どもの健康向上に資する医学研究を担っています。産婦人科は、外科的治療から内科的治療まで一貫して行う特徴があり、専門家集団としての産婦人科専門医の育成が非常に重視されています。また、出生前診断やワクチン接種など、世界的に議論が活発なテーマに科学的根拠と倫理性を持って向き合い、教育と啓発に貢献しています。

眼科

日本眼科学会は、眼科学の知識と医療技術を高め、眼科医の養成と活動支援を行うことを目指しています。眼科医は眼に関するあらゆる疾病・症状に対応できる基礎的な診療能力を持つことが求められているのです。近年では白内障の日帰り手術が可能になるなど、眼科分野における医療技術は大きく進歩しており、最新知識・技術の習得が重要になっています。人の知覚の大部分を占める「視覚」。その治療に携わる眼科医は、患者さまの役に立っていることを日常的に実感できる診療科でしょう。

▽参考記事はコチラ
日本眼科学会

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は、耳、鼻、口腔・咽頭、喉頭、気管、食道、頭頸部と、診療の範囲が頭部の広範囲にわたる領域。また、内科的治療と外科的治療のいずれもカバーし、乳幼児から高齢者まで様々な年代の患者さまの治療に携わる点が特徴的です。

泌尿器科

泌尿器科専門医は腎尿路系のあらゆる疾患を対象とし、内科的診断のほか、男性の生殖器疾患の外科的治療も担当します。診療の対象は内分泌疾患、小児科泌尿器の疾患、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、精巣がんなどの治療から、人工透析や腎臓移植など多岐にわたります。

▽参考記事はコチラ
日本泌尿器科学会

脳神経外科

脳と神経は機能が広範で障害発生時の症候が多種多様。その治療は神経系の手術のほか、救急対応やCT・MRIなどの画像診断、リハビリテーションなど多岐にわたります。日本脳神経外科学会では、早期から研修プログラム制を実現しており、現在は各都道府県に1つ以上の研修プログラムを設けています。

放射線科

放射線科は放射線治療、画像診断、核医学、IVR(interventional radiology)などをテーマにしており、最先端技術の装置や手法を駆使する診療科です。CT、MRI、PACS、IMRTなど最新技術が次々と導入され、近年ではDeep Learningや人工知能も応用しています。切らないがん治療を実現するなど、放射線科が携わる医療技術の進歩は目覚ましいものがあります。

麻酔科

日本麻酔科学会は、手術中の麻酔管理を含む周術期医療のほか、救急医療や集中治療における生体管理、緩和医療やペインクリニックの鎮痛療法、産科麻酔など、様々な場面で患者さまに安心・安全な医療を提供する麻酔領域専門の学会です。手術中の麻酔だけでなく、術前・術中・術後の全身状態を注意深く診断することが求められ、患者さまにとっては安心と安全の「最後の砦」ともなるスペシャリストです。

▽参考記事はコチラ
公益社団法人 日本麻酔科学会

病理

病理医はDoctor of Doctorsとも呼ばれ、臨床医からの診断依頼に応えて「疾患の確定診断」を行います。病理診断・病理解剖を通じてチーム医療に貢献、また、病気の成り立ちやメカニズムの研究を通じて医学全体の発展に寄与することが使命です。治療薬選択の決め手となる組織診、細胞診、また、患者さまが亡くなった際の病理解剖・調査も担っています。

▽参考記事はコチラ
一般社団法人 日本病理学会

臨床検査

臨床検査医学はエビデンスベーストの臨床医学の根幹に位置しています。生体内で何が起こっているのかメカニズムを検体検査と生理機能検査を通じて解析し、検査結果から病態を推測して医療現場にフィードバックします。臨床検査専門医は、診療を担当する医師と検査技師の中間に立ち、臨床検査の的確な情報を素早く共有することで、患者さま一人ひとりの診療に貢献し検査の品質・精度を管理する役割も。また、ゲノム医療の実用化に向けても臨床検査は重要性を増しています。

救急科

救急診療のプロフェッショナルであり、あらゆる危機に冷静に対応します。救命救急治療、院内急変対応、救急外来での救急搬送対応、ドクターヘリでの現場出動、救急隊のメディカルコントロール、災害・事故現場や航空機内での救命活動など、日々多くの場面で救急医の力が求められています。集中治療の知識・スキルと、優先度を判断・決断しながら複数の患者さまに対して高度な初期医療を提供する能力を養成します。24時間体制の救命救急センターで質の高い申し送りとシフト制を導入し、救急医のワークライフバランス向上に積極的に働きかけています。

▽参考記事はコチラ
一般社団法人 日本救急医学会

形成外科

形成外科は、生体機能と整容の両方を診療領域とし、「欠損した部位を再建する(creative surgery)」を目指す診療領域です。形成外科専門医は、見た目の形態、機能を治すこと、治癒した後の患者さまのQOLを高めて社会復帰できるまでの「完治に向けたサポート」を行います。対象となる疾患も増えているほか今後はさらに需要も高くなると考えられており、美容医療との親和性が高い診療科で女性の学会入会者の割合が増えているようです。

リハビリテーション科

リハビリテーション医学は、疾患・外傷・加齢などによる機能障害を回復・克服し、人々の健康と活動性を支える医学分野です。リハビリテーション科専門医は、傷害の予防から診断、治療を行い、患者さま本人の社会参加に向けてのリハビリテーションにも貢献します。歩行・食事・排泄・就寝などの日常動作から社会的活動・余暇的活動まで、様々な要素が有機的に組み合わされている「ヒトの活動全般」に関する医学領域。日本リハビリテーション医学会では、他学会・団体、ロボット研究などの産学機関と連携し、リハビリテーション医学・医療におけるハブ機能として役割を担っています。

▽参考記事はコチラ
日本リハビリテーション医学会

総合診療科

総合診療医はプライマリ・ケアのプロフェッショナルであり、地域医療の安心・安全なコミュニティを長期的に構築・維持するスキルが求められます。多くの人の「まず相談できるお医者さん」になると同時に、各診療科専門医とも連携して高度医療の実現に貢献します。従来の日本プライマリ・ケア学会からはじまり、現在はプライマリ・ケアとあわせて医療機器を用いて診断を行う「病院総合診療医」の必要性が重視されるようになった背景から、日本病院総合診療医学会が設立されました。

▽参考記事はコチラ
日本病院総合診療医学会

自らの興味や志向にあわせて診療科選択の決定を

今回は、基本領域の19学会について概要と特徴をご説明しました。「新専門医制度」のもと、基本領域に定められた各学会では、優れた医師の育成のために様々な工夫と試みを新たに取り入れています。

基本領域の選び方は人それぞれ異なると思いますが、「どの診療科に興味をもっているか」「自分はどのような医師になりたいか」という原点に何度でも立ち返ることが大切です。

また、研修がカリキュラム制からプログラム制に変わったり、基幹施設と連携施設をローテーションする循環型研修が導入されたりと、従来の研修制度からの変更点が複数ありますので、事前に理解を深めておくようにしましょう

ドクタービジョン編集部

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

今の働き方に不安や迷いがあるなら医師キャリアサポートのドクタービジョンまで。無料でご相談いただけます