労働衛生コンサルタントと産業医の役割の違いとは?

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。
医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

キャリア

公開日:2021.07.02

労働衛生コンサルタントと産業医の役割の違いとは?

労働衛生コンサルタントと産業医の役割の違いとは?

労働衛生コンサルタントとは、厚生労働省が管轄する国家資格です。労働者の安全衛生水準向上のため事業所の診断・指導を行います。27ある受験資格のうち、医師国家試験合格者も資格取得試験の受験資格対象です。

とはいえ、この資格を持つ医師は決して多くなく、具体的にどのような業務を担うのか、どのような試験をパスすれば資格を得ることができるのかよくわからない方も多いでしょう。

そこで今回は、同じく事業所内での健康管理などを担う産業医との違いを比較しながら、労働衛生コンサルタントについて詳しく解説します。

労働衛生コンサルタントの仕事内容

労働衛生コンサルタントは、厚生労働省大臣によって与えられる国家資格の一つです。事業場での労働衛生水準向上を図るべく、事業者からの依頼に応じて事業場の評価を行い、問題点の指摘や改善方法の指導を行うのがおもな役目とされています

近年、過剰な時間外労働による過労死などが続発したことに伴い、事業者には労働者の衛生管理対策が強く求められています。事業場の衛生管理に関する高度な専門知識をもつ労働衛生コンサルタントの需要は今後益々高まっていくでしょう。

では、第一に具体的な業務について詳しくみてみましょう。

事業所内での労働衛生の評価や改善計画の作成

労働衛生コンサルタントのおもな業務は、種々の「ハラスメント」、過重労働問題、職場環境に起因する健康被害など事業場において労働者の心身の健康を損なう問題がないか評価することです。さらに、問題点をどのように解決していくべきか計画を立てます。

単に計画を立てるだけでなく、事業者が計画を遂行していくなかでどのような問題があるのか再評価することも大切な業務です。

事業者等への労働衛生に関する教育

労働衛生コンサルタントは、事業者や労働者に対して労働衛生に関する教育や講師を務められます。事業場において労働衛生水準の向上を目指すには、労働衛生コンサルタントなどの有資格者だけでなく、事業者と労働者がどのようなことに注意すべきかを正しく理解する必要があります。両者に正しい知識を教育し、意識変容を促すことも任務なのです。

産業医との違いについて

産業医との違いについて

事業場内での労働者の健康管理を行う「産業医」は日本全国で約10万人。企業の専任として勤務するケースもあれば、臨床の場を本業としてアルバイトで産業医業務を担うケースもあります。医師にとっては、労働衛生コンサルタントよりも産業医の方が身近な資格ではないでしょうか。

両者は事業場の管理・指導を行うことは共通していますが、どのような違いがあるのでしょうか?詳しくみてみましょう。

産業医になるには医師免許が必要

産業医資格を得るための条件は、「医師であること」と「厚生労働省が定める研修を受けるなど労働者の健康管理を行うための医学知識があること」とされています。つまり、医師免許を所持していることが必須なのです。

一方、労働衛生コンサルタントは医師免許がない方でも「大学等で理系過程を修め、5年以上産業安全業務に従事した者」など厚生労働省が定める要件を満たしていれば受験資格があります。

役割・立場の違い

労働衛生コンサルタントは、事業場の評価・指導を行うことで労働者の労働衛生向上を図ることがおもな業務となります。一方、産業医は事業場内の巡回などは行いますが、労働者の健康診断やストレステストのチェック、保健指導など労働者の健康管理を図っていくことがおもな業務です。

産業医資格の条件である「労働者の健康管理を行うための医学知識を有していること」として、労働衛生コンサルタント(試験区分は保健衛生か労働衛生工学)であることも要件となっています。そのため、産業医であれば労働衛生コンサルタントの業務を行うことが可能な場合もあります。

両者は同じく事業所内での労働者を守るのが使命ですが、医師でなければなれない・医師でなくてもなれる、という点が最も大きな違いといえるでしょう

労働衛生コンサルタントの資格取得方法

労働衛生コンサルタントの資格取得方法

所定の試験に合格する必要がありますが、誰もが試験を受けられるわけではありません。以下の条件に当てはまる方が受検可能です。

  • 大学等で理系過程を修め、5年以上労働衛生業務に従事した経験のある方
  • 短期大学等で理系過程を修め、7年以上労働衛生業務に従事した経験がある方
  • 高等学校等で理系過程を修め、10年以上労働衛生業務に従事した経験がある方
  • 受験資格:安全衛生技術試験協会

    また、労働衛生業務に従事した経験がない場合でも、医師、歯科医師、薬剤師、保健師(経験10年以上)、技術士、一級建築士など所定の資格を有する方にも受験資格が認められています。

    試験内容について

    労働衛生コンサルタント資格取得のための試験は、保健衛生と労働衛生工学の2つに分けられています。しかし、どちらに合格したとしても担うことのできる業務に制限があるわけではありません。

    いずれも試験は、一次試験で労働衛生関係法令や労働衛生に関する一般的な事柄などに関する筆記試験を受け、合格者のみが口頭試問の二次試験へ進みます。なお、すでに産業医資格を所持している医師は一次試験が免除され、二次試験のみを受験できます。

    合格率は一次試験が概ね30%、二次試験が50%程度なので、難易度は比較的高めといってよいでしょう。資格取得に挑戦する場合は、しっかりと対策を立てておく必要があります。

    専任産業医などを目指す医師におすすめの資格

    専任産業医などを目指す医師におすすめの資格

    労働衛生コンサルタントは昨今重要視されている労働衛生の向上を図る重要な任務を担います。難易度が高い国家資格でもあり、受検するには様々な要件をクリアしなければなりません。医師にも受験資格があり、特に産業医資格を所持していると筆記試験は免除になります。

    労働衛生コンサルタント資格を所持すれば、安全管理者に選定されることも可能であるため、専任産業医などを目指す医師は資格取得を目指すのもおすすめです。挑戦する方は十分な対策を行って試験に挑みましょう。

    ドクタービジョン編集部

    医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

    今の働き方に不安や迷いがあるなら医師キャリアサポートのドクタービジョンまで。無料でご相談いただけます