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医療動向 公開日:2021.09.22

医師の働き方改革「タスクシフティング」とは?事例も紹介

医師の働き方改革「タスクシフティング」とは?事例も紹介

ハードワークで知られる医師の働き方改革の推進に向けた取り組みのひとつである「タスクシフティング」。医師業務の一部を、看護師や薬剤師など他の医療従事者に移管することにより医師の長時間労働や業務においての負担を軽減することがねらいです。

本記事では、タスクシフティングの概要、導入に至る背景と今後の動向、推奨される業務の一例、実際にタスクシフティングを導入した医療機関の成功事例、タスクシフティングを進めるうえで医師が押さえたいポイントを解説します。

タスクシフティングとは

タスクシフティングとは

医師が担っている業務は、医師でないと対応できないものと、必要な技術もしくは資格をもつ医療従事者であれば対応可能なものに分けることができます。

タスクシフティングは、医師への業務集中を回避する考えとそのための取り組みです。対応可能な患者さまの範囲および対応の変化を明確にしたうえで、医師以外でも行うことが可能な業務を薬剤師や看護師といったコメディカルへ移管します。

医師の劣悪な労働環境と過重労働は、長年問題視されてきました。医師の労働時間短縮と心身の健康を確保するための対策として、2024年4月に施行する医療法の改正事案には、医師の時間外労働の上限規制に向けた対応が盛り込まれています。こうした背景から、今後医療現場ではタスクシフティングが急速に進んでいくものと予想されています。

タスクシェアリングとの違い

タスクシフティング(業務の移管)と似ている用語に「タスクシェアリング(業務の共同化)」があります。

タスクシェアリングは、ある特定の医師のもとに集中している業務をそれ以外の医師が巻き取ることを指します。業務を分配する相手と分配内容が異なるので、両者を間違えないよう注意しましょう。

タスクシフティングが導入された背景や今後の動向

タスクシフティングが導入された背景や今後の動向

医師の長時間勤務には、救急搬送や容態の急変への救急対応、手術および外来対応の長時間化、応召義務、職業意識の高さなど、医師という職業ならではの背景が関係しています。

また近年では、新薬登場による薬剤管理の複雑化、書類作成など事務作業の煩雑化などもあり、医師にかかる負担はさらに増加しているといえるでしょう。

「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が2021年4月8日に可決されたことを受けて、医師の働き方改革に向けた本格的な取り組みが2024年度から開始します。

すべての勤務医を対象に、時間外労働は原則「年間960時間以下」が条件となるよう定められました(いわゆるA水準)。しかしこれには例外があり、救急医療のように地域医療を円滑に遂行するうえで欠かせない医療機関(いわゆるB基準)、研修医を筆頭に集中的に多くの症例を経験する必要があると判断された医師(いわゆるC基準)に該当する場合は時間外労働の上限が緩和され、「年間1,860時間以下」が条件になります。

タスクシフティングに関連した直近の取り組みの例としては、日本麻酔科学会がすすめる「周術期特定行為研修」プログラム検討とパブリックコメントの募集があります。同学会では麻酔科医から看護師へのタスクシフティングを推奨。その一環として、術中麻酔管理領域における特定行為研修のうち複数科目をパッケージ化して実施することで、短期間の認定者要請を目指しています。

また精密機器メーカーであるリコージャパンは、タスクシフティングによる医師以外の医療従事者の業務負荷を軽減するため、クラウド型医療機器管理システムや、医療機器の基本点検サービスの提供を始めています。民間企業によるタスクシフティングの推進も今後注目です。

タスクシフティングが推奨される業務

タスクシフティングが推奨される業務

限られた時間のなかでより効率良く業務を回すには、職種を超えたチーム医療の推進が鍵を握ると考えられています。なかでもタスクシフティングの連携先として想定されているのは以下の職業です。

  • 看護師
  • 薬剤師
  • 診療放射線技師
  • 臨床検査技師
  • 臨床工学技士
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 視能訓練士
  • 義肢装具士
  • 救急救命士
  • 医師事務作業補助者(ドクタークラーク・医療クラーク)

  • 2019年に実施された「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」(以下、検討会)によると、同年に厚労省が実施したヒアリングに対して6分野、286業務・行為が医師から他職種にタスクシフティングできる可能性があるとの意見が出ました。

    これを受けて検討会で議論を重ねた結果、診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士・救急救命士の4職種では、2021年10月から実施可能な医療行為が拡大する予定です。

    同時に、上記専門職以外へのタスクシフティングも検討されています。とくに現行制度下で実施可能な業務として、患者さまに対する説明と同意、各種書類の下書きと作成、診察前の予診などは、他職種への分散が推進されている事項です。また医師法に定められた医療行為であっても、医師の指示下での診療補助を前提として、医療の質と安全性を担保しながら他職種への業務移管が待たれています。

    タスクシフティングの事例

    タスクシフティングの事例

    ここでは、全国に先がけてタスクシフティングを導入している神奈川県と高知県の医療機関における取り組みを紹介します。

    医療法人沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院

    ER型救急システムを採用する同院では、ER受診の結果入院加療が必要と診断した患者さまに対し、病棟薬剤師が面談と常備薬の確認を行っていました。しかし従来のシステムでは病棟薬剤師と患者さまが接するまでに時間がかかることから、実際には医師が持参薬情報を患者さまに直接確認しており、医師の業務負担が増える要因となっていました。

    そこで同院では、2017年4月よりERでの業務を担当する薬剤師(以下、ER担当薬剤師)を置き、病棟入院の待機中の時間を利用した入院時面談、持参薬確認などの業務に従事。その結果、薬剤師面談の開始までにかかる時間と、持参薬や面談で得た情報を医師に共有するまでの時間短縮につながっています。医師は情報共有が早まったことで診療の効率化、また病棟薬剤師にとっても業務負担軽減が実現しました。

    高知県高知市 近森病院

    高知県中央部に位置する近森病院は、三次救急を担う医療機関で当該地域の救急医療の要ともいえる存在です。円滑なチーム医療実践のため「業務の標準化」と「情報共有の仕方」が重要になると考えた同院。病院経営に必要なマネジメントの本質「Focus(集中)」、つまり「選択と集中」に基づくタスクシフティングを進めています。

    ここでいう「業務の標準化」は標準化可能なルーチン業務の移行、「情報共有の仕方」は暗黙知から形式知への転換です。

    病棟対応では、病院常駐型のチーム医療を推進しています。医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフなど多職種のスタッフがチームとして1人の患者さまをみることで、各スタッフによるきめ細やかな診療とサポートの実施、形式知による情報共有が可能となりました。

    とくに、薬剤師は薬剤業務の標準化により薬剤処方業務への積極的介入、管理栄養士は栄養評価と栄養サポート業務の標準化による栄養学的な観点の涵養、臨床工学士はチームごとに扱う医療機器の分担による高度な専門性の習得など、それぞれの立場から医師の業務負担軽減に貢献しています。

    タスクシフティングで医師が押さえたいポイント

    タスクシフティングで医師が押さえたいポイント

    2024年度からの医師の働き方改革始動に向けて、今後各医療機関でのタスクシフティングが進むと予想されています。タスクシフティングを行うにあたり、医師が把握しておきたいポイントは以下です。

    多職種との信頼関係の構築

    タスクシフティングは、チーム医療による有機的な連携のもと推進すべきとされています。医療は医師監督のもとで医療職全体の共同により実施されてきました。安全かつ円滑な医療行為提供のためにも、医師はかかわるスタッフそれぞれの職域を改めて理解したうえで、相互間の信頼関係を構築することが今後より一層求められるでしょう。

    看護師などの激務化に注意

    2015年時点で「特定行為に関わる看護師の研修制度」が創設されていることから、一部業務は看護師へのタスクシフティングが進んでいます。さらに日本看護協会では「ナースプラクティショナー」制度化導入を想定した検討を要望していることもあり、今後さらなるタスクシフティングが期待されています。そこから、看護師への業務集中化を起こさぬよう現場間でのコントロールが課題になるでしょう。


    ほかの職種の業務拡大に注目

    2021年10月から、医療機関の救急外来において救急救命士が応急処置業務に携われるようになります。これを受けて、院外業務を依頼する医療機関では委員会の設置や各種院内研修の実施が義務化されるなど、救急救命士による業務の質確保に向けた働きかけが求められるようになります。

    医師の働き方改革はこれから

    医師の働き方改革はこれから

    医師の心身の健康を守るため、働き方の見直しと対策は緊急かつ重要な課題として認識されていました。今回ご紹介したタスクシフティングの導入と活用は、医師の働き方改革を推進するうえで重要な意味を持つと言えるでしょう。

    2024年度に控える働き方改革の本格的な始動を前に、各職種の職域を再認識するとともに、院内業務をより円滑に委託・循環できる仕組みづくりの検討を進めましょう。

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