年収1,500万の場合、95歳まで今と同じ生活水準を保つためには65歳時点で老後資金がいくら必要?

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公開日:2022.05.24

年収1,500万の場合、95歳まで今と同じ生活水準を保つためには65歳時点で老後資金がいくら必要?

年収1,500万の場合、95歳まで今と同じ生活水準を保つためには65歳時点で老後資金がいくら必要?

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    まずは現在の生活水準、つまり、「月にどれだけ支出しているのか」を把握する必要があります。今回は総務省の家計調査(家計収支編/二人以上の世帯/年間収入階級別/2022年5月)のデータを利用して計算します。この調査によると、年収1,250~1,500万円の世帯における消費支出は月額およそ51.3万円です。

    ただし、老後の生活費を試算するため、今回は教育費およそ5.6万円を除いた約46万円を生活に関する支出と想定します。なお、お子さんが独立した後の消費支出は8割程度に見積もることが一般的であるため、46万円の8割で36.8万円とします。また、医師のご家庭では旅行や趣味・教養および身内の付き合い等に当てる金額がより大きくなる傾向があるため、今回は毎月5万円ほどの予算を「ゆとり分」として見積もることとし、消費支出を月額およそ42万円と想定します。

    さらに、社会保険料と税金を考慮する必要があります。なぜなら65歳以降も公的な医療保険や介護保険に加入するため保険料を納める必要があり、また、年金等の所得に応じて所得税や住民税を負担する必要もあるからです。住んでいる自治体によって保険料に差異があるため、今回は東京都大田区在住と仮定して試算してみましょう。

    まずは老後の収入について理解しましょう。老後における収入の柱は公的年金です。医師本人と配偶者(専業主婦/夫)の年金額は以下の計算式で求められます。

    【医師本人の老齢厚生年金の額(A+B)】

    A:2003年3月以前の加入期間
    平均標準報酬月額×7.125/1000×2003 年3月までの加入期間の月数

    B:2003年4月以降の加入期間
    平均標準報酬額 ×5.481/1000×2003 年4月以降の加入期間の月数

    【医師本人および配偶者の老齢基礎年金の額】
    月額64,816円(2022年度価額)

    仮に平均標準報酬額を90万円(標準報酬月額の上限 65万円+標準賞与額の上限 150万円を2回分)で2003年4月以降36年間勤務した場合、上記計算式に代入すると、以下になります。

    老齢厚生年金年額:(65万円+150万円×2回/12ヵ月)×5.481/1000×12ヵ月×(60歳-24歳)=2,131,012円

    この結果から、令和4年度の老齢基礎年金の満額受給月額は64,816円 であるため、夫婦の年金合計(月)は約31万円となります(※)。

    (※)
    夫月額:老齢厚生年金2,131,012円÷12+老齢基礎年金64,816円≒24.2万円
    妻月額:老齢基礎年金64,816円(老齢基礎年金年額約777,800円)

    次に社会保険料を計算します。まず、年間国民健康保険料を計算します。大田区では、

    夫の年金所得:(2,131,012円+777,800円)-65歳以上の公的年金等控除額110万円=1,808,812円
    妻の年金所得:777,800円-65歳以上の公的年金控除額110万円=0円

    となり、大田区の計算シミュレーションに以下の通り入力します。

    ・夫の分として、65歳 所得1,808,812円
    ・妻の分として、65歳 所得0円

    すると、算定基礎額は1,378,812 円と出力されます。なお、同シミュレーション内で国民健康保険料(見込み)試算結果は年間保険料240,758 円です。

    次に、年間介護保険料を計算します。段階別に保険料が定められており、大田区の場合

    妻:第4段階(59,040円)
    夫:第7段階(90,000円)

    となり、合計149,040円です。

    したがって、夫婦合計社会保険料(年)は389,798円(国民健康保険料240,758 円+介護保険料149,040円)となります。

    最後に税金の概算を求めます。

    税金=(年金所得1,808,812円-基礎控除48万円--社会保険料控除330,758 円)×15%(所得税5%と住民税10%の合算税率)=149,708円(※)

    (※)各人の所得控除額は一例にすぎず、所得税と住民税の所得控除額が若干異なるため概算です。

    税金と社会保険料を月額にすると

    (社会保険料389,798円+税金149,708円)÷12=約4万円

    となります。したがって、年収1,500万円の医師が老後も現役時代と同じ生活水準を保つためには、消費支出に社会保険料・税金を考慮すると最低月額およそ46万円(毎月の消費支出:約42万円+毎月の税金・社会保険料:約4万円)を見積もっておくと安心です。

    以上のことから、毎月15万円(46万円ー31万円)の不足額が生じる計算になります。そのため、65~95歳までの30年間を現在と同じ水準で暮らすと仮定すると、不足する5,400万円(15万円×12カ月×30年間)を65歳時点に準備しておく必要があります。

    65歳時点で完全リタイアする場合に、今の生活水準を保つためには、およそ5,400万円を目安に老後資金を準備しておくと安心と言えるでしょう。

    重要POINT

    • ・老後の生活費を試算するため、教育費をのぞいた消費支出をまず求めましょう。
    • ・子が独立した後の生活に関する費用は8割程度と想定します。
    • ・旅行や趣味・教養および身内の付き合い等が高額になると予想される場合は、「ゆとり分」を見積もっておきましょう。
    • ・今の生活水準を保って65歳で完全リタイアする場合、いくら不足するのかを試算し把握しておきましょう。
    • ・生活費は年金や保険と密接に関わっています。 計画的に不足分を準備しましょう。

    長沼 満美愛

    監修者:長沼 満美愛

    ファイナンシャルプランナーCFP(R)・1級FP技能士
    神戸女学院大学卒業後、損害保険会社に就職。積立・年金・介護など長期保険に特化した業務を担当。そのあと、FP協会相談室の相談員として従事。現在、大学・資格の学校TAC・オンスク.JPにて資格講座の講師として活動するかたわら、セミナー講師や執筆も手がける。『あてるFP技能士1級』(TAC出版)を執筆。毎日新聞「終活Q&A」・みずほ銀行WEBサイトコラム寄稿。毎日新聞生活の窓口相談員。塾講師・家庭教師の豊富な経験を活かして、「誰でも分かるセミナー講師」・「親身なFP個別相談」をめざす。

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