麻酔科医の一日の過ごし方は?仕事の流れをチェック

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公開日:2022.07.21

麻酔科医の一日の過ごし方は?仕事の流れをチェック

麻酔科医の一日の過ごし方は?仕事の流れをチェック

他科と比べて独り立ちが早く、近年では活躍の場も広がっている麻酔科医。需要も高まっていることから、診療科選択や転科を検討するにあたり麻酔科を候補にあげている方も多いのではないでしょうか。

しかし、診療科選択や転科は、今後の医師キャリアを左右する大きな選択。重要な決断をする前に、その後のキャリアプランとズレがないよう働くイメージをしっかりと持っておくことが大切です。

今回は、病院勤務の麻酔科医の一日の過ごし方を中心に、麻酔科医の役割や魅力などをご紹介します。麻酔科に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

麻酔科医の一日のスケジュール例

麻酔科医の一日のスケジュール例

病院に勤務する麻酔科医の主要な業務は、術前回診術前の症例検討手術で使用する麻酔と器具の準備手術中の麻酔管理患者さまのバイタル管理術後回診です。手術の有無が当日のスケジュールを左右するので、ここでは手術がある日とない日の2パターンを例としてご紹介します。

手術がある日

AM7:00〜

出勤して身支度を整えたら、当日使用予定の麻酔と器具のチェック・準備に着手します。

週末から前日までに大手術を受けた患者さまなど、ハイリスクの患者さまがICUに入っている場合は、担当の麻酔科医を中心に麻酔科全体でICUカンファレンスに参加し、容態と術後経過のチェックを実施。その後、麻酔カンファレンスにて当日の人員配置や予定されている手術などのスケジュールを診療科全体と看護師、薬剤師で確認します。

AM9:00〜

予定手術は、AM9:00頃からスタートするケースが多いでしょう。手術予定の患者さまが手術室に入室したら、麻酔と手術を受けるための準備を開始。モニター装着と末梢静脈路確保をしてから、麻酔導入をします。手術開始後は、患者さまの血圧や呼吸の動向をモニターで観察しながら、麻酔薬や輸液の調整を随時実施するのも麻酔科医の大切な仕事です。

PM0:00〜0:30

手術が長時間に及ぶ場合は、ほかの麻酔科医と交代して昼食休憩を取るのが一般的です。手術内容、麻酔処置、今までの経過を引き継いでから昼食休憩に入り、食事を済ませ次第手術室に戻ります。

手術終盤に突入したら、患者さまが術後に覚醒しやすくなるよう麻酔投入量をコントロールして麻酔深度を徐々に浅くします。気管内挿管をしていた場合は意識の戻り具合と呼吸の状態を見てから抜管し、問題ないことを確認。患者さまを退出させたら、手術は終了です。

PM3:00〜

当日予定していた手術が終了したら、明日以降に手術予定の患者さまの術前回診を実施します。術前回診では、手術内容の確認と実施予定の麻酔に関する説明のほか、手術をより安全に実施するため、麻酔による合併症を起こした血縁者の有無なども確認。前日までに手術を受けた患者さまもいれば術後回診も実施し、気になることがあれば担当の医師もしくは看護師に共有し対応します。

回診終了後は、翌日に向けた準備です。患者さまのカルテを確認し、血液検査や心エコーなど術前検査の結果に問題があれば、担当医師への照会も実施します。

PM6:00〜

その日予定していた業務を終了し、退勤

当日の人員配置や手術内容などによって多少の変動はありますが、大体このようなスケジュールで1日を過ごします。なお、研修医は麻酔科が関わっている手術が終了した時点でその日の業務を終了としている医療機関もあるようです。

手術がない日

AM7:30〜

予定手術がない日は、ICUカンファレンスと回診から業務をスタート。ICUと麻酔科全体で情報共有を済ませたあと、個々人の業務に取りかかります。

手術がない日は、翌日以降に予定している手術の指示作成、術前回診、術後回診、必要に応じて各種カテーテル挿入などの処置を行い、患者さまの担当医と看護師、薬剤師などと情報を共有します。

PM0:30〜

交代で昼食を摂ったら、午後も引き続き術前回診や術後回診を行います。

PM5:30〜

夕方のICUカンファレンスに参加します。当日の経過や懸念事項などを当直および夜勤担当者に引き継ぎ、PM6:00頃に業務終了です。

麻酔科医の役割と魅力

麻酔科医の役割と魅力

麻酔科医は診療科を横断で担当する特徴があり、安全に手術を行ううえで欠かせない存在です。ここでは、麻酔科医が医療現場で担う役割と、麻酔科医の魅力についてご紹介します。

手術現場の中心的存在になれる

麻酔科医の仕事は、麻酔をかける以外にも術前準備、手術中の全身管理、術後の回復の観察も含まれています。つまり、手術が必要な患者さまが無事に手術を受け退院できるように、一括管理して見守る総合プロデューサー的な存在といえるでしょう。

麻酔科は業務の性質上、さまざまな診療科と一緒に仕事をする機会が多く、手術を行うにあたり麻酔科医は必要不可欠です。手術の進行を見守り、患者さまの状態をコントロールするスキル医療機器に関する知識が業務を通じて高められることから、将来マネジメント職として病院の管理や運営を担うケースもあります。

自由度の高い働き方ができる

麻酔はあらゆる業務で必要とされています。手術室での麻酔と全身管理以外に、疼痛緩和を目的としたペインクリニック、安らかな終末期を迎えるための緩和医療、一つでも多くの命を助けるための救命医療などの現場でも活躍可能です。

麻酔科医として将来どうなりたいのか」を考えて、結婚や子育てなどのライフプランとの兼ね合いも考慮しながらキャリアを選択しやすいのも、麻酔科医の魅力と言えます。

多くの手術に携われる

麻酔科はほぼ全ての手術に関わることができる貴重な診療科です。同じ症例でも、患者さまの状態、執刀医、術式が異なれば、必要とされる麻酔の方法も異なります。手術に参加できる機会が多く、その都度さまざまな麻酔術式にチャレンジして経験が積めるのも、麻酔科ならではのメリットです。

労働環境の改善が進んでいる

少し前まで、麻酔科は長時間勤務で激務な診療科というイメージを持たれていましたが、麻酔技術の向上や医療機器の進歩によって、麻酔科医の負担は改善されてきています。麻酔科医の定数を増やす、休憩を取れるよう手術時の立ち会いは交代制を導入するなど、麻酔科医の負担軽減のための取り組みが医療業界全体で進んだことも大きいでしょう。

麻酔科医の年収

麻酔科医の年収

麻酔科医の年収は1,584万円で、医師全体の平均年収とほぼ変りません。ただし、地方などで医師数が足りない地域では平均年収も高く設定されているため、より高年収を目指すなら地方での就職を選択するのも良いでしょう。

麻酔科は担当患者さまを持たないことから夜勤や当直を免除されていることもあり、女性医師の比率が比較的高い職場です。医療機関によっては定時上がりも可能なため、働き方の自由度も高い傾向にあります。

また、最近ではペインクリニックを開業する医療機関の求人も多いので、副業をしやすいのも特徴です。「常勤先とは別に非常勤先を持って効率的に稼ぎたい」と考えている方にとって、麻酔科はうってつけの診療科でしょう。

麻酔科へ転科をする際の注意点

麻酔科医の年収

麻酔科のニーズは今後さらに高まっていくと予想されています。ここでは、麻酔科への転科を前向きに検討する場合の注意点について説明します。

転科はなるべく早いうちに

麻酔科への転科に限った話ではありませんが、転科したいと決意したらできるだけ早く転科に向けた行動を起こしましょう。麻酔科は独り立ちが早い診療科ですが、転科を早くすればそれだけ麻酔技術を磨く機会にも恵まれるほか、麻酔科標榜医や麻酔科専門医など資格取得の時期も早められます

事前にしっかりと情報収集を行う

麻酔科医に求められる業務は、医療機関ごとに異なります。その医療機関では麻酔科医にどのような業務が求められているのかを事前に確認しましょう。とくに手術の有無は、一日のスケジューリングと残業の有無にも直結します。

また、診療科が変わると年収も変化するケースが多いため、年収額を確認することも重要です。とくに転職を伴う転科を検討している場合は、地域性も考慮しながら年収をチェックしましょう。

医師専門の転職コンサルタントを積極的に活用する

病院やクリニックのホームページには、求人情報が掲載されていないこともよくあります。転職コンサルタントの元には、一般に公開されていない非公開求人が存在するため、独自に求人を調べるよりも多くの選択肢から職場を選ぶことが可能です。

また、豊富な経験から転科における適切なアドバイスやサポートをしてくれるので、初めての転科でわからないことがあっても相談できる環境があります。麻酔科に転科する意志が決まったら、まずは人材紹介会社に登録し、転職コンサルタントのサポートを得るのが良いでしょう。

一から学び直す覚悟で転科する

麻酔科に転科することは、研修医時代から今まで標榜していた診療科の肩書にピリオドを打つことでもあります。今まで培ってきた知識や経験がすべて無駄になることはありませんが、麻酔科医としてキャリアをスタートさせたからには一から学び直す覚悟が必要となるでしょう。

麻酔科医として働く自分をイメージしてみよう

麻酔科医は、手術を行ううえで欠かせない存在であり、今後も活躍の幅を広げていくことが期待されている診療科です。また、さまざまな診療科と仕事をすることが多いため、転科においてもこれまでの経験が無になることはないでしょう。

しかし、今後のキャリアやライフプランとのズレを生まないためにも、自分が麻酔科医として働いているイメージができるかどうかはとても大切です。

この記事を参考に、まずは自らが麻酔科医として働く姿を思い浮かべてみたうえで、後悔のない選択をしてください。

ドクタービジョン編集部

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