同居している母(73歳)を扶養に入れた場合、受けられる控除はいくら?

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公開日:2022.09.21

同居している母(73歳)を扶養に入れた場合、受けられる控除はいくら?

同居している母(73歳)を扶養に入れた場合、受けられる控除はいくら?

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    医学部進学などを支えてきてくれた親が将来一人になったとき、同居や扶養に入れることを選択肢に持っている医師もいらっしゃるでしょう。まず、親を扶養に入れる場合には、「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」を分けて考えます。

    税法上の被扶養者の要件は、以下となります。

    ・納税者本人と生計を一にしていること
    ・年間の合計所得金額が48万円以下であること

    たとえば、医師である父が亡くなった後、一人になった母親を想定するとします。

    母親(73歳)の収入が公的年金のみである場合は、年金収入158万円以下であれば扶養に入れることができます(遺族年金は非課税であるため、年金収入に含みません)。70歳以上の同居する親を扶養すれば、所得税の計算において控除額は58万円です。税額を計算する過程で扶養控除を適用できるので、節税につながります。

    なお、別居の場合に「生計を一にしている」といえるのは、納税者本人から親へ生活費や療養費等の送金が常に行われている事実がある場合です。


    次に健康保険上の被扶養者の要件は、以下です。

    ・被保険者本人と生計を一にしていること
    ・親の年間収入金額が180万円未満かつ被保険者本人の半分未満であること

    メリットは、親の健康保険料の支払いが免除されることです。デメリットは高額療養費制度(※1)において、被保険者本人の所得で自己負担限度額の区分が決定するため、医療費の負担が重くなることです。

    なお、65歳以上の親を扶養する場合、介護保険料は免除されず、親が納付します。介護保険料は世帯所得で計算されるので、「扶養に入れると保険料が上がる」ということを心得ておきましょう。

    また、75歳以上になると後期高齢者医療制度(※2)に加入するため、健康保険上の扶養から外れます。後期高齢者医療制度には、扶養の概念がありません。

    医師になるために、これまで経済的にも支援してきてくれた親への感謝はもちろんあるでしょう。同居することでケアが行き届くようになるうえ、扶養に入れた場合は税法上または健康保険上のメリットを享受できます。ただ一方でデメリットもあるため、さまざまな要素をふまえたうえで総合的に判断しましょう。

    ※1...高額な医療を支払った場合に、1カ月あたりの自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度

    ※2...75歳以上の者と一定の障害があると認定された65歳以上の者が加入する公的医療制度


    重要POINT

    • ・税法上の扶養では、70歳以上の親を扶養した場合に58万円の控除が受けられる
    • ・別居の場合でも、納税者本人から親へ生活費や療養費等の送金が常に行われている事実があれば適用可能
    • ・健康保険上の扶養では、健康保険料の支払いが免除となるが、医療費の負担が重くなることに注意が必要
    • ・メリットとデメリットを確認したうえで総合的に判断することが大切

    長沼 満美愛

    監修者:長沼 満美愛

    ファイナンシャルプランナーCFP(R)・1級FP技能士

    神戸女学院大学卒業後、損害保険会社に就職。積立・年金・介護など長期保険に特化した業務を担当。そのあと、FP協会相談室の相談員として従事。現在、大学・資格の学校TAC・オンスク.JPにて資格講座の講師として活動するかたわら、セミナー講師や執筆も手がける。『あてるFP技能士1級』(TAC出版)を執筆。毎日新聞「終活Q&A」・みずほ銀行WEBサイトコラム寄稿。毎日新聞生活の窓口相談員。塾講師・家庭教師の豊富な経験を活かして、「誰でも分かるセミナー講師」・「親身なFP個別相談」をめざす。

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