子どもの医学部受験のために金銭的支援を受けることに。毎年の贈与で申告が不要なのはいくらまで?

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公開日:2022.10.04

子どもの医学部受験のために金銭的支援を受けることに。毎年の贈与で申告が不要なのはいくらまで?

子どもの医学部受験のために金銭的支援を受けることに。毎年の贈与で申告が不要なのはいくらまで?

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    お子さんの医学部受験を考えているご家庭のなかには、私立中高一貫校に通いながら予備校で医学部対策コースを選択するなど、教育費が高額になるケースがあります。そのため、祖父母世代からの金銭的支援は助かりますし、「できることなら贈与税が課されることなく資金援助を受けたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

    まず、「暦年課税」という贈与税の課税方法があります。この制度では、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額に対して贈与税が課されます。もらった財産の合計が年間110万円以下であれば贈与税がかからないため、申告も必要ありません。もらう年数に限度がないため、誕生した頃から20年以上にわたりコツコツと毎年110万円ずつの贈与を受けると、贈与税が課されることなく総額で2,200万円以上受け取れるため、節税効果は大きいといえます。

    ただし、定期的な贈与を受ける場合は、定期贈与とみなされないように注意が必要です。たとえば20年間で110万円ずつ贈与する取り決めがあらかじめあったと判断された場合は、総額の2,200万円の贈与を一括で受けたものとして贈与税が課されます。

    定期贈与とみなされないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成し、銀行を通じて送金するなど贈与の証拠を毎年残すようにする必要があります。贈与契約を結び、子や孫が通帳や印鑑を保管するなどして、もらった事実を都度認識しているかが重要です。

    なお、扶養義務者から都度もらっている生活費や教育費には贈与税がかかりません。祖父母も扶養義務者であるため、通常必要な金額の範囲内で孫に教育費を負担するのであれば上限も設定されていません。ただし、資金使途を明瞭にする必要があるため、支払い時の領収書などを保管しておく必要があります

    現在、現行の贈与に関する税制は本格的な議論が進められています。生前贈与による節税メリットは、格差の固定化につながるとして、節税効果を縮小する方向で見直されることが予想されます。もしお子さんの受験などで教育費の金銭的支援を受けたい場合は、近い将来制度が見直される可能性があることを念頭に置いておきましょう。



    重要POINT

    • ・「暦年課税」では、もらった財産の合計が年間110万円以下であれば贈与税がかからず、申告も不要
    • ・ただし、定期贈与として判断されてしまうと、総額の贈与税が課税されるリスクがある
    • ・定期贈与とみなされないためには贈与のたびに「贈与契約書」を作成し、証拠を残す必要がある
    • ・教育費として扶養義務者(祖父母も含む)が費用を負担する場合であれば贈与税はかからないが、資金使途を明瞭にする領収書の保管が必須となる

    長沼 満美愛

    監修者:長沼 満美愛

    ファイナンシャルプランナーCFP(R)・1級FP技能士

    神戸女学院大学卒業後、損害保険会社に就職。積立・年金・介護など長期保険に特化した業務を担当。そのあと、FP協会相談室の相談員として従事。現在、大学・資格の学校TAC・オンスク.JPにて資格講座の講師として活動するかたわら、セミナー講師や執筆も手がける。『あてるFP技能士1級』(TAC出版)を執筆。毎日新聞「終活Q&A」・みずほ銀行WEBサイトコラム寄稿。毎日新聞生活の窓口相談員。塾講師・家庭教師の豊富な経験を活かして、「誰でも分かるセミナー講師」・「親身なFP個別相談」をめざす。

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