医師のための「患者の看取りの在り方」【令和版】

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公開日:2023.03.22

医師のための「患者の看取りの在り方」【令和版】

医師のための「患者の看取りの在り方」【令和版】

厚労省が提示した、患者の看取りに関する指針とは

厚生労働省が患者の看取りに関するガイドラインとして提示している「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を元に、今求められている医師の看取りとはどのようなものか、その考え方や具体的な手順を解説します。

令和の「看取り」の在り方とは

看取りでは、医師などから十分な情報や適切な説明を得たうえでの「本人による意思決定」が重要になります。

一般的に医療・ケアを担うのは担当の医師・看護師とそれ以外の医療・介護従事者ですが、社会的な側面に配慮するためにソーシャルワーカーなどが参加することもあります。本人が在宅や施設での看取りを希望している場合は、ケアに関わる介護支援専門員や介護福祉士などの介護従事者、そのほかの関係者も加わるでしょう。それらの医療・ケアを担う人々を「医療・ケアチーム」と言い、チーム内では本人の意思を共有しながら取り組みをしていかなければなりません。
本人の意思は心身の状態の変化や時間の流れ、医療的な評価の変更などによって変化する可能性があるため、医療・ケアチームと本人が繰り返し話し合いを行うことが肝要です。さらには本人が自分の意思を伝えられない状態になる可能性も考慮して、自らの意思を推定してもらう特定の家族などを前もって決めておく必要があります。
医療・ケアチームと本人だけでなく、本人が決めた自らの意思を推定してもらう人にも参加してもらったうえで、何度も話し合いをするようにしましょう。

看取りにおいてどのような状態を「人生の最終段階」と言うかは、本人の状態を踏まえながら医療・ケアチームが適切で妥当な判断をしなければなりません。
例えば、がんの末期などでは予後が数日~3ヶ月と予測ができるのに対し、老衰をはじめ脳出血疾患の後遺症や慢性疾患の急性増悪を繰り返している場合などは数か月~数年をかけて死を迎える可能性があります。医療やケア行為の開始・不開始・変更・中止などの判断は、医学的な妥当性・適切性を根拠として慎重に行いましょう。
医療・ケアチームを形成する時間がないような緊急時には医師が判断しなければなりませんが、状態が安定した際はあらためて緊急対処後の医療・ケアをチームで検討をするようにしてください。

医療・ケアチームでの看取りには懸念点が2つあります。
1つ目は、医師の意見が強くなりすぎ、チームの意見が医師の考えを反映するだけになってしまう...というケース。そうならないために、医師は医療・介護従事者との関係の在り方が変化したことをしっかりと認識し、医師以外の医療・介護従事者がそれぞれの専門家として貢献できるようにすることを重視しましょう。
2つ目は、1つ目とは逆に責任の所在があいまいになってしまうというケース。これを回避するにはそれぞれが専門家としての責任を自覚し、協力して支援体制を組めるような環境づくりをするよう心がけましょう。

医療・ケアチームは、可能な限り緩和ケアを行うことも必要とされています。
2007年2月には、緩和ケアのための麻薬等の使用について従来よりも認められるようになりました。これはつまり、これまでよりも疼痛やその他の不快な症状の緩和ケアが重要視されるようになったことを示しています。
さらに、人生の最終段階においては本人だけでなく家族も含めた精神的・社会的な援助も必要不可欠です。医療・ケアチームには可能な限りソーシャルワーカーや介護支援専門員などにも参加してもらいましょう。

なお、厚労省が提示した患者の看取りに関する指針のガイドラインは、積極的安楽死を対象とはしていません。積極的安楽死が判例として認められうる要件には「耐えがたい肉体的苦痛」が挙げられますが、厚生省としては「疾患に伴う耐えがたい肉体的苦痛は緩和ケアによって解決すべき」という立場をとっているのがその理由です。

状況別・患者さまの看取りの方針を決定する手順

患者さまの見取りの方針を決定する手順は、「本人の意思の確認ができる場合」「本人の意思が確認できない場合」「複数の専門家からなる話し合いの場を設置する場合」の3つによって異なります。

本人の意思の確認ができる場合

意思が確認できる場合は本人による決定が尊重されますが、適切な情報に基づいた意思決定ができる環境が必要です。そのためには、患者さまの状態に応じて医学的な検討をしたうえで、「医師等の医療従事者から適切な情報共有と説明されている」「医療・ケアチームと十分な話し合いができるようになっている」ことが求められます。
加えて、心身状態の変化や時間の経過、医学的評価の変更によって意思が変化する可能性も忘れないように注意してください。意思に変化が生じた際に、医療・ケアチームに対して随時伝えられるように本人との話し合いは繰り返し行いましょう。疾患などによって意思を伝えられない状態になってしまう可能性も想定し、話し合いには家族なども参加してもらうようにしてください。
話し合った内容については家族や医療・ケアチームとの間で共有する必要がありますが、患者さまにとって最善の医療・ケアを提供するため、文書にまとめておかなければなりません。まとめる際には、医療・介護従事者の意見の押し付けになっていないか、本人の意思が十分に反映されているか、しっかり確認しましょう。

本人の意思が確認できない場合

家族や友人など本人の意思を推定できる人がいる場合には、その推定意思が尊重されます。
意思を推定できる人がいない場合には代理となる家族などと十分に話し合いを行い、患者さまにとって最善と思われる方針をとってください。なお、家族などの意思も変化する可能性を踏まえ、話し合いは繰り返し実施する必要があります。
家族などがいない場合や判断を医療・ケアチームに一任された場合も、「本人にとって最善と思われること」を基本方針とした判断・対応をするようにしましょう。
医療・ケアチームに判断をゆだねられた場合であっても、決定内容を家族などに十分に説明し、理解してもらうように努めてください。
このプロセスについても、話し合った内容は文書にまとめておきましょう。

今後は看取りを控えた単身世帯が増えることが想定されるため、本人の意思を推定できる人は家族や親族に限定せず、親しい友人なども含む広い範囲で探す必要があります。人生の最終段階を迎える本人を支え、信頼を寄せられている存在を指すと考えてください。

複数の専門家からなる話し合いの場を設置する場合

話し合いの場を設置せざるを得ないケースには、医療・ケアの内容について、「医療・ケアチームの中で決定ができない場合」「本人と医療・ケアチームの話し合いの中で合意が得られない場合」「家族の中で意見がまとまらない場合」「家族と医療・ケアチームの話し合いで合意が得られない場合」などがあります。

そのような場合は別途複数の専門家からなる話し合いの場を設置し、医療・ケアチーム以外のメンバーも参加して方針などについての検討や助言を得ます。
複数の専門家とは、医療倫理に精通した専門家や国が行う「本人の意向を尊重した意思決定のための研修会」の修了者が該当します。社会的な背景や本人の心身の状態によっては、担当の医師や看護師以外の医療・介護従事者によるカンファレンスなどの活用もあるかもしれません。

ただし、このように話し合いの場が設置されるのは例外的な措置です。大前提として、あくまでも患者さまとその家族、医療・ケアチームの間で合意を得られるように努力をする必要があります。専門家からの検討や助言を得た後にあらためて話し合いを実施し、合意形成に至るようにしましょう。

厚労省がガイドラインを示した背景

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は厚生省によって平成19年に作成されたのち、平成30年に改訂されています

ガイドラインが作成された背景

人生の最終段階における治療の開始や不開始、中止などの医療の在り方は、従来から医療現場の課題とされてきました。
そのため、厚生労働省では昭和62年から4回にもわたって検討会を実施していましたが、国は人生の最終段階における医療の内容についてガイドラインを作成することに対して慎重な態度をとっていました。その理由としては、「人生の最終段階における医療について、国民の意識にも変化が見られること」「誰でもが迎える人生の最終段階だが、その容体や患者さまを取り巻く環境もさまざまなものがあること」などが挙げられます。
しかし、平成19年に患者さまと医療従事者のどちらにも広く合意がとれる「人生の最終段階における医療のあり方」を確認できたことで、基本的な点についてガイドラインが策定されました。
「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」において、厚生労働省は国に対して「ガイドラインの普及をさせると同時に、人生の最終段階を迎える患者さまや家族を支えるため、緩和ケアの充実などの体制整備に積極的に取り組んでほしい」との要望を挙げています。

ガイドラインが改訂された背景

医療・ケアの提供については最期まで本人の生き方や人生を尊重したうえで検討することが重要だ、という考えの高まりから、平成27年3月に実施された終末期医療に関する意識調査等検討会では「終末期医療」から「人生の最終段階における医療」へと名称が変更されました。
また、平成19年にガイドラインが策定されてから10年が経過する中で高齢多死社会が進行した結果、在宅や施設における看取りや療養の需要が増し、地域内で助け合うための地域包括システムの構築が進められるようになりました。
さらに、「本人と医療・ケアチームや家族などが、人生の最終段階の医療・ケアについて事前に何度も話し合うプロセス(ACP)」という概念の普及が諸外国で見られるようになっていたのです。

ガイドラインの改訂ポイント

こうした背景を踏まえ、平成30年には「人生の最終段階における医療の普及・啓発に関する検討会」において、地域包括システムの需要やACPの概念を取り込むため、ガイドラインの文言の変更や解釈の追加が行われました。 具体的に改訂されたのは下記の3つです。

1)本人の意思は変化をするものであるということ。そのため、医療・ケアについての方針を繰り返し話し合うことの重要性が強調されています。

2)本人が自らの意思を伝えられない状態になった場合、本人の意思を推定できる家族などの信頼できる人を決めておくこと。その家族なども含めて、繰り返し話し合うことの重要性も強調されています。

3)病院のみにとどまらず、介護施設や在宅での看取りも踏まえた内容にすること。

加えて、ガイドラインの位置づけを「人生の最終段階における医療・ケアに従事する医療・介護従事者が人生の最終段階を迎える本人や家族などを支えるために活用するもの」としました。
さらに、本人や家族などとの話し合いを繰り返すことを通じて本人に自分らしく最期まで生きてもらうため、人生の最終段階における医療・ケアを進めることの重要性を強調しています。

改訂されたガイドラインは、このガイドラインの普及が進むことによって、何度も繰り返して本人の意思を確認することの大切さが一人でも多くの国民や本人、医療・介護従事者に理解されるように、という思いが込められたものとなっています。

医師が知っておきたい「よい看取り」とは

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「よい看取り」のための心がけ

患者さまが亡くなることは、その家族にとって非常に辛い出来事です。だからこそ、医師の死亡確認の際の振る舞いは遺族の方に長期にわたって大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。「よい看取り」をすることで遺族が健全に悲しめるようにすることができる一方、看取りの際の医師の立ち居振る舞いによっては、遺族の心的外傷を深めてしまうかもしれないのです。
遺族が望む「よい看取り」をするために、主に以下の4つのことを心がけるようにしましょう。

1)言葉遣いや動作を丁寧にしたり自己紹介を行ったりなど、礼儀正しい振る舞いを心がけましょう。遺族との会話が噛み合わないという事態を防ぐため、看取りをする病室や自宅に向かう前に患者さまの病歴を復習することを忘れないようにしましょう。
当直などで見取りをする患者さまが初対面の場合、遺族が患者さまの死を受け入れられる状態かどうかを看護師に聞いたり、カルテの記録を読んだりしておくことも必要です。

2)患者さまへの接し方やケアの仕方をしっかりと伝えましょう。聴覚や触覚は最期まで保たれることを伝えたり、患者さまの死亡直前の症状を説明して苦しくないことを伝えたりすると、遺族の動揺を減らすことができるでしょう。
「急変」という言葉を使って過度な警告をするなど、遺族の負担になる言動は避けるよう心がけてください。

3)遺族が十分に悲しむ環境や時間を準備してあげましょう。忙しそうなそぶりは見せず、ゆっくりとした動作・落ち着いた雰囲気を出すよう心掛けましょう。
医療機器に囲まれた状態のままや遺族を外に追いやってしまうなど、最期の時間に遺族が患者さまの側にいられない状況を作ってしまわないよう注意をしましょう。
死亡確認についても、慌ただしく事務的な死亡確認にならないよう配慮する必要があります。「遺族が全員揃うまで待ってほしい」と希望されることがありますが、その場合は待てる範囲で死亡確認を待ってあげてください。
死亡確認をした後も、患者さまからそっと離れて待つなど遺族が十分に悲しむ時間を確保するようにしましょう。病室の外から関係ない医療者の会話が聞こえてしまうといったことがないよう、周囲にも気を配ってください。

4)患者さまの頑張りに対してねぎらいの言葉をかけること、さらに遺族の頑張りへもねぎらいの言葉をかけることが大切です。
そうすることで遺族は報われ、感情を表に出しやすくなるでしょう。

声掛けや振る舞いで看取りは変わる

看取りの際に具体的に実践すべき医師の声掛けや振る舞いを、4つのタイミングに分けて見ていきましょう。

❶ 死亡確認前

確認前にはまず身だしなみを整えます。当然のことながら、当直であったとしても寝ぐせがついた頭やサンダルで看取りを行うことがあってはなりません。
病室に向かう前には患者さまの病歴を確認して病気の経過を振り返り、遺族から質問された際に適切な答えを返せるように準備をしておきましょう。
遺族の最近の様子についても、患者さまを受け持っている看護師に聞いたりカルテの特記事項を読んだりすることで把握しておきます。患者さまの死が予測されていたもので遺族がその死を受け入れられそうか、それとも突然死などで受け入れられない可能性があるかなど、事前に理解を深めておく必要があるからです。

❷ 病室に入ってから

病室に入った際は忙しそうなそぶりを控えて、落ち着いた態度を心がけましょう。最初に自己紹介を行い、自分の役割を伝えることで、患者さまと遺族の方へ敬意を示します。
続いて、看取りに立ち会うのが誰かの確認をしてください。その際は遺族の方の気持ちに寄り添い、「おつらいですね」など共感的な言葉をかけるように心がけましょう。

❸ 死亡確認の診察時

テレビを消したり遺族の方を集めたりするなど、死亡確認にふさわしい環境を整えます。
呼吸停止・心停止・瞳孔散大を確認のうえ、遺族の方に死亡時刻を伝えてください。
時刻の確認は時計で行い、PHSやスマートフォンなどで時刻を確認してしまわないように注意しましょう。
死亡確認の動作は遺族の方の反応をうかがいながらゆっくりと行い、遺族の心の準備が整っているかにも配慮してください。

❹ 死亡確認後

患者さまの状態については主治医からきちんと聞いていたことを強調し、「よく頑張りましたね。主治医からも聞いております」などの声掛けをします。遺族が落ち着くまでの時間を確保し、話を丁寧に聞いてあげるよう意識しましょう。
死亡診断書へ記載する死因は、遺族の方が理解できるまで丁寧に説明するようにしてください。
「穏やかなお顔ですね」といった声掛けをして患者さまが苦しまなかったことを伝えたり、「ご家族の皆さまもよく頑張りましたね」などの遺族の方へのねぎらいの言葉をかけたりするのを忘れないようにしましょう。

病院での看取り方

1)病状が急に変化するなどの緊急時は医師の判断と指示で対応するという点と、もしその際に主治医が不在だった場合は当直医師などの代理医師が対応するという点

2)積極的な治療や緊急時の心肺蘇生を含む延命措置については、事前に本人や家族などに確認しておくという点と、緊急時には事前に確認しておいた内容に基づき医師の判断で処置を行うという点

3)積極的な治療、延命措置を一切希望しない場合は看取りの対象となるという点

4)看取りについて、事前に本人や家族の同意を得ておくという点

5)看取りの場所についての確認(自宅などを希望された場合は適切に処理する)

病院での看取りの支援内容は、本人に対するものと家族に対するものの2つがあります。

本人に対しては、入浴や口腔ケア、排せつケアなどの身の回りのお世話や、発熱や呼吸困難、疼痛などの身体的な苦痛の緩和などの身体的なケアを。ほかにも、コミュニケーションをとることをはじめとした本人の人権やプライバシーを尊重するための精神的なケアや、点滴などの医師の指示に基づいた医療処置を実施します。

家族に対しては、関係専門職種への相談をしやすくしたり家族の希望や心配事へ対処したりするなど、家族の身体的・精神的な負担を軽減するよう働きかけましょう。もちろん、患者さまの死後も援助を行います。

実際の看取り対応は、医師が一般的な医学的知見に基づいて「心身機能の障害や衰弱がはっきりと回復できない状態」「近い将来確実に死に至る状態」だと判断した患者さまについて開始されるのが望ましいとされています。
回復できないという判断は、なるべく主治医を含む複数の医師で判断してください。
看取りを開始する際、医師は本人や家族に判断内容を丁寧に説明したうえで看取りについての計画を作成し、終末期を過ごすことに対する同意を得る必要があります。
看取り対応の環境は原則として個室を用意し、家族に対してできる限りの面会時間を確保してあげましょう。家族が宿泊を希望する場合は可能な限りベッドを配備するなど、少しでも当人と家族の不安を軽減できるようにしてください。

在宅での看取り方

近年は病院で亡くなる方が多いものの、「在宅で最期まで過ごしたい」と希望している方は増えています。
在宅での看取り方は、患者さまの主治医が在宅医療を行っているか・行っていないかによって対応が異なります。

在宅医療を行っている場合

在宅医療を行っている医師であれば、たとえ休日や夜間であっても基本的には看取りに行きます。万が一、どうしても都合がつかない場合には、連携している病院に頼むなどして別の医師に看取りに行ってもらうようにします。
最近では、1人の医師で24時間365日対応することは難しいため、複数人でグループを作り看取りに対応しているケースもあります。また、地域によっては看取りを当番制にして対応しているところもあるようです。
病院であっても、夜間や休日で主治医が不在な場合は当直の医師などが代わりに看取ります。在宅で看取る場合も同様、主治医以外が代理で看取ることは問題ありません。

在宅医療を行っていない場合

主治医が大きな病院やクリニックの医師の場合、在宅での看取りに対応できないことがあります。
往診できないにもかかわらず患者さまが在宅での看取りを希望された際は、主治医が訪問できないことを伝えなければなりません。容態が悪くなった際には救急搬送をするか、死亡後に主治医へ連絡のうえ検察の検視が必要となることを伝えましょう。
検視を行う場合、死亡診断は監察医がすることになります。

主治医が在宅医療を行っている・いないにかかわらず、在宅で最期の時間を過ごす場合は家族が看取ることになる可能性が高いと言えます。
病院での看取りのように医師や看護師がその場に立ち会えることが望ましいですが、実際には家族から急変や呼吸停止の連絡を受けた後に患者さまの自宅に向かうため、主治医が在宅医療を行っていても看取りに間に合わない場合がほとんどなのです。

呼吸停止から時間がたってからの死亡確認であっても、法的な問題は発生しません。その理由は、呼吸停止から死亡確認までの時間について、特に決まりや制限はないためです。
連絡を受けた際に医師がすぐには自宅に向かえない状況であれば、死亡確認まで待機してもらうこともあります。

いずれにしても、在宅で看取りを希望される場合には、患者さまと主治医や看護師がすぐに連絡をとれる体制を築いておく必要があります。

自宅など患者さまが望む場所での看取りを実現するには、医療機関や多職種間での連携も重要です。入院から在宅への円滑な移行や日常的な治療・緩和ケア、急変時も対応ができる24時間体制などを、1つの医療機関・1人の医師で実現するのは難しいでしょう。
自宅で最期を迎えたいという患者さまが今後も増えていくと考えられるなか、それぞれの患者さまが望む医療体制・看取りの環境をつくるためには、地域にある病院や診療所・介護施設・薬局といったあらゆる関連機関を包括した体制構築が求められます。

ドクタービジョン編集部

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