仕事と家庭を両立するからこそ、ライフステージにあわせた選択肢が理想のキャリアにつながる。

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。
医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

インタビュー

公開日:2024.02.16

仕事と家庭を両立するからこそ、ライフステージにあわせた選択肢が理想のキャリアにつながる。

仕事と家庭を両立するからこそ、ライフステージにあわせた選択肢が理想のキャリアにつながる。

結婚や出産、子育てを経験する女性にとって、家庭と仕事の両立は難しいケースが多いもの。それは医療業界も例外ではなく、どのようにキャリアを築くべきなのか、悩む女性医師の方は多いのではないでしょうか。

今回の記事では、仕事と家庭を両立し、キャリアを築いている眼科医師・ちばぽん先生にお話を伺いました。現在、フリーランスとして働いているちばぽん先生。その働き方に辿り着いた、これまでのさまざまなご経験やご判断、さらに職場復帰や人間関係をスムーズにするために必要なことなどをご紹介いたします。

satake.jpg

ちばぽん先生

名前:ちばぽん
家族:子ども女の子一人(今年第二子出産予定)、夫も医師

経歴:
2015年3月 私立大学医学部卒業
2015年4月 私立大学附属病院で初期研修
2017年4月 私立大学附属病院の眼科に入局
何度かの医局人事を経て、
2022年に眼科専門医認定試験を受けて取得
2023年4月に医局人事を離れ、以後フリーランスとしてご活躍中
現在は定期の非常勤(4か所/大学病院、総合病院、クリニック2軒)

【女医】仕事と子育て両立を目指すブログ
Instagram

早い段階から、将来への準備ができていた

ちばぽん先生は眼科医として、クリニック2軒と総合病院、大学病院と、4か所においてフリーランスとして勤務されています。ご結婚やご出産、子育てなどでキャリアが変わったかと思われますが、まず医師を目指した背景と眼科医を選んだ理由について聞かせてください。

医師を目指した背景には、家族からの影響があったと思います。父が医師、母が専業主婦で、母からは「何か手に職をつけたほうが良い」と言われて育ちました。母としても何か感じるところがあって、専門職をすすめたのでしょう。
私としても、父が身近にいることで、自然に医師を目指すようになりました。

ご家族の姿を見て、医師の道に進まれたのですね。医学生時代には、どのようなキャリアイメージを抱かれていましたか?

「家庭を持つ機会があれば、そうしたい」と、すでに私生活を盛り込んだイメージを持っていましたね。いつかは結婚して出産するだろうな、と。そのときが来たら家族や子どもとの時間を大切にしながらも、医師として長く勤められるようにしておこうと。その想いで、初期研修から後期研修まで懸命に取り組みました。

眼科を選んだ理由はなんでしたか?

特に初期研修時代は、医師としての基礎力を身につけたり進路を決めたりするうえで大切な2年間になると思い、なるべく多くの診療科で学びました。
そんな中で眼科を選んだ理由は、興味を持てた診療科であり、一番楽しいと感じられたからです。活躍する女性医師が多く、同じ女性医師として将来をイメージしやすいとも思いました。

ライフイベントを受け止めながら目指した、理想の働き方

出産前から出産後に、専門医取得のタイミングを変えた

女性医師の方ですと、イメージしたキャリアに向けて取り組んでいく中で、ご結婚やご出産などのライフイベントが重なり、壁を感じることもあるかと思われます。ちばぽん先生のケースではどうでしたか?

まず出産のタイミングで夫との意見が分かれ、迷うことがありました。
私としては専門医の資格を取得してから出産を考えていましたが、夫は早く子どもを望んでいたんです。年齢が若いうちならまだしも、ある程度年齢を重ねると妊娠や出産自体が難しくもなります。そんな現実もあり、出産のタイミングには悩みましたね。
結局、当初のプランと離れ、出産してから専門医の資格をとることになりました。

育児をしながらの専門医への準備、本当に大変だったと思われます。当初のプランで、出産前に専門医の資格を取得しようと考えていたのには、どんな理由がありましたか?

育児と合わせて受験勉強をする女性の医師が周りに多く、大変なイメージが強かったからです。時間の確保がとにかく難しくなりますからね。そんな背景があり、専門医になってから出産したほうが、試験対策もしやすくなるし、臨床医としても早く成長できるのではと考えていました。でも結果的には何とか合格できたので、それで良かったと思っています。

産休中に受験勉強をするうえで、経験者として「こんなことをやっておくといい」というものはありますか?

個人的には、産休中や育休中は育児をするのが良いと思います。受験勉強も確かに大切ですが、やっぱり時期が近くならなければ本腰を入れられないし、早くに学んでも内容を忘れてしまいます。
強いて言えば、一緒に勉強する仲間がいるといいですね。私は、出産し専門医試験の受験を1年遅らせて目指したので、残念ながら同期と勉強することはできませんでした。その代わりに、一緒に受験する仲の良い後輩と問題を出し合ったり、お互いに話し相手になったりしていましたね。
資格取得を遅らせたデメリットは、正直に言ってもそれくらいです。アルバイトを探すとき、フリーランスとなるために仕事を探すときなどで、1年遅れたことを不利に感じたことはありませんでした。

確かに、人材営業として採用する側の医療機関とよく話す機会がありますが、1年であれば気にされないところが多いと思います。「専門医資格を持っているかどうか」にフォーカスがあたることが多いですね。率直なご意見をありがとうございました。

女性ならではの壁から、多様な価値観を知った

産後、職場復帰したときの話を教えてください。女性ならではの壁を感じることはありましたか?

育児しながらの職場復帰はそもそもハードですが、そこにコロナ禍が重なってしまって、それは大変でしたね。保育園が休園になったり子どもに熱が出たりと、そんなことがよく起こって、仕事と育児の両立の難しさに直面しました。
復帰当時は、週6日から7日、9時から16時までの時短制度を使って働いていましたね。ただ、眼科は出勤が早く、手術があると帰りが遅くなることもあります。状況によりもちろん定時で上がれない日もありました。子どもが1歳を迎えた後はフルタイム勤務に切り替え、9時に出勤、17時に帰るようになって。子育てに対してかなり理解はある職場でしたが、他の医師より早く帰るので、手術の技術取得が同期より遅れてしまうこともありました。
それでも夫が子育てに理解があったことが、助けになったと思います。夫婦で有給を調整し、どちらかが休んだり家族の協力を経て、コロナ禍や保育園の休園に備えていました。

職場の人間関係はどうでしたか?

家庭の有無による理解の差があったように感じました。子どものお迎え時間が近づいていて周りにお願いしても、快く受け入れられる時もあれば、断られる時もありましたね。自分も過去に仕事の引継ぎを頼まれた経験もあるので、頼む側と頼まれる側のどちらの気持ちが十分に分かり悩むこともありました。加えて、子どもがいる女性医師でも、キャリア優先か子育て優先かで、それぞれ考えが違うことにも気づきました。

仕事と育児を両立するために、フリーランスに

4か所で勤務するフリーランス医師の道

ちばぽん先生の現在についてお聞きします。色々と壁はあったかと思われますが、ご自身にとって当初と現在のキャリアイメージは変わっていますか?

ライフイベントに合わせて変化はありましたが、大枠としては変わっていないと思います。

現在は4か所で、フリーランスとして勤務されていますね。職場を選んだ決め手はなんでしたか?

3件は知り合いの先生からのご紹介と、1件は転職エージェントさんからのご紹介いただいた中から通勤時間や診療内容、スタッフ数などと照らし合わせて決めましたね。

今年、第二子をご出産予定で、勤務日数や専門医の更新など、働き方を変えることを考えられていますか?

そうですね。今は週5日の勤務で、午前中のみ勤務する日もありますが、そのまま続けるか1日減らすか、調整が必要だと思います。そこはタイミングが来てから柔軟に考えたいところですね。
専門医の更新に関しては、まず眼科では週3日臨床に出るという基準があります。私のフリーランスとしての働き方はそうした基準を満たせるように組んでいて、更新の準備をしています。

理想の働き方を実現するには

出産や育児で医局や職場を離れると、復帰や再就職が難しくなるとも聞きます。スムーズに復帰しやすいよう、準備すべきことはありますか?

職場への伝え方が大事ですね。たとえば、退局や退職する場合など「辞めます」というと角が立ってしまう場合もあるかもしれません。「医局や職場を抜ける」など表現を柔らかくすることで同じ内容でも受け取る印象が変わると思います。理由についても、子育てとの両立に苦戦し、自分の力不足で周りに迷惑がかかってしまい悩んでいる。など本心を丁寧に正直に伝えるのが大切なんじゃないかと。私自身、このような感じで正直に伝えました。
病院側としても人手不足で、ライフイベントがあっても残ってほしいと望む場所もあります。だとすると、辞め方やその後の関係も非常に大切ですよね。私自身は「専門医資格更新も見据え、週⚪︎日 非常勤であれば手伝えそうです。」という感じで、職場に伝え条件を受けていただけました。

交換条件のような交渉で、お互いにメリットがあっていいですね。職場側からはどのような返事がありましたか?

勤めていた職場ではあまり前例のないお願いだったので受けてもらえるか不安ありましたが、交渉してみると驚きながらもスムーズに快諾してくれました。話し方や相手を重んじた態度が大事だと感じています。

女性医師の一週間スケジュール
▲一週間のスケジュールをお伺いしました!仕事と家庭の両立に向けたいいバランスを探されています

理想のキャリア実現に求められたポイント

働きやすさのために工夫したこと

ちばぽん先生は、育児と仕事の両立、多くの女性が直面する難しさを乗り越え、理想のキャリアを歩もうとされています。実現のために意識したことはありますか?

整理すると、フリーランスとしての出発ですね。フルタイム勤務ではどうしても限界があるように感じられたので、仕事をしながらも柔軟性があるスタイルに変えました。そのおかげで、土日休みが得られたり平日に子どもの習い事を当てられるようになったりと、私自身にも精神的な安定が訪れています。研究や時間的拘束が長くて難しい会議、学会発表など、診療以外の仕事を減らせることも余裕につながっていますね。
ほかにも通勤時間を電車から車に変えることで、通勤時間の短縮や働く選択肢の拡充に役立ちました。

その実現のために、ちばぽん先生が工夫されたことはありますか?

まず人間関係ですね。産休や復職で職場の方々に迷惑をかけることが多かったので、その分お礼やお返しは意識していました。お礼は必ず言う、出勤中にはできる仕事を多くこなす、助けてくれた人が困っていたら必ず助けるという感じですかね。
こうした背景には、4か所の職場とのつながりを大切にしたいという想いもあります。
大学を含めた職場で非常勤を続けているのも、育てていただいた環境への感謝や、自然と最新の知識が入ってくるため刺激にもなります。何より、さまざまな人間関係を通じ仕事に恵まれたからこそ、フリーランスとして働けているのだと思います。
人間関係の他には、支援制度があるか、社会保障制度について全く知識がないことが大きな課題でした。その理解と把握には力を注ぎましたね。結果的には、さまざまな支援制度があることを知ったり、社会保障制度についても健康保険の任意継続や医師国保などフリーランスでも多様な選択肢があることを知りました。

ご家族との関係性はどうでしたか?

父と夫が医師であることもあり、私の場合は比較的良かったと思います。また両家の両親ともに困った時には子育てを積極的に手伝ってくれます。義理の両親・実の両親ともに自宅に来やすいよう、引っ越しをしました。助けてくれる人が多いほど状況は好転するので、それは良かったですね。

多角的にも万全な状態が整っていたのですね。さらに、子育てが始まる新しい生活に向けて、導入したものや「これがあって助かった」と思うものはありますか?

ロボット掃除機や乾燥機能付きドラム式洗濯機、電気圧力調理鍋、Uber Eatsですね。お金はかかりますが、自分の時間を確保するための投資は迷わずにしていました。

今後も理想のキャリアを進むために

最後に、ちばぽん先生の今後の展望についてお聞きします。お子様が大きくなるとちばぽん先生の時間も増えると思われますが、その際には常勤に戻るかフリーランスを続けるか、どんなイメージを抱かれていますか?

近々予定している第二子出産後には、その時々に合わせて、働く日数を柔軟に検討する予定ですが、基本的にはいまの働き方は気に入っていて続けたいとは思っています。
もちろん、考え方はライフステージで変わっていくと思います。働き方改革など、業界の変化もあるので、さまざまな選択肢を持てるように、フリーランスという働き方を続けていく予定です。
今では、Webで検索すると様々な働き方をしている医師がいて。そんな医師を支援する人材サービスも多様にあり、働き方についてたくさん情報が得られるようになりました。常勤か非常勤か、フリーランスで働くのかなど、多くの選択肢から考えられるようになりましたよね。女性医師として、仕事と家庭を両立できる可能性が、より高まったのではないかと思っています。

岡南さんの写真

インタビュアー:大阪支店 岡南

  • 勤務歴:勤続4年目
  • 担当エリア:大阪、和歌山県、徳島県、高知県

  • カウンセリングで心がけていること:転職時に、先生の選択肢を増やすことを意識しています。希望通りの医療機関に勤めるに越したことはないのですが、先生のお考えに無いような働き方や業務内容をご提案するのも、我々の存在意義だと思います。

  • コメント:ちばぽん先生のお話をお伺いして、重要だと再認識した点は、行動力及び病院側との関係構築です。大学病院を離れフリーランスになられることは大変勇気のいることだと思います。大学病院のフルタイム勤務を離れながらも、関係を良好に保ち、週1回ご勤務を続けられているところにちばぽん先生の素晴らしさを感じました。
  • アバウトバナー

    ドクタービジョン編集部

    医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。