【2023年版】眼科医の平均年収は?地域別ランキングや勤務医/開業医の違いを解説

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公開日:2024.04.22

【2023年版】眼科医の平均年収は?地域別ランキングや勤務医/開業医の違いを解説

【2023年版】眼科医の平均年収は?地域別ランキングや勤務医/開業医の違いを解説

眼科医は眼だけを扱う診療科ではありません。糖尿病や高血圧などの内科疾患によって眼に症状が出現することも多く、全身にわたる幅広い知識が求められる診療科です。

年収が高いイメージがありますが、とくに開業医は競合も多く、将来性に不安を抱く方もいるかもしれません。

この記事では、眼科医の平均年収について考察します。勤務医と開業医での年収の違いや今後の展望についても考えていきましょう。

*1:2023年11月時点の「ドクタービジョン」掲載求人をもとに、平均値を算出しています。

中山博介医師プロフィール写真

執筆者:中山 博介

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眼科医の平均年収は?

眼科医の平均年収は1,835万円であり、全診療科の平均年収1,846万円よりもやや低い水準でした*1

平均年収が低めと言えど、あくまで眼科全体の平均です。同じ眼科の中でも専門とする領域の違いや、所属する医療機関、働き方、年齢、役職、専門医や指導医などの資格やスキルによっても年収は変わってくるため、平均年収はあくまで目安ととらえながら読み進めてください。

診療科別にランキングにすると、眼科は今回の調査対象の19診療科中、ちょうど中央にあたる10位でした。

【診療科別】年収ランキング*1

順位 診療科 平均年収(万円)*1
1位 皮膚科 2,145
2位 形成外科 2,032
3位 泌尿器科 1,929
4位 産婦人科 1,921
5位 整形外科 1,915
6位 外科(一般外科) 1,914
7位 脳神経外科 1,870
8位 総合診療科 1,853
9位 救急科 1,847
10位 眼科 1,835
11位 精神科 1,829

年収水準がやや低い理由として、2つの背景が挙げられます。

①緊急手当や時間外手当が少ない

眼科は外科や産婦人科と違い、緊急性の高い疾患を取り扱う頻度が少ないため、緊急手当や時間外手当が少ない傾向にあります。

②平均診療点数が低い

眼科は他科と比べてレセプト1件当たりの平均診療点数が低い傾向があります。医療行為に対する診療報酬が低いことが、眼科医の平均年収が低い要因の一つです。

東京都厚生局による「診療科別平均点数一覧表」によれば、レセプト1件あたりの平均点数が1,000点を超える診療科が多い中、眼科と皮膚科だけは1,000点未満にとどまっています。

【地域別】眼科医の平均年収ランキング

次に、眼科医の平均年収を地域別に見てみましょう。

全国/地域 眼科医の平均年収(万円)*1
北海道 2,084
東北 1,845
関東 1,981
北陸・信越・東海 1,841
近畿 1,835
中国・四国 1,926
九州・沖縄 1,674
全国平均 1,835

関東地方は、どの県も2,000万円前後(1,917~2,100万円)。全国の平均額を大きく上回っています。

一方で九州地方は低く、熊本県(1,843万円)以外のすべての県で全国の平均額を下回る結果でした。

ここまで、眼科全体の年収傾向をご紹介しました。平均より低い傾向とお伝えしましたが、眼科では保険適用外の医療行為も少なくないため、レーシックなどの自由診療を行う開業医は高い年収を狙えます。次の段落で、勤務形態(勤務医/開業医)ごとの特徴を見ていきましょう。

眼科医の業務内容と年収

眼科医の業務内容

眼科医の主な業務内容は、眼球や、眼球につらなる視神経、眼瞼や結膜をはじめとする眼球付属器を検査すること、鑑別診断の内容に基づいて治療計画を考案し、治療することです。

勤務医の場合

病院などの医療機関で勤務する場合、白内障や緑内障などの一般的な眼疾患の手術はもちろんのこと、頭頸部外科や脳神経外科と連携して眼球周囲の腫瘍に対する手術などを行います。

高血圧や糖尿病に伴う眼症状に対しても、内科医と連携して診療に携わることもあり、眼科医が求められる分野や場面は幅広いです。

気になる年収については、少し古いデータですが、2012年の調査*2で眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科4科の平均年収は1,079万円でした。年収の分布も示されており、300万円未満は2.6%、300~500万円未満8.3%、500~700万円未満12.5%、700~1,000万円未満17.3%、1,000~1,500万円未満33.2%、1,500~2,000万円未満22.0%、2,000万円以上は4.2%でした。

【眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科】主たる勤務先の年収*2

眼科耳鼻咽喉科泌尿器科皮膚の平均年収_労働政策研究研修機構調査をもとにドクタービジョン編集部作成

労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をもとにドクタービジョン編集部作成
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf

眼科に限った金額は公表されていませんが、他科と比べて低い水準にあることは先述のランキングとも相違ありません。

当直業務や夜間緊急手術などの負担が少ない分、平均年収は低い傾向にあるようですが、その分自分の時間を確保しやすいというメリットもあります。

開業医の場合

眼科の開業医の業務内容は、地域の患者さんの眼を守ることです。

精密検査や大規模な手術の必要性が低くても、診療が必要な疾患・症状は多数存在します。近視・遠視・老眼の検査、コンタクトレンズ作成に必要な検査や処方箋の作成、ドライアイ・ものもらい・白内障・緑内障といった身近な眼疾患の治療など、開業医は多様な診療に携わります。

気になる年収ですが、厚生労働省の「医療経済実態調査」によれば、入院施設を伴わない眼科医(開業医)の収益は約3,400万円と読み取れます。勤務医と比べて高く、その要因は主に2つあるでしょう。

  • コンタクトレンズの処方
  • 回転率の高い手術

コンタクトレンズは定期的に購入されるため、診察料や検査料は大きな収入源となります。

また、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)などの視力矯正手術や白内障手術は侵襲度が低く、日帰りで行うこともできるため、1日に10人以上手術することも可能です。これらは自由診療のため単価が高額であり、診療所にもたらす利益も大きくなります。

一方で、診療所で働く人材の確保や、人件費・テナント料の負担など、経営者として苦労を伴う点は留意すべきでしょう。

眼科医が年収をアップさせる方法

開業以外に眼科医が年収をアップさせる方法を3つ紹介します。

①専門性の向上
②アルバイト
③転職

①専門性の向上

専門医や指導医などの学会資格の取得・更新はもちろんのこと、レーシックやICLなどの特殊な治療技術を身に付けることは、キャリアアップに伴う年収向上に効果的です。

レーシックやICLで著名な眼科医のもとには、多くの患者さんが集まります。高い技術があれば回転率を上げることもでき、より高い収益を狙うことができるでしょう。そうしたスキルを持って活躍している専門医のもとで研鑽を積むことがおすすめです。

②アルバイト

アルバイトによっても年収アップを目指せます。

眼科はプライベートの時間を比較的確保しやすいため、非常勤スポット勤務でアルバイトを行いやすく、効率的に年収アップを狙えるでしょう。

眼科医としてアルバイトする場合の、よくある業務内容を3つ紹介します。

  • 一般外来
  • 検診・人間ドック
  • コンタクト外来

コンタクト外来は眼科医ならではで、時給も1万円程度と好待遇です。土日の求人も比較的多いため、空き時間で探してみると良いでしょう。

③転職

年収アップのためには、転職も選択肢の一つです。

開業では診療以外の業務も増えてしまいますが、勤務医としての転職であれば、診療業務に専念したまま年収アップを目指すことができます。

先述のとおり地域や働き方によって年収は大きく変わるため、自分の目指したい働き方やキャリアビジョンに合う医療機関を探せると良いでしょう。時間が取れない・転職の段取りがわからないという場合は転職サイトも活用し、一度相談してみると良いのではないでしょうか。

眼科医の魅力と将来性

眼科医

眼科医の魅力の一つは、ワークライフバランスを確保しやすい点です。

女性医師に限った調査ですが、日本医師会の2017年の調査報告*3によれば、1週間当たりの労働時間(実勤務時間)が48時間以内に収まっている割合は72%と、精神科(80%超)に次いで他科を大きく上回りました。また、宿当直やオンコールがあると答えた医師の割合は、産婦人科・脳神経外科・救急科・泌尿器科・外科・小児科で 70%を超えているのに対し、眼科は45%という結果でした。

年間の有給休暇の取得状況についても、年間5日以上取得できた人は60%を超えています。

専門性が求められる仕事でありながら、ワークライフバランスを充実させやすいことから、出産や育児で働き方が制限されてしまう場合でも働きやすい診療科と言えるでしょう。

また、眼科は将来性も明るい診療科です。

高齢化が進むことで、白内障・緑内障・加齢黄斑変性・糖尿病網膜症など、視覚障害を招く可能性のある眼疾患は増加傾向にあると言われます。涙道疾患や眼窩・眼瞼疾患など、目の健康を損なうおそれのある眼疾患も今後増加が懸念されます。高齢者を対象とする眼科診療のニーズは今後も高まり続けるでしょう。早いうちからしっかりと技術を身に付けておくことが肝要です。

近年はパソコンやスマートフォンなどの普及に伴い、子どもを含む若い人たちの眼精疲労や視力低下も急増しています。この現状に、日本眼科医会も警鐘を鳴らしています。

幅広い年代の患者さんにとって、眼科医はますます求められる存在になっていくでしょう。眼科医としてのスキルアップやキャリアを考える上でこの記事がお役に立てば幸いです。

中山 博介

執筆者:中山 博介

神奈川県の急性期病院にて、臨床医として日々研鑽を積みながら医療に従事。専門は麻酔科であり、心臓血管外科や脳神経外科・産婦人科など幅広い手術の麻酔業務を主に担当している。

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