救急医療体制とは?現状の課題と今後についても解説

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業界動向

公開日:2021.08.30

救急医療体制とは?現状の課題と今後についても解説

救急医療体制とは?現状の課題と今後についても解説

救急医療は、緊急の治療や入院を含めた対応が必要な患者さまを対象に実施します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する昨今、救急医療の重要性も高まっているといえるでしょう。しかし、その現状は数々の課題が存在します。

そこで今回は、救急医療体制の概要と仕組みについて改めて紹介し、現状と課題について詳しく解説していきます。

救急医療体制とは

救急医療体制とは

救急医療とは、交通事故による外傷、狭心症や急性心筋梗塞による心肺停止、アナフィラキシーなど、予期せず発生したけがや病気に対応するための医療全般を指します。救急医療の実施には、救急指定病院の存在を欠かすことはできません。

救急指定病院とは

救急指定病院とは、以下の指定要件を満たす、都道府県知事が告示し指定した病院のことです。

【要件1】救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること。

【要件2】エツクス線装置、心電計、輸血及び輸液のための設備その他救急医療を行うために必要な施設及び設備を有すること。

【要件3】救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。

【要件4】救急医療を要する傷病者のための専用病床又は当該傷病者のために優先的に使用される病床を有すること。

つまり救急指定病院とは、一刻を争う事態の患者さまを受け入れ、必要な治療を施す体制が常に整っている医療機関といえるでしょう。

▼参考資料はコチラ
救急病院等を定める省令

救急医療体制とは

救急医療病院は、一次救急医療機関、二次救急医療機関、三次救急医療機関に分類されます。後ろに進むほど、より高度な診療機能を有する病院です。

救急車で搬送する場合は、救急隊員判断のもと適切と思われる医療機関に受け入れを要請します。自力で動ける、同伴者に付き添われるなどして医療機関を受診した患者さまに対しては、医師が診療したうえで対応、あるいは適切と判断した医療機関に取り次ぎます。

救急医療体制は3段階

救急医療体制は3段階

初期(一次)救急医療機関、二次救急医療機関、三次救急医療機関には、それぞれ異なる働きが求められています。ここでは、各医療機関の特徴について確認しましょう。

初期(一次)救急医療機関

自力で通院できて入院や手術が不要の、外来で診療可能な患者さまを受け入れ対応する医療機関です。一次救急は、夜間や休日・祝日など医療機関が診療していない時に診療を行う「休日夜間急患センター」「救急(休日)歯科診療室」、地域の在宅当番医制に参加する診療所が対応します。

二次救急医療機関

自力で医療機関を受診できず救急車で直接搬送されてきた患者さまを受け入れ、初期対応を行い状況に応じて手術や入院治療を実施します。二次救急医療機関は、各都道府県が進める医療計画にもとづいて、都道府県知事が告示・指定します。

二次救急は、同一地域内の救急指定病院と共同で、病院群輪番制や協力病院当番制をとることで救急対応を行うのが特徴です。

三次救急医療機関

先にご紹介した、一次救急医療機関や二次救急医療機関でも対応できない患者さまを受け入れます。三次救急を請け負うのは、救命救急センターと、そのなかでも特に高度な診療機能と設備を備えている高度救命救急センターです。特に、高度救命救急センターは厚生労働大臣が告示・指定するもので、交通事故によるけがが全身に及んでいる、全身熱傷、指肢切断、急性中毒などの患者さまを受け入れます。また、三次救急医療機関は、医療従事者が救急医療を実践的に学ぶ教育機関としての役割も担っています。

救急医療の現状と課題

救急医療の現状と課題

地域内での役割分担が進み順調に機能しているように見える救急医療体制でも、現状に対する課題は山積みです。

救急医療の現状

全国の救命救急センターの数について、平成18年時点は189箇所だったのが平成24年には249箇所と大幅に増加したのに対して、二次救急医療機関は3,214箇所から3,259箇所とほぼ横ばいです。二次救急医療機関は、救急搬送の受け入れが集中する病院とそうでない病院が二極化しており、人口密度が高くなるほど患者さまの受け入れが多い傾向にあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による院内感染が発生すると、当該医療機関の診療機能はストップせざるをえなくなり周辺の医療機関の負担が増えます。地域における救急医療体制に与える影響は少なくありません。

また、感染者への対応が長期化することで医療提供力減弱に拍車がかかり、通常の救急医療対応を逼迫しています。国家レベルの対策を講じなければ、救急医療体制は崩壊するとの意見も。


救急医療の課題

現在の救急医療制度は、超高齢社会が進む現状にはそぐわないシステムではないかと疑問視する声があがっています。また、拘束時間の長さと業務に対する責任の重さに対して、賃金が見合わないという意見も出てきているのです。もちろん、働き方改革の波は病院にも届いているため、後者は改善に向かうのではないかと考えられます。しかし、救急医療体制そのものと現場で働く医療従事者の待遇改善は、今後さらなる変化が必要ではないでしょうか。

細分化と制度化が進む救急医療体制

より多くの方を効率的に救うことができるよう、一分一秒を争う救急医療の現場では細分化と制度化が進んでいます。判断の遅れや迷いが結果に現れるシビアな現場ではありますが、対応力や決断力など一生役に立つスキルが身につく環境です。

救急医療と救急医療体制に興味を持ったのをきっかけに、地域の医療体制について調べてみるとよいでしょう。

ドクタービジョン編集部

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