新専門医制度、サブスペシャルティはどう決める?

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公開日:2020.09.16

新専門医制度、サブスペシャルティはどう決める?

新専門医制度、サブスペシャルティはどう決める?

2018年4月からスタートした新専門医制度。各学会が自由な基準で認定していた「専門医」の質を画一化し、よりよい医療を国民に提供することを目的に定められた制度です。

基本領域とサブスペシャルティ領域の「二階建て」構造になっていることが特徴のひとつですが、多岐にわたるサブスペシャルティ領域をどのように選択すればよいか分からない医師も多いでしょう。今回は、サブスペシャルティ領域の選び方や注意点を現状の制度を交えながら詳しく解説します。

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サブスペシャルティとは?

サブスペシャルティとは、新専門医制度の基本となる「二階建て」構造のひとつで、各診療科の下に連なる細かな専門分野を指します。

これまで、専門医は各学会が独自の選考基準によって認定していました。近年では学会も細分化され、専門医の種類は100以上にも上っています。しかし、選考基準の難易度には学会ごとに大きな差があり、「専門医」といってもその質は大きく異なるのが現状でした。

一方で、医療を受ける側の国民は「専門医」と言えば知識や経験が豊富でより高度な医療が提供される...と誤認するケースが多かったのも事実。そこで2011年に「専門医の在り方に関する検討会」が発足し、中立的な立場で専門医認定のプログラムや試験を定める日本専門医機構が設立されました。新専門医制度では、日本専門医機構が認定した研修プログラムや試験にパスすることではじめて専門医資格を授与することに。全ての学会で画一した質の専門医を養成することが目的とされています。

19の基本領域と23のサブスペシャルティ

前述でも述べている通り、新専門医制度は基本領域とサブスペシャルティ領域の二階建て構造になっているのが大きな特徴。具体的には、2年間の初期臨床研修を終えると、医師は19の分野に分かれる基本領域の専攻医となります。そして、3~4年の研鑽を積んだあとに基本領域の専門医資格を取得。その後、基本領域と関係のあるサブスペシャルティ領域の専門医資格取得を目指して更なる研鑽を積んでいくことになります。

図表

現在、サブスペシャルティは上表のように23の領域に分かれています。

サブスペシャルティの決め方

スペシャルティイメージ

現在、日本専門医機構が認定しているサブスペシャルティは23の領域にのぼります。かつての専門医制度と新専門医制度の大きな違いは、サブスペシャルティ領域の専門医を取得するには、その領域と関連する基本領域の専門医資格を取得していることが必須となる点です。

進みたいキャリアに応じた基本領域の選択がカギ

将来的に循環器内科医としてカテーテル治療を行いたい場合は内科専門医を取得しておく必要があり、基本領域で麻酔科や整形外科を選択した医師はサブスペシャルティとして循環器を選択することはできません。逆に、基本領域で内科を選択した場合は放射線科関連や外科関連のサブスペシャルティ領域を選択することはできなくなります。

新専門医制度では、基本領域を決めた段階で医師としての将来性がある程度決まってしまうのです。そのため、学生や初期研修の段階から医師としてどのようなキャリアを築くか決めておく必要があり、自身が描くキャリアに基づいた基本領域の選択が必須となります。

「連動研修」を受けることで早期からサブスペシャルティを学ぶ手も

一方で、新専門医制度はサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得するのに時間がかかるといった懸念の声も挙げられています。以前の専門医制度では、初期研修が修了すると医師は循環器内科や呼吸器内科など細分化された診療科に所属し、専門医資格取得へ向けた研鑽を積むことができました。しかし、新専門医制度では初期臨床研修を終えた後は基本領域の専門医資格を目指し、内科系であれば循環器だけでなく消化器や呼吸器などの分野の研修も受けなければなりません。そして、基本領域の専門医資格を取得してはじめて循環器などのサブスペシャルティ領域の研修を受けられるのです。

このような新専門医制度の「二階建て」構造は、医師として一人前になるまでに長い時間がかかり、「以前よりも専門性の高い医療を国民に提供する期間が短くなる」との問題も指摘されています。そのため、2020年には、早い段階からサブスペシャルティ領域を決定している場合は基本領域と並行して研修を実施することができる「連動研修」が認められることになりました。現在、サブスペシャルティの15領域で連動研修が認められており、医師としての未来像が確立している場合は連動研修を受けることができる研修施設を選ぶのがおすすめです。

とはいうものの、明確なビジョンが定まらない場合、焦って連動研修を選ぶのはNGです。専門性の転換が困難になるため、まずは基本領域の研修をしっかり行いながらゆっくりとサブスペシャルティ領域を決めていくようにしましょう。

サブスペシャルティの取得は必須?

スペシャルティイメージ

新専門医制度でのサブスペシャルティ領域の専門医は医師としての高い専門性を担保する資格でもあります。2021年には新専門医制度が開始されて初の専門医が誕生する予定で、今後はサブスペシャルティ領域の専門医資格が求められるようになる場面も増えることでしょう。

しかしながら、新専門医制度では幅広い疾患のプライマリ・ケアを行う医師を養成することを目的に総合診療科の専門医が新たにつくられました。幅広い疾患をカバーする診療科という性質上、より範囲を狭めたサブスペシャリティ領域の選択は相容れないとの声も上がっています。また、関連するサブスペシャルティが現時点では認定されていない基本領域も少なくありません。このような点を考えれば、医師として勤務していくうえでサブスペシャルティ領域の専門医資格が必要でないケースもあると考えられます。

複数のサブスペシャルティの取得は可能?

2020年8月現在、選択する基本領域やサブスペシャルティ領域によっては、複数のサブスペシャルティの取得が困難なケースと可能なケースに分かれています。たとえば内科について、肝臓病は「消化器」の病気の一種ですが、特殊な疾患を扱うケースが多いとされ、厚生労働省は少なくとも1つのサブスペシャルティ領域を取得した後に研修を行うことが適当との見解を示しています。また、内分泌代謝と糖尿病については実態として両者を合わせての標榜が多いことから、連動研修を行っている領域に内分泌代謝内科と糖尿病を集約し、それぞれ少なくとも1つのサブスペシャルティ領域を取得した後に研修を行うことが適当とのことです。

一方で、放射線科に関しては、従来の専門医制度でも放射線診断・放射線治療はいずれか片方の専門医のみが取得可能とされており、新専門医制度でも同様の定めになると考えられます。

新専門医制度は途上段階 最新情報のキャッチアップを忘れずに

2018年からスタートした新専門医制度ですが、来年(2021年)には初の「新専門医」が誕生する予定であり、サブスペシャルティの選択に向けて悩んでいる専攻医も多いことでしょう。サブスペシャルティの選択は医師としての未来をある程度決定するものとなります。後悔のないよう、学生や初期研修医の段階から未来像を見据えておくことが大切です。

新専門医制度にはまだまだ課題もありますが、連動研修が認められるなど制度自体は日々改善されています。領域の選択はご自身の医師としての未来に関わることですから、慎重に吟味し、制度の変更点などの情報は敏感にキャッチするようにしましょう。

※本記事の内容は2020年8月時点での情報です。新専門医制度の最新情報については、厚生労働省、各学会のホームページなどでご確認ください。

ドクタービジョン編集部

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