キャリアも家庭も諦めない!30代になったら考える女性医師のワークライフバランス

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働き方

公開日:2020.12.16

キャリアも家庭も諦めない!30代になったら考える女性医師のワークライフバランス

キャリアも家庭も諦めない!30代になったら考える女性医師のワークライフバランス

女性医師の数・割合は年々増えており、今後もこの傾向が続くと考えられます。このようななかで、不規則かつ多忙な生活を送る女性医師がワークライフバランスの問題に直面し、キャリアか家庭のどちらかを選ばざるを得なかったケースも多々みられます。

今回はキャリアも家庭も諦めたくない女性医師に向けて、現状の課題や、結婚・出産・子育てを見据えたキャリアビジョンなどについてご紹介します。

女性医師のワークライフバランスの課題

他職種と比較すると年収が高い医師。しかし、ワークライフバランスの視点で見ると様々な課題が浮かび上がります。

女性医師のロールモデルがいない

とくに女性が少ない外科系の診療科では、キャリアのロールモデルとなる先輩が少ない、または不在という問題があります。将来、妊娠や出産を検討していても、職場に育児と仕事を両立している女性医師がいなければ、その後のキャリアは想像しがたいものです。ロールモデルがいないだけではなく、上司や同僚が結婚や出産に対して理解がない場合も多々みられます。

余暇や勉強時間の確保が難しい

常に技術や情報をアップデートし続ける必要がある医師。学会やセミナーがオンラインで開催されることも増えてきました。しかし、常勤医師として働くなかで育児や家事の負担が大きくなり、加えて周囲の協力が得にくい状況の場合は、余暇や勉強時間の確保が難しくなるでしょう。

女性医師の離職率が高い

まず、女性医師は男性医師と比較して離職率が高い現状があります。離職のきっかけで最も多いのは、出産・育児です。院内保育所の整備や時短勤務制度の導入など、女性医師の復帰支援に力を入れている病院はあるものの、決して多いとはいえません。子どもを持つ女性医師が、育児支援のないなかで適切なワークライフバランスを取るのは至難の業といえるでしょう。

仕事と妊活・不妊治療を並行して行いづらい

いざ子どもを授かりたいと思っても、業務量過多による時間的余裕のなさや体力的な問題などで妊活が上手く進まない場合があります。パートナーが妊活に非協力的であったり、生活リズムが違ったりするとさらに難易度は上がるでしょう。

不妊治療が必要な場合は、身体的・精神的な負担はさらに大きくなります。とくにオンコールや緊急オペが入る外科系の診療科の場合は、治療に集中するために離職・休職を選択するケースが少なくありません。

女性医師のキャリア例

女性医師のキャリアの例

働き方が多様化したとはいえ、まだまだ長時間の過酷な勤務が多い医師の働き方。専門性も磨かれ、医師としてこれからという時期に、結婚や出産に踏み切れない方もいるでしょう。

女性医師が結婚・出産を想定したライフプランを描くにあたり、どのようなキャリアビジョンがあるのでしょうか。ここでは女性医師のキャリア例について見ていきましょう。

常勤にこだわらずに働く

女性医師が産後も常勤で働くとなると、自ずと勤務時間は長くなります。勤務先の病院側・家族側双方のサポート体制が十分でない場合には、自身の健康を損なうリスクも...。

また、乳幼児期の子どもは感染症にかかりやすく、子どもの体調不良で仕事を早退しなければならないケースが必然的に増えます。そのため、産後は非常勤として復職し、子どもが成長するにつれて常勤に移行していく方法をとっている女性医師もいます。常勤にこだわらず、子どもの成長にあわせて柔軟に働き方を変えるのもよいでしょう。

内科、皮膚科、耳鼻咽喉科などは、他の診療科と比較して非常勤の割合が高い傾向にあります。とくに内科は非常勤の求人数が多く、子育て世代の女性は復職しやすいようです。

オンコールなどがない診療科に転科する

皮膚科、眼科、麻酔科など、オンコールがなくワークライフバランスが取りやすい診療科に転科するのもひとつの手です。

また、整形外科や形成外科などで培った技術を、基本的に当直がなく定時で帰れる美容外科で活かす女性医師もいます。美容外科では診療が朝10時からのところも多く、「家事の時間が取りやすい」「パートナーと子どもの送り迎えの分担をしやすい」という声も聞かれます。

妊娠・出産とあわせて大学院に進学して研鑽する

妊娠・出産を機に大学院に入学するキャリアの築き方もあります。臨床からは少し離れることになりますが、研究のほうが時間の融通がききやすく、子育てと両立しやすい環境です。

元から研究にも興味があった場合は、医学博士取得後に研究に力を注ぐ道も開けるかもしれません。

管理職の道をめざす

上司が男性のみの環境で苦労した経験から、後輩に同じ思いはさせまいと管理職になる女性医師もいます。管理職になる女性医師が少ないからこそ、女性ならではの視点で男女ともに働きやすい勤務環境を整えることができるでしょう。

開業する

出産を機に開業を目指す道もあります。一般的に女性医師の開業は婦人科が有利とされ、どの地域でもニーズが高いことから経営が上手くいきやすいメリットがあります。

資金調達やスタッフの採用など、開業のハードルは高いものの、自分やパートナーの出身地などで開業を目指すケースもみられます。働き方を自分で決められたり、地域医療に携われたりと、実現したいクリニック像がはっきりしている女性医師にとっては、挑戦しがいのある選択肢でしょう。

医師の経験を活かして医師以外の職種に就く

医師の経験は、病院以外の幅広い分野で生かすことができます。保健所や市役所、製薬会社、コンサルティングファーム、医療系ベンチャー企業など、転職先・職種は様々です。臨床の現場や子育ての経験などで感じた課題の解決を目指し、政治家に転身した女性医師もいます。

臨床医より年収が下がる場合はありますが、お金以外のやりがいを得たり、自分らしい生き方ができたり、医療従事者以外とのつながりができたりと魅力は尽きません。医師免許は定年がない資格のため、出産をきっかけに病院から一度離れても、ほかの仕事で視野を広げてから臨床に戻ることも可能です。

キャリアと家庭の両立には周囲の協力が不可欠

キャリアと家庭の両立には周囲の協力が不可欠

女性医師が出産・育児後も働き続けやすいように、体制を整える病院は少しずつ増えてきています。しかし、いまだに家庭を持ちつつ臨床の第一線で働くことは難しい職種であることには変わりないでしょう。

そのような現状において、やはり周囲の協力は不可欠。ひとりで抱え込まないようにパートナーをはじめとした家族、勤務先の上司・同僚、友人など、頼れる人には頼る姿勢が大切です。

周囲が協力しやすいようにどのような状況で何に困っているのかを小まめに共有することも重要です。とくにパートナーにはスムーズに動いてもらえるよう、要望を可能な限り具体的に伝えることを意識しましょう。

また、院内保育所やベビーシッター、病児保育、家事代行などのサービスを活用することも考え方のひとつです。家事の負担軽減のために、ロボット掃除機や洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機などの時短家電を取り揃えてもよいでしょう。

自分ひとりで頑張ろうとせず、上手く周囲の協力や外部サービスを取り入れていくことで、身体的・精神的負担が軽減されて自身に余裕ができます。その結果、より仕事に集中できたり十分に家族との時間がとれたりといったメリットも生まれます。

状況に応じて、臨機応変に働き方を変える"柔軟さ"が重要

出産適齢期と研修や専門医取得の時期が重なってしまう女性医師。「キャリアと家庭を両立させる」というと困難に聞こえるかもしれません。しかし、ひとりの力だけでは確かに両立は難しいですが、自分と周囲の様々なリソースをフル活用して環境を整えることで、両立できる見込みはあります

これから女性医師がさらに増え、育児支援や複数主治医制の推進など、取り巻く環境は少しずつ変わっていくでしょう。結婚や出産を最初から諦めるのではなく、その時々の状況に応じて働き方を柔軟に変えながら、自分なりのバランスの取り方を見つけていきましょう。

ドクタービジョン編集部

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