医療動向 公開日:2022.07.29

医療分野におけるIT技術の関わり方とは<2022年6月最新版>

医療分野におけるIT技術の関わり方とは<2022年6月最新版>

感染症拡大防止の観点から、日本ではオンライン診療を実施する医療機関が増加しました。遠隔地間における臨床情報の共有、学術大会へのオンライン参加と並び、医療分野におけるIT化が進んだ事例として、多くの方が知るところではないでしょうか。

今回は、医療分野におけるIT技術の活用事例、2022年6月時点での最新動向、医療分野におけるIT化の流れなどを解説します。

医療分野のIT化の現状

医療分野のIT化の現状

日常よく耳にするITとは、Information Technology、つまり「情報技術」のことを指し、主にコンピューター、ソフトウェア、アプリケーションに対して用いられます。似た言葉でICTがありますが、こちらは「Information Communication Technology:情報通信技術」という意味です。国際的には両方ともICTと認識されていることを受けて、国内ではICTで定着が進んでいます。

日本でのIT活用に向けた取り組みは、コロナウイルス感染症流行以前から始まっています。国民に住み慣れた地域でその人らしい生活を送ってもらうため、どの地域でも質の高い医療サービスを提供可能にする情報連携と体制づくりが進められていました。

医療現場では、診療で使用する医療器具や機器類、会計・精算システムに至るまで電子化が進み、診療情報など主要な情報を紙媒体からオンライン上で作成・保管するようになりました。

しかし、医療機関や調剤薬局、福祉介護施設等が独自に有する情報のオープン化、情報連携などの最適化はもう少し先になるでしょう。電子カルテで使用するフォーマットやシステムは、カスタマイズされ複雑化していることから、現行データの連結とシステム統一が難しいためです。また、患者さまから預かる個人情報と健康情報などは機微情報に該当することから、センシティブな対応が求められることも原因です。

現在導入が進んでいるIT技術まとめ

現在導入が進んでいるIT技術まとめ

ここでは、現時点で医療機関においてとくにIT化が進んでいる業務と詳細を確認しましょう。

レセプトの電子化

日本では健康保険法に基づく社会保険方式が運用されており、診療内容から保険点数と医療費を計算します。患者さまには年齢と加入している医療保険に応じた割合、残りを患者さまが加入している医療保険の保険者(健保組合)に請求するためにも、医療機関にとって正しいレセプト作成と請求は欠かせないものです。

レセプトが電子化したことで、診療報酬改訂にも対応したレセプト作成と提出がオンラインで行われるようになりました。また、医事会計システムと連動させることで、支払い請求処理と未収金管理機能の活用など業務効率化が進みました。

電子カルテ

患者さまの診療内容と治療経過などの情報を電子化する流れも進んでいます。電子カルテも法律によって作成と保存義務が定められ、従前のカルテと同様「真正性」「見読性」「保存性」の3基準が求められています。

電子カルテのフォーマットは、多くの企業が参入し独自の仕様・価格の製品を販売しています。使用する診療科や医療機関の意向を反映したフォーマットが新たに開発されるものの、各フォーマットとの互換性のなさが問題視されています。

オーダリングシステム

オーダリングシステムとは、各種検査の実施、処方、投薬などの指示と詳細を一括して伝達・管理するシステムです。比較的規模の大きい医療機関をはじめ、医師、看護師、薬剤師、放射線技師、理学療法士などによる多職種連携が求められる医療機関でも欠かせないシステムといえるでしょう。

オーダリングシステムのメリットは、医療者側の業務効率化だけではありません。患者さまの情報を一括して共有することで、各種検査や治療のスケジューリングをより迅速に行えるため、結果として患者さまの待ち時間短縮にもつながるのです。

医療用画像管理システム(PACS)

各種画像診断の実施件数と撮像画像は、年々増加傾向にあります。そこで、CT、MRI、エコーなど各種画像診断結果を所定のサーバーに格納したのち、診察室のパソコンなどの端末から閲覧可能にするシステムが開発されました。このサーバーとシステムが医療用画像管理システム(PACS)で、「画像保存通信システム」と呼ばれることもあります。

医療用画像管理システムにより、隔地の医療機関とVPNなどで接続し画像共有が可能になることから、遠隔診断の推進も期待されています。

オンライン予約

病院に限らずさまざまな場面で使われるようになった予約システムですが、総合病院のように大規模な医療機関はもちろん、小規模のクリニックでも導入が進んでいます。初診・再診問わずインターネット上で予約を取れるようになったのも、医療のIT化が進んだ恩恵の一つといえるでしょう。

医療分野における最新IT事情

医療分野における最新IT事情

IT化は医療行為に関わる方面でも進んでいます。ここでは、とくに注目を集めている事例を紹介します。

乳癌の超音波検査・読影を自動化/リングエコー

乳房の検査に特化した乳房用リング型超音波検査装置「リングエコー」とAIによる自動判定を組み合わせた、乳癌の自動判定システムが2022年5月に実施された日本超音波学会第95回学術集会で発表されました。

この装置では、被験者がリングエコー上部に設置されたリング状のプロープ部分に乳房を入れるようにしてうつぶせになった状態で自動撮影を実施、撮像画像をAIで分析し乳房の異常を調べます。乳房全体を自動撮影するため画像が安定しやすく、比較読影や読影ならびに検診時間の短縮が期待されています。

高血圧治療用アプリが薬事承認

スマートフォンで使用可能な高血圧治療アプリが、一般名称「高血圧治療補助プログラム」として2022年4月に薬事承認を取得し、同年内の保険適用を目指しています。アプリ単体での薬事承認を取得した事例は初めてで、高血圧の治療アプリ実用化も世界初となり注目を集めています。生涯医療費削減への期待や優れた費用対効果が見込まれていることも、同アプリが評価された理由です。

同アプリは、毎日の血圧記録と生活習慣のログから問題点を洗い出し、食事・運動・睡眠への指摘と行動改善を促すことで、生活習慣の改善と降圧を目的としています。薬物療法やオンライン診療との併用も可能です。

連続的かつ非観血的に血糖を測定・記録する間歇スキャン式持続血糖測定器/FreeStyleリブレ

糖尿病のデバイス治療で使用する間歇スキャン式持続血糖測定器について、2022年度の診療報酬改定で算定基準が見直されたことを受けて、適応が拡大しました。

間歇スキャン式持続血糖測定器は腹部など体表に装着するセンサーです。専用のリーダーもしくはアプリをインストールしたスマートフォンをこのセンサーにかざすと、血糖値の推移を確認することができます。従前の診療報酬制度では、強化インスリン療法を受けているなど、所定の条件をクリアしないと算定できませんでした。しかし、今回の診療報酬改定で1日一回インスリン療法を実施している患者さまも対象に加わったことで、今後爆発的に導入が進むでしょう。

医療分野におけるデジタル化の方針

医療分野におけるデジタル化の方針

厚生労働省は『新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プランについて』の中で、「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」「電子処方箋の仕組みの構築」「自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大」の3つのアクションを掲げ、2022年度中の運用開始を目指しています。

医療情報の共有化に向けた政策が進行中

政府は2022年6月7日に閣議決定した『経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針)』で医療DXを推進する方針を示し、「医療DX化推進本部」ならびに「全国医療情報プラットフォーム」の創設を明らかにしました。

これにより現在進められているのがPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の拡充です。同プラットフォームでは、健康保険組合が出す診療報酬明細書や特定健診情報、自治体が出す自治体検診情報や予防接種情報、医療機関に紐づく電子カルテと電子処方箋などの情報を「オンライン資格確認システム」に登録することで、患者さまはマイナポータル経由で、医療機関はシステム上で、患者さまの情報を確認可能な体制の構築を目指しています。

近年流行が続いている新型コロナウイルスをはじめとする感染症や災害、救急などにおける対応を円滑にすることなどが期待されているのです。

2023年度からはマイナ保険証導入が進む可能性も

マイナンバーカードと健康保険証を一体化させた「マイナ保険証」使用に必要なシステム導入が2023年度から義務化されることが厚生労働省から発表されました。マイナンバーカード普及率は、2022年6月1日時点で44%です。しかし、こうした取り組みにより、マイナンバーカードの普及率も進むことが考えられます。マイナ保険証はオンライン資格確認システム利用で必須となることもあり、医療機関での顔認証付きカードリーダー導入支援も実施する方針です。

IT化によって日本の医療は新たなフェーズへ

医療機関のIT導入が遅れていることは、以前から問題視されていました。とくに近年は感染症流行への対策が後手に回った苦い経験は、医療機関同士および保健所等関連各所との連携をより円滑を意識した政策の推進に少なからず影響を与えているでしょう。

IT化による医療現場が抱える課題の解決は、現場で働く医師や医療従事者の負担削減につながります。政府による政策と提言を注視すると同時に、ITを利用した新技術の登場にもアンテナを張っておく必要があるでしょう。

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