【5分で分かる】医師の育休と給付金、取得率~2022年最新版~

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働き方

公開日:2022.12.12

【5分で分かる】医師の育休と給付金、取得率~2022年最新版~

【5分で分かる】医師の育休と給付金、取得率~2022年最新版~

※この記事は2022年12月12日時点の情報です。

時期ごとに解説!医師が取れる産休と育休

若い女性医師

妊娠中(妊婦健診のための休暇など)

男女雇用機会均等法第12条では「事業主は妊産婦(妊娠中または出産後1年以内の女性)が妊婦健診や保健指導の受診に必要な時間を確保できるようにしなければならない」と定められており、妊娠中は赤ちゃんの発育状態や妊婦さんの健康状態を定期的に確認する妊婦健診のために休暇を取得できます。
健診のための休暇が有給となるか無給となるかは勤務先の規定によって異なりますので、事前に確認しておくようにしましょう。

妊婦健診は自費診療ですが、市区町村に「妊娠届」を提出すると母子手帳と共に「妊婦健康診査受診券(補助券)」が配布され、次回以降の健診では補助金分を差し引いた額で受診が可能になります。補助金額は都道府県によって異なりますが、最終的な自己負担額は3万円~7万円程度に抑えられることが一般的です。

妊産婦はそのほかにも、医師等から受けた指導事項の内容に沿って時間外労働や深夜業の制限、勤務時間短縮、通勤緩和などの負荷軽減措置を受けることが可能です。
医師からの指導内容については、健診時に軽減措置が必要であると医師が判断した際に渡される「母性健康管理指導事項連絡カード」を事業主に提出し、伝達に齟齬が起こらないようにしましょう。

妊娠初期はお腹が目立たないため、職場の上司や同僚に妊娠を告げにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、妊娠初期は嘔吐・吐き気・胸やけなどの症状が出る「つわり」が始まるだけでなく、流産の心配もある時期。さらに胎児が薬物や放射線に対しての感受性が高い時期でもあるため、放射線曝露のリスクが高い業務が多い医師は配慮してもらう必要があります。
妊婦が周囲の理解とサポートを得るため、施設側が産休や育休に備えて体制を整えるためにも、妊娠が分かったら早めに職場の上司や総務担当者に相談するようにしましょう。


産前・産後(産前産後休業)

産前休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から出産日まで取得可能です。もし出産予定日より出産が遅れても、予定日から出産当日までは産前休業に含まれます。
また、産後は法律により出産の翌日から8週間就業できませんが、産後6週間経過後に医師が認めれば、職場に就業を請求し復職することが可能です。
産前・産後休業は勤務先の規定によって請求方法が異なるものの、休業取得を理由にした解雇などは違法とされており、これを理由に失業させられてしまうようなことはありません。雇用形態も関係なく、正社員以外の契約社員やパート・アルバイトなどの誰もが取得できます。

産前休暇に入る前も、安定期に入ったからといって長時間の立ち仕事や前屈みの姿勢が続くことや夜勤・時間外勤務・休日勤務などはできるだけ避けるようにしましょう。
これらは腰痛や切迫症状を引き起こしたり胎児に影響を及ぼしたりと、妊娠特有の症状の悪化や異常の発生につながる可能性があります。とくに妊娠後期は切迫早産などが生じやすいため、予防のためにお腹が張ったら休むなど、無理をしない働き方を心掛けるようにしましょう。
周囲に迷惑をかけることが心配な方もいるかもしれませんが、無理をして入院することになればさらに迷惑をかけてしまう可能性もあります。そうならないためにも、必要な際は適切な負担軽減措置を受けられるよう職場に相談しましょう。

育児中(育児休業)

男女ともに休業開始予定日の1か月前までに申請をすれば、子どもが1歳になるまでの期間「育児休業」を取得することができます。
万が一、子どもが1歳になった時点で保育所などに入れなかった場合は、子どもが1歳6か月まで(再延長する場合は2歳まで)育児休業の延長が可能。延長の申請は子どもが1歳(一度延長した場合は1歳6か月)を迎える2週間前までとなっており、休業を申し出る時点で「子どもが1歳6か月(2歳に達する日まで取得する場合は2歳)に達する日までの間に雇用契約が満了することが明らかでない」などの要件を満たしていれば、契約社員やパート・アルバイトといった有期契約労働者も取得可能です。

育児休業期間には、原則として休業開始時の賃金日額×支給日数×67%(育児休養開始より181日目以降は50%に減額)の育児休業給付金が支給されます。給付金の受給中は社会保険料が免除され、非課税なので所得税もかかりません。

育児休業中に注意しなければならないのが、アルバイトによる給付金の減額です。休業中でも一時的・臨時的な就業は可能ですが、月に10日以内または80時間以内という就業日数の制限があります。
さらに、休業中の賃金が「休業開始時の賃金日額×支給日数」の80%以上になってしまうと給付金が不支給となるので注意しましょう。また、80%以下の場合も支払われた賃金額に応じて給付金が減額される場合があります。ちなみに、休業中に賃金の支払いがあった場合は雇用保険料の負担も発生します。


産後パパ育休(2022年10月1日~施行)

2022年10月1日に「産後パパ育休(出生時育児休業)」が施行され、さらに男性の育児休業が取得しやすくなりました。
具体的には、子どもの出生後8週間以内の間で4週間までの休業を2回に分割して取得できるようになったため、出生・退院時などに1回休業し、さらにもう1回休業を取得することが可能となっています。
また、育児休業制度の改正も行われ、1歳までの育児休業を2回に分割して取得できるようになったため、夫婦が育児休業を交代できる回数も増えました。さらに、労働協定と個別合意ができれば産後パパ育休中に一部就業することも可能となっています。

厚生労働省による「令和3年度雇用均等基本調査」によると、令和3年度(2021年度)の男性育児休業取得率は、2022年10月時点で過去最高の13.97%。9年連続で上昇しているのは、子どもの成長を間近に感じられたり、出産後の母親の支えになれるなど、父親が育児休業を取得する良い面が周知されてきている傾向にあります。

しかし、施設から育児休業の取得や延長を拒否されたり、キャリアに影響が出たりすることが不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
都道府県労働局には育児休業・産後パパ育休「特別相談窓口」が設置されており、事業主とのトラブルだけでなく育児休業に関するあらゆる相談に乗ってくれます。困ったことがあれば活用するようにしましょう。

医師の育休、夫婦どちらが取る?

グラフ

女性医師の育休の実態

一般的に休みを取りにくいといわれる女性医師ですが、育休取得についてはどうなのでしょうか。
愛知県内の病院325件を対象として平成30年6月~7月に実施された、「育児期就労支援に関するアンケートの調査結果」を見ると、その実態が見えてきます。

現在育児休業中または育児休業をここ3年間に取得した女性医師がいる病院は、全体の半数以下の43%でした。

常勤医師に占める女性医師の割合は、常勤医師が10人以上在籍している病院で多くの場合20~30%。その中で、妊娠中や子育て中の女性には負荷が大きい「当直」を免除や緩和できる制度などがあると答えた病院は49.4%にとどまりました。(その中で、妊娠中の当直免除制度がある病院は41%、当直緩和制度がある病院は26%。育児中の当直免除制度がある病院は46%、当直緩和制度がある病院は31%にとどまりました。)常勤医師が10人未満である病院では、そもそも制度の対象となる女性医師がいない場合もあります。
「医師不足を感じている」病院の割合が60%であることも、制度を整えることが難しい理由の1つに挙げられるでしょう。

産休・育休の代替要員を確保する依頼や募集などを実施する病院の割合は47%であり、そのうち実際に代替医師が勤務した病院は47.%となっています。
また、育休中の医師がいる診療科における医師の増員がある病院は18%。1人の仕事を複数で分担して医者1人当たりの負担を減らす「ワークシェアリング制度」の導入の割合にいたっては2%だったことからも、休業することで同僚の負担が増えてしまうという心理的な育休の取りにくさがうかがえます。


男性医師の育休への意識

女性医師のパートナーの約7割が医師という調査結果(女性医師の勤務環境の現況に関する調査)があることから、全国の20~60代の男性医師を対象に「男女共同参画についての意識調査」が平成25年8月に実施されました。
その報告書からは、男性医師は「もっと家事・育児に関わりたい」と思っているのに労働時間がそれを阻んでいる、という現状が浮かび上がってきます。

男性医師の労働時間は、全体の62.4%が一日12時間以上15時間未満。「仕事の比重が重く、家事や育児に関われない」と答えた医師が回答者の9割以上にのぼり、実際に育児休暇を取得できていた男性医師は2.6%でした。
「育児休暇取得の希望はあったが、職場に言い出せなかった」という男性医師が14.0%いるものの、82.6%の医師は「考えたこともなかった」と回答しています。

しかし、厚生労働省の「平成 24 年 臨床研修に関するアンケート調査」(平成24年3月~4月実施)では39.4%の男性医師が「育児休暇を取りたい(条件が合えば取りたい)」と回答しており、若い年代の育児に対する意識が大きく変わってきていることがうかがえます。
長時間労働や人手不足という障害はあるものの、父親に対する育休制度は拡充されてきており、男性が育児休暇を取るという考え方は一般化しつつあります。


一般企業との違いは?

一般企業における男性社員の育児の関わり方についてその実態やニーズなどを把握し、仕事と育児を両立しやすい環境を進めるために、平成29年9月~10月に「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査」が全国の従業員51名以上の企業5000社を対象に実施されました。
その調査報告書によると、企業で働く正社員のうち週の労働時間が 60 時間以上の割合は「0%」が 54.2%でもっとも多く、「0%超~3%未満」が21.5%、「3%以上~5%未満」が8.8%という結果です。
一方、医師は62.4%が一日12時間以上15時間未満の労働時間となっており、一般企業に比べてかなりの長時間労働であることが分かります。

また、男性正社員の育児休業取得率は「0%」が87.6%という数値。逆算すれば12.4%の方が育児休業を取得できていることになり、男性医師の育児休暇取得率2.6%と比べると、一般企業は約6倍の取得率となっています。

しかし、「育児休業を取得しやすい雰囲気があるか」という質問に対しての男性社員の回答は「あまりない」が 31.5%でもっとも多く、男性医師と同様、育児休暇取得の希望を言い出しづらい雰囲気があると考えられます。

これらの結果から、男性医師は一般企業と比べて労働時間が長く、育児休業の取得率も低い傾向にあります。一般企業は育児休業を取得できている割合が医師に比べて高い一方で、「男性が育児休業を取得しやすい雰囲気がある企業」は少なく、男性社員も男性医師と同じように育児休暇を取得しづらい環境です。
しかし、一般企業にはそうした中でも育児休業を取得している男性が一定以上存在しています。取得しづらい環境を変えていくのはもちろんですが、まずは男性医師が育児休業を取得するという前例を増やしていくことが必要です。「産後パパ育休」などの制度が手厚くなりつつある今、育児休業を男性医師が取得し、産後の女性医師のキャリアを守るという道も拓けてきているのではないでしょうか。

安心して育休を取れる環境づくり

親子

まだまだ育休取得率は低いものの、国を挙げて男性の育休取得が推奨されるようになったり、研修医のアンケートでは約半数の男性が育休を取得したいと答えるなど、医師を取り巻く育休環境は変化しつつあります。
将来的に出産を考える女性医師にとっては、自身が育休を取る・パートナーが育休を取る・育児と両立できる職場に転職するといった選択肢が広がりつつあると言えるでしょう。

ここで、当サイト「ドクタービジョン」を活用して子育てしやすい環境へ転職し、育児と仕事を両立させている医師の事例をご紹介します。

【事例1】消化器内科医Aさんの場合(女性/30代前半/夫と2人暮らし)

Before
・9~18時の週5日勤務で当直あり
・子どもを授かりたいと考えているが、通勤時間が約1時間、当直もあり多忙な日々。育休を取れるか不安な環境...。

After
・9~18時・週5日勤務だが当直無し
・自宅から近く医師の希望を組んでくれる病院に転職。医師の働き方改革に力を入れており、産休・育休・復帰後の子育てを応援してくれるうえ、消化器内科で積んできた経験やスキルはそのまま活かせる環境に恵まれ、来春に産休・育休を取得予定。

【事例2】一般内科医Bさんの場合(男性/30代前半/妻と2人暮らし)

Before
・9~18時の週5日勤務で当直・オンコールあり
・育休を希望していたが、当直やオンコールで妻と過ごす時間もゆっくり取れない日々...

After
・9~18時の週5日勤務で当直あり・オンコール無し
・急な呼び出しが無くなったうえ、常に1~2名の医師が育休を取得している、育児を推奨してくれる病院に入職。約1年後に育休を取得し、現在は復職して家族との時間と仕事のメリハリがつけた働き方を実現中。


ドクタービジョンを利用して転職した女性医師の人数は、2020年度246%・2021年度411%と大幅に増加中(2022年8月時点、当社調べ)。多くの女性医師が上記のような「育児と仕事、どちらも充実できる転職」を叶えており、女性医師の妊娠・出産をサポートしたいと願う男性医師の希望を叶える転職も実現しています。

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ドクタービジョン編集部

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