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臨床研究で用いられる「PICO」「PECO」についてご存知でしょうか。これらは研究の目的を明確にするために用いられる考え方です。私たち医師は論文を読む機会が多くありますが、PICOやPECOを意識して読むことで、短時間で論文の重要なポイントを認識できるようになります。また、自分で研究計画書を作成し他者へ研究内容を伝える際にも、このPICO/PECOが役立ちます。
この記事では、PICO/PECOとは何か、これらを理解しておくメリットなどについて解説します。
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「PICO」と「PECO」は、臨床疑問の定式化に用いられる手法・考え方です。質の高い研究として認められるためには、評価方法にブレがなく、信頼性が置けるものであることが大切ですが、PICO/PECOはこれに役立てることができるテクニックで、いずれも英単語の頭文字を組み合わせたものです。
PICOは、下記の単語を意味しています。
P | Patient(患者) |
---|---|
I | Intervention(介入) |
C | Comparison(比較対照) |
O | Outcome(結果) |
一方、PECOは下記の単語を意味しています。
P | Patient(患者) |
---|---|
E | Exposure(曝露) |
C | Comparison(比較対照) |
O | Outcome(結果) |
つまり、PICOとPECOの違いは2つ目の頭文字であるIとEだけで、そのほかの頭文字は同じです。後述しますが、PICOは介入研究、PECOは観察研究で用いられることになります。
まずは、PICO/PECOに共通する「P・C・O」について見ていきましょう。
Pは「患者」を意味します。研究対象として組み込む患者さんのことで、条件を絞って指定します。たとえば「ステージ4の肺がん」「HbA1cが8%台の糖尿病」などです。
一律に「肺がん患者」や「糖尿病患者」とすると、数が多すぎて研究に適さないことが多いため、条件を絞り込むことが一般的です。「血液透析中の方は除く」のように、除外条件を設定することもあります。
Cは「比較対照」を意味します。後述するIやEをふまえ、「IやEに当てはまらない人」と考えるとわかりやすいです。
先ほどの肺がんの例であれば、「既存の抗がん剤を使用する」「放射線療法を行わず抗がん化学療法のみを行う」などが考えられます。
治療について比較検討する際は、現在標準治療とされているものをCとすることが一般的です。
Oは「結果」を意味します。IやEの結果、どのような変化が生じたかを評価します。
これも先ほどの例で考えると、「肺がん患者の5年生存率」「糖尿病患者のHbA1c値」などが該当します。
続いて、PICOとPECOで異なる部分である「I」と「E」について解説します。
Iは「介入」を意味します。一般的に治療を指すことが多く、先ほどの肺がんの例ならば「新しい抗がん剤を使用する」「抗がん化学療法と放射線療法を併用する」などが考えられます。
ただし、「介入=治療」というわけではなく、「血糖値の持続モニタリングを行う」といった介入方法もあります。
Eは「曝露」を意味します。たとえば「1週間に200 g以上のアルコール摂取」「1日1箱以上の喫煙」「1日10時間以上のディスプレイを使った作業」などが該当します。
IとEを理解する上で重要なのは、Iは"患者に対して積極的な介入を行う"のに対し、Eは"曝露要因があるかないか"で患者を分類する点です。
IとEが同じ「1週間に200 g以上のアルコール摂取」であったとしても、もともとアルコールを摂取しない人にアルコールを摂取させているのであれば、これは「介入」なので「I」になります。一方、研究を開始する前からアルコールを200 g/週以上摂取している人を対象とするのであれば、これは介入ではなく「曝露」であり、「E」に該当します。
研究手法からも考えてみましょう。介入研究では、特定の介入の影響を評価するため、「PICO」が用いられます。観察研究であれば、特定の要因への曝露を検討するため、「PECO」が用いられることになります。
PICO/PECOを用いる際にIとEの違いについて考えることは少ないと思いますが、このような違いがあることを認識しておくと良いでしょう。
PICOとPECOの概要については、ご理解いただけたでしょうか。続いては、PICOやPECOを用いることでどのようなメリットがあるかを解説していきます。
医学研究として行われる研究には複雑なものが多いため、研究内容を理解するには時間が必要となります。また、日ごろの臨床疑問を研究テーマとして発展させるのも、慣れないうちは難しいと感じるものでしょう。
そこで、PICOやPECOの出番です。具体的には、以下のようなメリットが生まれると言えます。
これらは論文検索の際にも、自身が研究を行う際にも、メリットとなり得ます(後述)。
PICO/PECOを活用することは、クリニカル・クエスチョン(CQ)をリサーチ・クエスチョン(RQ)へ構造化する行為とも言えます。「降圧薬ってどのくらい効いているのかな?」という疑問は日常で抱くCQですが、これだけでは漠然としていて、研究テーマにつなげるには適しません。これを研究に発展させるには、具体的なRQに落とし込む必要があります。そのためにPICOやPECOが使われるというわけです。
臨床疑問をPICO/PECOの形式にする方法は、研究の種類によって異なりますが、一般的には以下の手順で進めます。
PICOとPECOの作成例をいくつか示します。
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研究内容をアウトプットする過程において、PICOやPECOが有用なメソッドであることがご理解いただけたかと思います。
PICO/PECOを使って検索キーワードを選定すると、漫然と検索するより目的の情報に到達しやすくなります。
ここではPICOを例にしてみましょう。実臨床において「慢性蕁麻疹で抗ヒスタミン薬を使っても効果がない患者さんに対して、抗ヒスタミン薬を増量投与することは意味があるのか?」という疑問を持ったと仮定します。この疑問を解決するためには、論文検索サイトである「PubMed」や「医中誌Web」で検索することが多いかと思います。
このとき、PICOは下記のように表現できます。
P | 慢性蕁麻疹患者 |
---|---|
I | 抗ヒスタミン薬の増量 |
C | 抗ヒスタミン薬の通常量投与 |
O | 蕁麻疹の症状 |
これをふまえると、検索キーワードはたとえば「蕁麻疹 抗ヒスタミン薬増量」などになります。検索結果から、自分の疑問を解決できそうな論文を探して読むことで、問題解決に至ります。
このような疑問は、近年は各種疾患に関するガイドラインなどでCQとして掲載されていることも多くあります(先述の疑問も、日本皮膚科学会の『慢性蕁麻疹ガイドライン2018』に掲載されているものです:CQ11、構造化抄録2-5)。PICO/PECOを活用した論文検索はまだ難易度が高いと感じる方は、まずはこうしたガイドラインを参照してみると、PICO/PECOを用いた研究デザインを学ぶ上で有用です。
PICO/PECOで研究の目的を明確にすることで、研究デザインやデータの収集・分析方法の決定に至ることができます。
論文執筆の際も、PICO/PECOを意識的に使用すれば、研究の目的を読み手に明快に伝えることができます。自身の研究内容をアピールしやすくなりますし、質疑応答などでフィードバックを得やすくなる効果も期待できます。
研究計画書の作成や学会でのプレゼンテーション、論文のアブストラクト作成など、多くの場面で役立てることができるでしょう。
今回は研究内容を明確化するために用いられるPICOとPECOについて解説しました。両者にはIとEの違いがありますが、研究内容を要約し明確化するという目的は同じです。自身が研究活動を行う際にも、他者の研究内容を理解する際にも、役立つ考え方と言えるでしょう。
大学卒業後、市中病院での初期研修や大学院を経て現在は主に皮膚科医として勤務中。
自身の経験を活かして医学生〜初期研修医に向けての記事作成や、皮膚科関連のWEB記事監修/執筆を行っている。