2024年度診療報酬改定の注目ポイントは?働き方改革や医療計画との関連も解説

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業界動向

公開日:2023.06.26

2024年度診療報酬改定の注目ポイントは?働き方改革や医療計画との関連も解説

2024年度診療報酬改定の注目ポイントは?働き方改革や医療計画との関連も解説

保険医療機関の大きな収入源となっている「診療報酬」。診療行為(診察や検査・処置など)の一つ一つに診療点数が定められており、この点数に応じた報酬が医療機関に支払われる仕組みになっています。

診療報酬は社会情勢に合わせて変更する必要があり、原則として2年に1回改定されています。2024年は、この改定が行われる年度にあたります。

この記事では、2024年度診療報酬改定に向けて注目されるポイントについて解説します。

2024年度の診療報酬改定は「トリプル改定」

介護報酬、障害福祉サービス等報酬との同時改定

2024年度は、診療報酬のほかに介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定も同時に行われます。診療報酬は診療行為のサービス対価を決める制度ですが、介護報酬は要介護者・要支援者への、障害福祉サービス等報酬は障害者(児)や難病疾患の対象者へのサービス対価を決める制度です。

これら3つが同時に改定されるのが、通称「トリプル改定」です。トリプル改定は6年に1回のため、今回の注目点の一つです。

トリプル改定においては各報酬間の連携が重要なため、各種議題についての意見交換会が実施されます。意見交換会には、医療サイドの「中央社会保険医療協議会」と介護サイドの「社会保障審議会介護給付費分科会」の両者が参加します。2023年5月までに3回開催され、地域包括ケアのさらなる推進に向けた連携や、高齢者施設・障害者施設等における医療、訪問看護に関することなどが議論されました。

2025年問題と2040年問題

トリプル改定にかかわる話題として、「2025年問題」と「2040年問題」があります。

2025年問題の「2025年」とは、いわゆる団塊の世代と呼ばれる1947〜1949年生まれの人(第1次ベビーブーム世代)が全員75歳以上になる年次です。このため75歳以上の後期高齢者が大きく増えることになります。

2025年を過ぎると、2040年にかけては高齢者人口の増加自体は落ち着きますが、支え手となる生産年齢人口は年々減少していきます。これにより、さらに社会保障費の負担が増えることが「2040年問題」です。第2次ベビーブーム世代と呼ばれる1971〜1974年生まれの人が65歳以上となった後、2043年には65歳以上人口がピークを迎えます。こうした時代になれば「65歳=仕事を辞めてリタイア」というわけにもいかなくなるでしょう。2040年問題対策の一つとして「生涯現役社会」をスローガンとする、高齢者が働きやすい社会づくりが進められています。

2040年が実際に訪れた際、社会保障費や診療報酬面にはどんな影響がもたらされるでしょうか。一般に高齢者ほど病気に罹りやすいため医療・介護需要が大きく、社会保障費も増加します。たとえば、要介護者等の高齢者が誤嚥性肺炎や尿路感染症を患った場合、介護だけでは対応が困難なため、医療施設である急性期病院に入院する必要があります。状態が落ち着いた後は、介護サービスを主体とする施設へ再度移る必要が出てきます。このようなケースでは両施設間のスムーズな連携が重要であり、医療-介護業界の橋渡しが診療報酬面でも評価されていくでしょう。

2024年度の診療報酬改定は、2025年前最後の改定となります。2040年問題を見据えた変更も求められており、社会の過渡期における診療報酬改定と言えるでしょう。

医師の働き方改革への対応

働き方改革関連法は2019年4月から施行されていますが、医師への適用は5年間猶予されてきました。2024年4月からは、いよいよ医師も働き方改革の対象となります

働き方改革は主に労働時間や連続勤務時間の制限が課されるものであり、診療報酬とは直接関連しないと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし診療報酬改定にも、働き方改革をサポートするような内容が含まれています。

たとえば2022年度の改定では、「医師事務作業補助体制加算」の見直しが行われました。従来医師が行うことの多かった文書作成(診断書など)やカルテ記載の業務を医師の指示のもとで行う「医師事務作業補助者」を配置し特定の条件を満たすことで、入院料に対する加算を算定できる制度です。医師から他職種へのタスク・シフトを進め、医師の過重労働問題解決・働き方改革へつなげようとする意図が感じられます。

2024年度の診療報酬改定は、医師の働き方改革実施前最後の改定であり、働き方改革への対応がこれまで以上に重視されています。具体的には、上記のタスク・シフト/タスク・シェアの推進のほかに、医療機関内の労働環境の改善、ICTによる業務効率化などを念頭に置いて改定が行われるようです。働き方改革の推進・普及と密接な関係があると言えるでしょう。

診療報酬改定DX、医療DX

近年、「DX」という言葉が頻繁に使われています。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、デジタル技術を利用することで生活をより良いものにしようという試みのことです。

診療報酬改定においてもDXを取り入れようという動きがあります。「診療報酬改定DX」と呼ばれており、具体的には以下の4つのテーマが挙げられています。

  • 共通算定モジュールの開発・運用
  • 共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善
  • 標準様式のアプリ化とデータ連携
  • 診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等
厚生労働省資料「診療報酬改定DX対応方針(案)」(令和5年4月)より引用

共通算定モジュールとは、診療報酬の算定や患者さまの窓口負担金を算出するための電子計算プログラムとして、業者や医療機関を問わず共有することを想定しているものです。医療機関やプログラムのベンダーは、診療報酬改定の時期に仕事が集中し大きな業務負荷が生じます。共通算定モジュールを導入することで、業務負荷を減らせると期待されています。

また、施行時期についても検討が進んでいます。診療報酬改定を施行する時期を後ろ倒しにすることで改修コストを低減させることが狙いです。

診療報酬改定にとどまらず、医療全体にかかわる「医療DX」も進められています。たとえば、「電子処方箋」の本格運用が2023年1月に始まりました。重複投薬の確認などが容易になります。ほかにも、電子カルテ情報の標準化や保険証とマイナンバーカードの統合(マイナ保険証への一本化)などが計画されています。

DXは社会全体のトレンドですが、医療界もその例外ではないと言えるでしょう。

第8次医療計画との関連

医療計画とは、医療法に基づき、効率的な医療提供体制の確保を図るための計画です。6年ごとに区切りがあり、2024年からは第8次医療計画がスタートする予定です。

従来は、5つの事業(救急医療・災害時における医療・へき地の医療・周産期医療・小児医療)と5つの疾病(がん・精神疾患・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病)が対象とされていました。しかし第8次医療計画からは、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、「新興感染症対策」が6つ目の事業として盛り込まれることになっています。

具体的には、感染拡大時に病床や人材を迅速かつ柔軟に確保できるよう、平時や感染拡大時のフェーズに応じた対応方針を定めることなどが想定されています。

2024年度の診療報酬改定では、この医療計画の改定も念頭に置かれています。新型コロナウイルス感染症への対応に加えて、たとえば救急医療については、第8次医療計画で高齢者の救急患者を受け入れるために、地域の救急医療機関の役割の棲み分け(急性期病院が重症患者の対応に集中できる体制)を明確化する予定であるのに対し、診療報酬改定では、地域包括ケア病棟を有する医療機関において救急医療の体制が要件化されます。

プログラム医療機器(SaMD)

プログラム医療機器(SaMD)の評価が明確化される点も、2024年度診療報酬改定の注目ポイントです。SaMDとは、アプリや人工知能(AI)などの技術が組み込まれた医療機器(および記録媒体)のことです。禁煙外来におけるニコチン依存症治療アプリや、一酸化炭素(CO)チェッカーなどが、すでに利用されています。そのほか、AIを活用した画像支援システムとして、腫瘍の悪性度を判定できる内視鏡や、異常所見の見落としを防ぐCTなどもあります。

DXと同様に、デジタル技術を活用したSaMDの普及も予想されており、診療報酬改定でも対応が進められています。

まとめ

今回は2024年度の診療報酬改定に向けて、注目ポイントを解説しました。これから議論を進める段階のものもありますが、とくに医師の働き方改革やDXについては、現場で働く医師もかかわる機会が多い話題です。今後の議論にも注目しておきましょう。

竹内 想

執筆者:竹内 想

大学卒業後、市中病院での初期研修や大学院を経て現在は主に皮膚科医として勤務中。
自身の経験を活かして医学生〜初期研修医に向けての記事作成や、皮膚科関連のWEB記事監修/執筆を行っている。

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