- 「将来、自分はどんな医師になりたいんだろう?」
- 「このままの道を歩んでいいんだろうか?」
- 「知り合いの医師は私生活も充実しているようだが、自分は毎日仕事に追われプライベートな時間の確保もままならない...」
このように悩む先生は少なくありません。医師のキャリアパスは多岐にわたり、専門医を目指したり、研究に専念したりと様々な選択肢が考えられます。百人いれば百通りのキャリアがある中で、自分だけのキャリアを見つけるのは難しいものです。ましてや知人の医師や同僚が活き活きとキャリアを積み重ねている姿を見ていると、焦るのも当然です。
そこで今回は、「医師のキャリアプラン」 について解説します。年代別のキャリアやキャリアプランの立て方、キャリア形成で意識したいポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
現状維持の選択は正しい?医師のキャリア選択は広い
近年、働き方改革やIT技術の発達によって、様々なキャリアが増えてきています。医師も例外ではなく、どのようなキャリアプランを立てるかによって将来設計に大きく影響します。
医師のキャリアパスは、勤務医としてそのままキャリアを積むのか、開業をして地域医療に貢献するのかだけでなく、企業に転職したり、医療系ベンチャーを立ち上げたりなど千差万別です。
ここからは医師のキャリアとして以下の4つにわけて解説します。
- 勤務医としてのキャリア
- 開業・転科をするキャリア
- 企業へ転職するキャリア
- 異業種や医療系ベンチャーの立ち上げなどのキャリア
勤務医としてのキャリア
勤務医としてキャリアを積んでいく場合、専門医取得後あたりからキャリアビジョンを具体的に考える方が多いのではないでしょうか。勤務医として積むキャリアには以下のようなものが考えられます。
- 一般病院で勤務を続け医局長や院長などの役職を目指す
- 大学病院で勤務し、臨床や専門医の育成などの教育に携わる
- 専門病院で勤務し専門性を高める
勤務医を続ける場合、開業などと比べると時間的自由は制限されるかもしれません。しかし、安定した収入が得られる点や、ライフステージに合わせて働き方を調整しやすいなどのメリットがあると言えます。
開業・転科をするキャリア
医師としての専門性を活かしながら、開業や転科などの新たなキャリアを築く選択もあります。ただし、それぞれ以下のような課題に注意する必要があるでしょう。
開業医への転向
- 医療機関の飽和により、立地選定が難しい場合がある
- 初期投資や人件費の高騰により、経営の見通しが立てにくい場合がある
- 在宅医療専門にすると24時間対応が求められる場合がある
- 訪問看護ステーションとの連携体制の構築に時間がかかる可能性がある
- オンライン診療を主体にすると採算の確保が難しい可能性がある
診療科の転科
- 新しい診療科での研修期間が長期化する懸念がある
- 年齢制限や受け入れ先の制約により、希望がかなわない場合がある
- 給与面で不利益が生じるリスクがある
このように、開業や転科は社会情勢や制度の影響を受けやすい点に懸念があります。場合によっては、理想としていた医療の形を実現することが難しい状況に置かれるかもしれません。
特に開業では経営者としての視点も必要になる他、スタッフの採用や財務管理まで行う必要があるため、今までとは全く異なるスキルが求められることも踏まえ慎重に検討しましょう。
とは言え、開業する医師は年々増加傾向にあります。厚生労働省が令和4年3月に発表した「在宅医療の現況について」によると、在宅医療専門クリニックなどの在宅療養支援診療所は年々増加しており、開業する医師が増えていると推測されます。令和6年12月に行われた「規制改革推進会議 第4回健康・医療・介護ワーキング・グループ」で発表された資料によれば、従来の開業スタイルにとらわれず、オンライン診療を組み合わせたハイブリッド型の診療所を展開する医師も出てきています。
企業へ転職するキャリア
医師の知識・経験は、特に製薬会社や医療機器メーカーで高く評価されています。現場の医師の意見が製品開発に十分反映されていないケースもあるため、医師の企業参画によって、より実践的な製品・サービス開発につながることが期待されています。
例えば臨床試験の計画立案で現場の実態に即した提案をしたり、医療機器の使い勝手に関する具体的な改善点を指摘したりと、独自の視点を活かすことができます。
また、規制当局の審査基準厳格化や開発コストの高騰により、企業単独での医療イノベーションが難しくなっています。こうした状況下で、医師の専門知識は医療系ベンチャー企業の設立や、既存企業へのアドバイザリー役員としての参画を通じて、効率的な製品開発や医療現場のニーズに真に応える価値創造に貢献するでしょう。さらに、医療政策や診療報酬制度への深い理解を活かし、企業戦略の立案にも貢献できます。
異業種や医療系ベンチャーの立ち上げなどの別業界で築くキャリア
現代社会では医療情報があふれるようになり、人々の健康への関心も高まっています。そのため、医師が従来の診療以外の活動もしやすくなってきました。特に、インターネットやSNSの普及によって、誤った医療情報が拡散しやすくなっているため、医師による正確な情報発信がより求められています。
医師の知識や経験は、医療界以外でも大きな価値を発揮できます。情報発信やコンサルティングなど、従来の医師像にとらわれない新しいキャリアもあります。
また、デジタルヘルスケア市場の拡大に伴い、健康管理アプリやオンライン医療相談サービスなど、新たなビジネス領域も生まれてきています。医学的な監修や専門的な知識が役立つことから、医療系ベンチャーを立ち上げる医師も増えています。
さらに、医学教育コンテンツの制作や健康関連書籍の執筆など、教育分野での活動機会も広がりつつあるようです。従来の診療行為とは異なる形で、より多くの人々の健康増進に貢献できる可能性があります。
年齢を重ねると選択肢が減っていく!なるべく早くキャリアプランを立てる必要性
他業種と同様、医師も歳を重ねる度にキャリアの選択肢は減っていきます。そのため、若いうちからキャリアプランを決めておくことが重要です。
ではどのようなキャリアが難しくなるのか、以下に分けて詳しく見ていきましょう。
- 20代~30代のうちに考えておきたい選択肢
- 40代~50代のうちに考えておきたい選択肢
- 50代以降のキャリアの選択肢
20代~30代のうちに考えておきたい選択肢
医師のキャリアは、若いうちから計画的に準備しておくと良いでしょう。特定の分野では、20代から30代の意志決定が重要になる可能性があります。若い頃は体力も知識の吸収力も高く、キャリアの選択肢が最も広がる時期だからこそ、慎重に進路を見極めることが大切です。特に以下のキャリアに挑戦するのなら、若いうちの行動が重要な要素となります。
- 研究者:博士号の取得や論文実績の積み重ねに時間がかかる
- 外科医:手術手技の習得には相当な時間と労力がかかる
- IVR専門医:高度な画像診断技術と手技の両方が求められる
- 海外医師免許の取得:若手医師向けのプログラムを利用できる
外科医やIVR専門医といった高度な技術を要する診療科への道を選ぶなら、この時期に基礎を築いておくと楽になるかもしれません。技術の習得には時間がかかるのはもちろん、研修のプログラムが若手向けだと参加するのにもハードルが生じてしまう点も考慮しましょう。
ただしこれらは一般的な傾向であり、個々の医師の置かれた状況や志向性によって、最適なキャリアパスは異なってくるのも事実です。医局の方針や病院の体制、家庭の事情なども考慮に入れながら、慎重に検討を進めていきましょう。
40代~50代のうちに考えておきたい選択肢
医師として豊富な臨床経験を積んだ40代~50代は、管理職や経営者としての新たなキャリアを検討する時期と言えるでしょう。特に、病院の管理職や医療関連企業での活動などはこの年代でなければ挑戦が難しい側面があります。
このようなキャリアを築くには医療現場での経験だけでなく、組織運営のノウハウや人脈形成が必要とされるケースが増えてくるためです。
例えば、大学病院の診療科部長や地域基幹病院の院長といったポジションでは、医局運営や若手育成の経験が求められるケースが多く見られます。一方で、そのような経験を積む機会は意図的に作っていかなければ、なかなか得られなくなっていきます。
「将来的には管理職に就きたい」「経営に挑戦したい」という方は、経営や財務の基礎知識、組織マネジメントのスキルを日常診療の傍らで意識的に学んでいくことをおすすめします。
50代以降のキャリアの選択肢
50代以降は、医師としての専門性を活かしたキャリアを選択できる傾向が高くなります。特に、医療政策のアドバイザーや若手医師の指導者として、経験に基づく知見が重宝される可能性があります。例えば、以下のような働き方です。
- 医療コンサルタント:医療機関の質改善や経営効率化に関する助言をする
- 医療政策顧問:厚労省や自治体で、地域医療の課題解決に関わる
- 非常勤医師:複数の医療機関で、柔軟な勤務形態を選択できる
- 臨床教授:医学部や研修病院での教育に携われる
- 医療系執筆活動:専門誌への寄稿や教科書の執筆依頼が来る
これらのキャリアは長年培った経験値が必要なため、50代以降の医師が重宝される傾向にあります。長年の診療経験に基づく判断力や医療制度の変遷を知る視点など、50代ならではの強みとして評価されるケースが多くなると考えられます。
50代以降は豊富な経験を活かしながら、より柔軟な働き方で医療界に貢献できる可能性のある年代と言えるでしょう。
【年代別】医師のキャリアプランの立て方
キャリアプランは、年代によって立て方が異なります。ここからは、20代~50代までそれぞれの年代にわけて、どのようなキャリアプランがあるのか具体的に解説します。
- 20代:研修医期間は専門医資格の取得を目指す
- 30代:専門医としての経験を積む
- 40代:待遇面を重視してキャリアチェンジをする
- 50代:最後に活躍する場所を見定める
20代:研修医期間は専門医資格の取得を目指す
医師としてのキャリアの方向性は、多くの場合、初期研修修了後の専門医選択に大きく影響を受けるとされています。特に専門医資格の取得は、将来の診療科の選択肢を広げる重要な要素となるでしょう。例えば、以下のような形です。
- 内科専門医からのキャリアの選択肢:循環器、消化器、呼吸器など
- 外科専門医からのキャリアの選択肢:消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科など
- その他の基本領域のキャリアの選択肢:小児科、産婦人科、精神科など
このような選択に際して注意したいのが、以下のような要因になります。
- 医局の入局システムや専門医プログラムの特徴
- 研修施設の症例数や指導体制
- 当直回数や時間外労働の実態
- 専攻医の待遇や福利厚生
- 地域による診療科の需給バランス
自分でコントロールするのが難しいものも多いため、適宜軌道修正をしながら専門医を目指す必要が出てくるかもしれません。
30代:専門医として経験を積む
30代は専門医としての経験を蓄積しながら、将来のキャリアの方向性を見極める時期に差し掛かる頃合いと言われています。臨床経験の質的な向上とキャリアの転換点という2つの観点から、重要な年代となる可能性が高いと考えられます。
特に周囲の期待や環境の変化により、以下のような機会が増えてくるようです。
- より難度の高い手術や処置における執刀医としての機会
- 重症患者の主治医として総合的判断
- 若手医師への指導的立場での関わり
- 医療チームのリーダーとしての役割
- 学会発表や論文執筆の機会
また、30代後半にもなると、以下のようなキャリアの選択肢が広がってくる可能性もあります。
- 大学病院から市中病院への転職
- 専門分野の更なる絞り込み
- 医療機器メーカーや製薬会社への転身
- 医療行政や研究機関での活動
- 開業に向けた準備
このように、30代は専門医としての経験を積み重ねながら、40代以降のキャリアの土台を築いていく時期ともいえます。具体的なキャリアパスは個々の状況や環境によって異なってくるため、慎重に検討を重ねていく必要があるでしょう。
結婚や出産といったライフイベントにも注目!
30代という時期は、結婚や出産、育児といったライフイベントとも重なる可能性が高い年代です。以下のような点も考慮に入れた方が良いケースがあります。
- 当直免除などの制度の有無
- 育児支援体制の充実度
- 転居を伴う異動の可能性
- 収入面での安定性
これらの項目はワーク・ライフ・バランスにも大きく関わってくる部分です。将来的なプランや家族の意向も加味しながら慎重に検討を重ねていく必要があるでしょう。
40代:待遇面を重視してキャリアチェンジをする
40代は豊富な臨床経験を活かしながら、より良い待遇や働き方を実現できる可能性がある年代です。専門性や実績が評価されやすい年代ですので、管理職などへの昇進機会やより高待遇の医療機関からのオファーがあることも考えられます。中には、開業医やベンチャー企業設立といった新たなキャリアパスが現実的な選択肢として浮上してくる先生もいるでしょう。
ただし、家庭での教育費負担の増大やローンなどの金銭的責任といった要因も、無視できないものの1つとなってきます。今後10年、20年を見据えた判断が求められると考えておいた方が良いでしょう。
50代:ベテラン医師ならではの活躍場所を見定める
50代は豊富な経験を活かしながら、自分らしい診療スタイルを確立できる機会が訪れる可能性のある年代です。若手には難しい総合的な判断力や、長年の経験に基づく患者さまとの信頼関係構築など、ベテラン医師ならではの強みを活かせる立場が増えてくるかもしれません。
人によっては、以下のようなキャリアの選択肢が現実的になってくるでしょう。
教育者としての道
- 医学部での臨床教授
- 研修医の指導医
- 若手医師の育成担当
専門家としての活動
- 専門外来での診療
- 医療機関のアドバイザー
- 学会での指導的役割
地域医療での貢献
- かかりつけ医としての活動
- 在宅医療の提供
- 地域医療構想への参画
高齢者医療での活躍
- 特別養護老人ホームでの勤務
- 介護医療院での診療
- 緩和ケア病棟での活動
ただし、キャリア選択時には体力面の負担や当直・手術などの負担調整、引退までの期間設計といった要因も絡んできます。豊富な経験を活かしながら、より持続可能な形で医療に携わる方向性を見出していく時期と言えるでしょう。
今を俯瞰して捉えよう!キャリアプランは現状をまず認識することが大切
キャリアプランを立てる際は、現状の認識が大切な要素の1つです。キャリア選択に後悔しないためにも、以下の3つを意識してみましょう。
- 自分の社会的な年収や待遇を知る
- 自分の希望する条件に至るための道筋を明確に把握する
- 【注意】タイミングを見逃さないために重要なポイント
自分の社会的な年収や待遇を知る
医師の年収や待遇は、勤務先や経験年数、専門性によって大きく異なると言われています。そんな中で、自身の市場価値を正確に把握できているかは、将来のキャリアプランを立てる上で重要なポイントの1つです。
特に医師の年収相場は、勤務形態や地域性によって大きな開きがあります。例えば、都市部の大学病院勤務医と地方の市中病院勤務医を比較すると、基本給に加えて当直手当や研究費など、待遇全般に大きな違いが生じるケースが多いです。
医師の年収は年代と性別によっても以下のように異なります。
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20歳~24歳 | 614.8万円 | 484.9万円 |
25歳~29歳 | 697.1万円 | 581.5万円 |
30歳~34歳 | 1,007.3万円 | 781.7万円 |
35歳~39歳 | 1,297.4万円 | 1,136.7万円 |
40歳~44歳 | 1,521.1万円 | 1,307.6万円 |
45歳~49歳 | 1738.8万円 | 1,342万円 |
50歳~54歳 | 1,927.1万円 | 1,829.6万円 |
55歳~59歳 | 1,760.2万円 | 1,401万円 |
ドクタービジョン公式ホームページ「《地域別》医師平均年収解説」
https://www.doctor-vision.com/wp/AAI2023
上記のデータを見ると、10年程度の内科医の場合、年収1,200万円あたりが平均値です。これがさらに専門医資格の取得や、特定の専門分野での実績によって待遇アップにつながる可能性があります。
まずは年代別の平均的な年収を把握し、自分の年収と照らし合わせてどれだけの市場価値があるのかを把握しておくと良いでしょう。
自分の希望する条件に至るための道筋を明確に把握する
医師のキャリアプランを考える上で、自分の希望する条件に至るための道筋を知っておくことも重要な要素の1つです。現在地点からの具体的なステップアップを理解していれば、希望のキャリアを叶えやすくなると言われています。目標が漠然としている場合は、以下の手順で自己分析を深めてみると、目標を定めやすいかもしれません。
- 希望を明確化する:専門領域や勤務形態、収入、ワーク・ライフ・バランスなどの目標を書き出す
- 未来の自分をイメージする:5年後、10年後のイメージを具体化する
- 現状を分析する:現在の専門性、経験年数、資格、人脈など
- 分析結果から目標との差異を特定する
- 情報を収集する:専門医や認定の要件、目標とするポジションの募集要項、ロールモデルとなる医師のキャリアパスの調査
- アクションプランを作成する:必要な資格取得のスケジュール作成、経験を積むべき分野や施設の抜粋、人脈形成のイベントに参加など
大切なのは、目標から逆算して必要なアクションプランを立てることです。医師の転職市場では、専門性や経験はもちろん、専門医資格の有無など様々な要素で待遇が変わる場合があります。需要が高く人手不足が深刻な診療科ほど、好条件での転職ができる可能性が高くなります。
また、病院の規模や地域による待遇の違いも無視できない要素の1つです。都市部の大規模病院と地方の中小病院では、年収に大きな差があるケースが見られます。
医局に所属している場合と民間病院で働く場合でも、待遇面で大きな違いが生じるでしょう。民間病院では年収が高い傾向にある一方、医局では将来的な地位や安定性が保証される傾向にあるようです。
キャリアプランに迷ったら転職コンサルタントや転職活動先の担当に話を聞いてみる
転職コンサルタントや医療機関の採用担当者との面談を通じて、自身の市場価値を把握できる可能性があります。話の中で、経験年数や保有資格に応じた待遇の相場観、地域による給与水準の違いなど、具体的な情報を得られる機会になるかもしれません。
医師専門の転職コンサルタントの場合、豊富な転職支援実績を基にした実践的なアドバイスが期待できます。職務経歴書の作成支援や面接対策のポイント、さらには採用側の視点に立った助言なども期待できるかもしれません。
特に、大学病院や市中病院、クリニックなど施設形態による働き方の違いや、将来的なキャリアパスについても、具体的な事例を交えた説明が受けられる可能性があります。
非公開求人を含む幅広い求人情報の紹介も、転職コンサルタントを活用するメリットの1つです。診療科や地域ごとの需要動向、医療機関の特色や職場環境など、一般的な求人情報では得られない詳細な情報を入手できるでしょう。より現実的なキャリアプランを検討する上で、有用な判断材料になると言えます。
【注意】タイミングを見逃さないために重要なポイント
医師の転職市場では、年齢や経験によって求人条件が大きく変動する可能性があるとされています。好条件での転職機会を逃さないためには、定期的な市場確認を怠らないことが重要です。特に専門医取得後や一定の経験を積んだタイミングが、市場価値が高まる時期とされているようです。
医療制度の改革や働き方改革の影響により、医師の需給バランスも変化していく可能性があるため、定期的な情報収集はしておいた方が良いでしょう。
医師がキャリアプランを立てる際に重要なポイント
医師がキャリアプランを立てる際、意識したいポイントがあります。特に以下の5つはキャリアに大きな影響を与えるものなので、必ず決めておきましょう。
- 開業と転職のどちらを選ぶのか
- 家族のイベントをどう捉えるのか
- 医師として何歳まで働くのか
- 生活資金をどうするのか
- 自分の軸を持てているか
開業と転職のどちらを選ぶのか
医師のキャリアパスにおいて、開業と転職は大きな分岐点になります。当然のことながら、開業と転職ではそれぞれ必要な要素や検討すべきポイントが異なります。以下は開業と転職、それぞれの重要なポイントをまとめたものです。
開業をする場合に必要な要素
- 開業の準備:資金調達、立地調査、人材確保、医療経営や労務管理などの会計知識
- 開業医としての心構え:経営者としての視点、医療行為以外の意思決定、リスク管理、地域医療への貢献意識
転職をする場合に重要な検討項目
- 専門性を活かせるのか:自分の専門分野をさらに伸ばせる環境か
- 満足のいく勤務条件か:給与体系や当直回数、休暇取得状況
- 病院の将来性:経営状況や医療機器の充実度、研修制度の整備状況
- 地域性:通いやすい場所か、家族の生活環境への影響の度合い
それぞれ共通する要素はあるものの、求められる部分の多くは異なります。両者をあまり魅力的に感じない場合は、開業や転職に限らず、現在の職場で継続的にキャリアを積むことも選択肢の1つとして考えられるかもしれません。
家族のイベントをどう捉えるのか
家族のイベントや生活と仕事のバランスをどう取るかも重要なポイントの1つです。特に男性女性問わず、以下のポイントは事前に考えておく必要があります。
- 妊娠・出産:産休・育休の取得時期の計画、職場への妊娠報告のタイミング、代替医師の確保と引き継ぎ、復職後の勤務体系の検討
- 子育て:保育施設の確保と緊急時の対応、当直・オンコール体制の調整、子供の行事参加、急な子供の病気への対応
- 介護:介護が必要な時間の予測と対応、介護施設・サービスの調査、兄弟姉妹との介護負担の調整
家族との時間を重視する場合、診療科の選択も重要な要素です。皮膚科や麻酔科、眼科などシフト制の診療科や、健診センターのような定時勤務が基本の職場を選択することで、より計画的な時間管理が実現する可能性があります。
医師として何歳まで働くのか
医師として働く期間を決めることは、キャリアプランの基盤になります。勤務形態によって定年制度が異なるため、長期的なキャリア設計に影響を与える可能性があるでしょう。医師の場合、2025年現在、以下のように定められています。
- 公務員医師・公的病院勤務医:65歳(矯正施設などで医療業務に従事する場合は70歳)
- 私立病院勤務医:60歳、65歳、70歳と様々。定年制がない場合もある
- 開業医:定年はなく、自分自身で決める。
このように勤務する場所によって大きく異なります。何歳まで働くかを予め決めておくと、転職や開業をしてもキャリアの目処をある程度立てやすくなるかもしれません。
特に近年は、少子高齢化の影響により、定年に関する考え方が変化してきています。60歳以降も現役医師として働き続けるのか、再雇用・継続雇用制度を活用するのか、もしくは開業医として独自の道を歩むのかなど、様々な選択肢が存在しています。
このような状況を踏まえ、長期的な人生設計の一環として、医師としての就労期間を検討することが推奨されています。特に若手医師の場合、定年制度の変更可能性も考慮に入れた、より柔軟なキャリアプランの策定が重要になってくるかもしれません。
高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~ | 厚生労働省
定年後を考える 定年がもたらすもの|人事院
地方公務員法の一部を改正する法律について(地方公務員の定年引上げ関係)|総務省
生活資金をどうするのか
医師のキャリアプランにおいて、生活資金の計画が重要な検討要素になる可能性があるとされています。特に開業や非常勤・フリーランスへの転身を検討する場合、資金面での準備が必要になってくるかもしれません。以下を見てみましょう。
- 開業:内装工事や医療機器など8,000万円程度かかる可能性あり
- 非常勤・フリーランス:収入の不安定性への対策、確定申告、税金の管理
2023年時の情報では、開業の場合物件確保から内装工事、医療機器の導入まで、総額で5,000万円から8,000万円程度の資金が必要なケースが一般的です。融資を検討する場合、総費用の2割程度の自己資金があることで、より有利な条件での借り入れが可能になるかもしれません。土地や建物の購入を考える場合は、さらに多額の資金が必要になる可能性も考えられます。
非常勤やフリーランスとして働く場合、収入の不安定さへの対策が重要と考えられます。あらかじめ毎月必要な生活費を把握しておき、今後の収入推移の見込みからどの程度の期間であれば損失に耐えられるかなどのシミュレーションをしておくと判断しやすいかもしれません。
また、確定申告や税金の管理など、新たな知識の習得も必要になります。iDeCoやふるさと納税といった節税対策の知識を身につけることで、より効率的な資金管理が可能になる可能性があります。生活資金の計画は生活の質に直結する要素であることから、慎重に検討しましょう。
自分の軸を持てているか
医師のキャリアプランにおいて、医療に対する信念や価値観といった軸の存在が重要になる可能性があります。患者さまへの価値提供や医療実践に対する考え方など、本質的な部分での方向性を持つことが推奨されているようです。
明確な軸を持たないままキャリアを選択する場合、表面的な魅力や一時的な興味だけで判断してしまうリスクがあります。例えば、開業医の収入や、フリーランスとして柔軟な働き方といった外形的な部分のみに注目してしまう懸念です。安易な気持ちで判断すると、理想と現実のギャップに直面するかもしれません。
軸を見出すためには、医師を志した原点に立ち返ることが有効的な方法の1つです。これまでの診療経験の中で、特にやりがいを感じた場面や充実感を得られた瞬間を振り返る中で、自身が大切にしたい医療の形が見えてくることもあるでしょう。
自分の軸を見つけられていれば、専門分野の選択や開業の判断など、様々な意思決定の際の基準として機能するかもしれません。
医師としてのキャリアは長期に及ぶ可能性が高く、その過程で様々な選択肢に直面するでしょう。明確な軸を持っていれば、一貫性のあるキャリアを形成できる可能性があります。10年後、20年後を見据えた際に、納得のいく選択ができるよう軸を持っておくことも考えてみましょう。
思い描くキャリアプランを実現するには転職活動が必要かも?
転職という選択肢は医師のキャリアにおける重要な転換点になる可能性があります。現在の環境では実現が難しい目標の達成や、より高度な医療技術の習得、ワーク・ライフ・バランスの改善など、様々なメリットがあると言われています。
一方で、転職のリスクとして、キャリアの一時的な中断や収入の変動、新しい環境への適応が必要なことには注意した方が良いでしょう。これまで構築してきた人間関係や診療体制、患者さまとの信頼関係を新たに築き直す必要性がある点は、人によっては大きな負担となることがあるようです。
しかし転職することで、先進的な医療機器や治療法への接触機会、専門医資格取得のための症例数確保、労働条件の改善など、現在の環境では得られない価値を獲得できる可能性もあります。
そのため、転職を検討する際は目的を明確にすることが重要とされています。漠然とした不満や一時的な感情による転職は、キャリアの停滞を招く可能性があるためです。理想とする医療の形や長期的なキャリアビジョンを持った上で、それを実現するためのステップとして転職を位置づけると良いでしょう。
リスクを伴う選択ではありますが、理想のキャリア実現のための有効な選択肢の1つとして計画的なアプローチを心がけることをおすすめします。
転職を考えているのであれば、ドクタービジョンに登録してみませんか?
転職にはリスクが伴いますが、「今の環境に疑問を感じている」「今までとは違う分野に進みたい」などの気持ちをお持ちであれば、思い切って行動してみるのも1つです。
「転職したい気持ちがあっても、時間が作れない」という方は、転職支援サービスの利用がおすすめです。中でも転職コンサルタントであるドクタービジョンは、医療業界に精通しています。東証プライム上場「日本調剤グループ」の医師転職サービスであることから、全国の医療機関と信頼関係が築かれており求人票だけでは分からない情報まで提供しています。
また、コンサルタントによる丁寧なサポート体制と、豊富な求人情報を強みとし、非公開求人を含む幅広い案件から希望条件に合った転職先を見つけられます。実際、利用した多くの医師が希望のキャリアを実現しているので、キャリアでお悩みの先生は、ぜひ1度お気軽にご相談ください。
キャリアプランは考えるよりも行動が大切。まずは情報収集から始めよう
医師のキャリアプランにおいて、年代と性別は重要な要素の1つです。それぞれ異なるキャリアパスの選択肢があり、近年では勤務医や開業医以外にも多様な働き方が生まれています。
医療業界の働き方は日々変化しており、人によって最適な方法が異なります。まずは行動を起こし、具体的な情報を集めることで、より実現可能性の高いキャリアプランを描けるかもしれません。自身の理想とする医師像に向けて、まずは積極的な情報収集から始めると良いでしょう。
時間がなかなか取れない場合は、転職支援サービスの利用がお勧めです。転職コンサルタントであるドクタービジョンでは、医療業界に精通した経験豊富なコンサルタントが一緒にキャリアプランを考えさせていただきます。北海道から九州まで実際に足を運び、現場の雰囲気や地域に根ざした情報を提供しているため、キャリア形成における「こんなはずではなかった」を防ぐようサポートします。履歴書や職務経歴書の作成から内定後のフォローまで多岐にわたってサポートしているので、キャリアプランでお悩みの先生は、お気軽にご相談ください。