放射線科医の平均年収は?仕事内容や働き方についても解説

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公開日:2021.11.11

放射線科医の平均年収は?仕事内容や働き方についても解説

放射線科医の平均年収は?仕事内容や働き方についても解説

本記事では、他診療科の業務を影で支える放射線科医の平均年収と主な仕事内容、放射線科医が感じる仕事のやりがい、放射線科医の専門医資格、AI導入の影響についてご紹介します。

診療の要ともなる検査と治療、この双方を専門に行うのが放射線科です。放射線科医は外来や入院などで特定の患者さまを受け持たず、他診療科の医師と共同で診療にあたります。

放射線科医の平均年収

放射線科医の平均年収

放射線科医の平均年収は1,550万円です。全診療科における医師の平均年収1,596万円と近い結果となりました(※1)。とくに放射線科医の平均年収が高いのは、京都府・愛媛県・高知県・徳島県が同額で1,950万円。奈良県の1,900万円が続きます

大阪府の1,842万円、三重県の1,800万円など、平均年収を大きく上回る地域も多くあります。人材が集まりやすい東京都は1,535万円で、放射線科医の平均年収と近い額になりました。

※1.2020年10月時点のドクタービジョン掲載求人をもとに平均値を算出しています

厚生労働省『平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』によると、2018年末時点で放射線科に所属する医師は6,813人。医療施設に従事する医師は311,963人なので、医師全体数の2.2%を占める計算です。

男女構成比は、医療施設に従事する医師全体で見ると、男性医師は2.1%、女性医師は2.4%。病院に勤務する放射線科医全体の男女比は、男性医師は76.0%、女性医師は24.0%となっており、女性医師の割合が比較的高い診療科だとわかります。

また、放射線科医の平均年齢は46.3歳で、医療施設に従事する医師全体の平均年齢49.9歳とは近しい数字となりました。

診療科別の平均年収

放射線科と近い診療科に、放射線診断科、腫瘍放射線科、放射線治療科があります。各診療科の平均年収ですが、放射線診断科は1,300万円、腫瘍放射線科は1,150万円、放射線治療科は1,075万円で、放射線科と医師全体の平均年収から大幅に下がる結果となりました。各診療科の特徴については、この後にご紹介します。

放射線科医の仕事内容・働き方

放射線科医の仕事内容・働き方

放射線科の業務内容は、各種画像診断(画像診断部門)と放射線治療(放射線治療部門)に大別できます。いずれも放射線科単独で実施することはなく、内科・外科など他診療科からの依頼を受けて行われる業務です。

各種画像診断(画像診断部門)は、レントゲン撮影、CT、MRIなどよく知られるもの以外に、認知症やがんの検査で使用されるPET-CTを含めた核医学検査、IVR(インターベンショナルラジオロジー)も含まれます。IVRは画像下治療のことで、MRIやCT、血管造影装置を使い、体内の様子をリアルタイムで描出しながら病変部位を探します。そしてその該当の箇所までカテーテルを通して、病変部位の切除・焼灼・開通などを試みるのです。

放射線治療(放射線治療部門)は、多くががんなどの重い病気を対象とした業務です。放射線はピンポイントで照射可能な特性を活かして、臓器温存を視野に入れた治療や臓器別のがんに応じた化学療法、進行がんに対するIVRを併用した治療などを行います。外科手術と比較して身体をほとんど切らないことから、低侵襲性の(手術や検査による痛み、発熱、出血などをおさえた)がん治療として脚光を集めている分野でもあります。

放射線科医を支える仲間として、診療放射線技師と放射線科の看護師の存在は欠かせません。患者さまがスムーズに検査や治療を受けられるよう、、診療で使用する装置の整備や管理も含め、安全に配慮しながら業務に従事します。

放射線診断科・腫瘍放射線科・放射線治療科との違い

先述したとおり、放射線科が検査と治療の双方にまたがる診療科です。これらを細分化して個々の業務に特化したのが、前述の放射線診断科、腫瘍放射線科、放射線治療科になります。

放射線診断科は、外来もしくは病棟から依頼された画像診断を実施します。担当医からのオーダーをもとに、患者さまの病状に配慮しながら検査し、得られた画像の読影(病変や異常所見をレポートにまとめる作業)を行い、担当医に返送します。また、循環器などにカテーテルを通す血管系IVR、経皮的針生検などの非血管系IVRなども担当しています。

腫瘍放射線科は、原発性・転移性問わないがん全般(一部良性腫瘍を含む)を対象にした放射線治療を実施しています。手術や抗がん剤治療と併用して実施されることも多くあり、根治を目指す積極的治療から疼痛コントロールのための緩和的治療まで広く対応できるのが特徴です。

放射線治療科も、腫瘍放射線科と同様にがん治療を目的としています。放射線の照射方法は様々で、X線や電子線による外部照射や放射線を出す物質を用いる小線源治療などです。治療の範囲も、全身照射から局所を狙って行う定位放射線照射まで可能。患者さまのがんと全身状態を考慮した上で照射方法を選択、決定します。

放射線科医のやりがいは?

放射線科医のやりがいは?

担当した患者さまの回復を間近で見られるのは、医師という仕事の醍醐味でしょう。放射線科医も例外ではなく、実施した画像検査や放射線治療が患者さまを救ったと感じた時に、やりがいを感じることが多いようです。

放射線科医は担当医と共同で検査・治療を実施するので、タッグを組む診療科や担当医の要望に対して柔軟に対応することが必要です。主治医となる医師の専門外領域での診断から、救急医療現場での画像診断と緊急カテーテル治療まで、高度な内容が求められます。そのぶん、各現場で求められる働きを実現できた時の手応えはひとしおです。

放射線科には3つの専門医資格がある

放射線科には3つの専門医資格がある

放射線科に関する日本専門医機構認定の専門資格には、「放射線科専門医」、「放射線診断専門医」、「放射線治療専門医」の3つがあります。

放射線科医としてのキャリア形成を考えた場合、専門医資格は一定以上の知識と技能を有することの証明になるため、取得が一つの通過点となるでしょう。同時に、研修施設認定を目指す医療機関にとって有資格者の在籍は、教育体制を充実させて若手医師を集めるための材料にもなります。そのため、資格手当として毎月の給与への上乗せが見込めるだけでなく、将来の待遇や勤務条件を有利なものにする交渉材料になるでしょう。

放射線科専門医

放射線科専門医は、放射線診断専門医や放射線治療専門医の充分な教育のため、画像診断と放射線治療の双方に関する放射線科全般の知識と経験を一定レベル以上持っていることが求められます。

放射線診断専門医

放射線診断専門医は、放射線科専門医の資格を取得した上で、放射線診断の領域について高水準の専門的な知識と技術を持つ放射線科医(放射線診断専門医)を目指すための資格です。

放射線治療専門医

悪性腫瘍ならびに一部良性腫瘍を対象に、自らが有する放射線治療の専門知識と経験を最大限に活用して、適切な放射線治療を担うことが求められます。さらに、集学的治療や放射線の安全管理に関する幅広い知識を使った「チームでの医療提供」も目指すところです。

▼参考資料はコチラ
公益社団法人 日本医学放射線学会
専門医制度に関するお知らせ
放射線診断専門医制度規程

AI(人工知能)の普及で放射線科の仕事はどうなる?

AI(人工知能)の普及で放射線科の仕事はどうなる?

放射線科は「AIとの親和性が高い診療科」と言われています。CTやMRIなどの最新技術を多用するためで、将来的には臨床現場へのAI導入に際して、有用性と妥当性を判断する役割が期待されている診療科とも言えるでしょう。

AIが普及すると、放射線科の業務は人からAIに取って代わるのではないかという意見もあります。比較的単純な内容であればAIが担うことも十分考えられますが、複雑な症例の検証、患者さま本位の検査の考案と実施については、完全にAI任せにはならないだろうというのが風潮のようです。新しい撮影方法や画像評価方法の確立に向けた試行錯誤なども同様となっています。

業務内容や動向を理解した上でキャリアプランの検討を

放射線科は、検査と治療の双方に関与する特殊な診療科です。放射線照射技術によるがん治療の効果は一般的にも認められてきているため、放射線治療が今後患者から選択される可能性は高まっていくでしょう。

放射線科医として働きたい方、特定の専門医資格を獲得しようと検討している方は、キャリアプランを改めて検討した上で就職先を選ぶようにしましょう。

ドクタービジョン編集部

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