医師は生涯現役で働き続けることもできる職業です。一つの医療機関で長く働き続けられるなら最上ですが、人生の節目でどうしてもキャリアを変えなければいけないタイミングというのも出てきます。
40代の医師は、医師としての経験が10年以上あるベテランですが、だからこそキャリアに関してはしっかりと考えなければいけません。40代医師のキャリアプランは大きく下記のように分類することができます。
- 1. 医局勤務
- 2. 民間病院やクリニックでの勤務
- 3. 開業
- 4. セカンドキャリアや複線化(産業医, 製薬やヘルスケア企業, 訪問診療等)
独自性の高いキャリアを歩まれる方もいますが、まずは基本となる上記のパターンを押さえておくと参考になるでしょう。このコラムでは40代医師に向けたキャリアの描き方や、さまざまな働き方のメリットや注意点などを見ていきます。

執筆者:Dr.SoS
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現状把握と優先事項の確認
キャリアプランを考えるにあたって、まず大切なのは自身の現状を把握することです。
ご自身のこれまでのキャリアを書き出し、所属学会や資格、学会発表内容などを整理することでどのような分野に強みを持つかがわかるでしょう。
ここで大切なのは人と比べすぎないということです。「自分よりも有名な雑誌に論文を発表している先生もいるから、このくらいの実績では強みにならない」などと考え始めるときりがありませんから、まずは機械的に書き出すことがポイントです。自身だけで客観視が難しいようであれば、信頼できる家族や友人知人のほか、キャリア支援を行う転職コンサルタントなどに頼るのも良いでしょう。
そして仕事のみでなく、自身のライフイベントや人生で優先したい事項についても洗い出しておきましょう。優先したい事項というのはたとえば、「現在は大学の関係で都心部にいるが将来は実家のある地方で働きたい」「子どもとの時間を増やせるようにしたい」「妻が働けないのでなるべく年収を上げたい」などです。
現状や優先事項を確認することで、キャリアプランも立てやすくなります。
医局に所属し続けるか決める大事な時期
現在では医局に所属する医師は以前より少なくなっていますが、過去ほどではないといえ、現在でも医局の影響力は大きいものです。とくに大学で教授職として教鞭をとるためには、医局に所属しつづけることが必要になります。
医局に所属していると大学病院やその関連病院での勤務になるため、専門的な症例の経験もしやすくなります。また医局に所属していた医師は、求人元である民間病院から受けが良い傾向があります。医局で十数年働いていたならば、専門医などの資格の取得や症例の経験も十分であるためです。40歳前後で医局から民間病院に転職する場合、何らかのポジションに就ける可能性もあります。
しかし医局はメリットばかりというわけでもありません。医局人事で勤務する病院は、一般の民間病院よりも給与が低い傾向にあります。大学病院やその関連病院は社会インフラの一部として採算性の低い診療科も開いておく必要があるため、利益の追求という面では民間病院よりも弱いためです。大学病院と民間病院では、同じ年齢や同じスキルでも収入に大きな開きが出ることがあります。
40歳前後というのは、医局で出世できるかわかるようになってくる時期です。医局での出世がそこまで期待できないとなったら、退局を選択する医師も当然出てきます。出世の有無以外にも、独特な人間関係や派閥があるため、働きづらさに限界を感じて退局する医師もいることでしょう。
40歳というのは、このように医局に所属し続けるかどうかを決める重要なタイミングになります。
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民間病院やクリニックで勤務する場合の成功ポイント
40歳は人にもよりますが、人生三大資金と言われる住宅・教育・老後資金について考えなければいけない年齢です。そのため、「年収」がとても大切になってきます。キャリアパスやライフプランを考えた結果、自身の望む生活を送るために今以上を求める場合、年収アップを目的に転職を検討することもあるでしょう。
民間病院やクリニックの年収は、大学病院など医局関連の病院と比較して高い傾向にありますが、診療科や地域、資格、勤続年数などにより大きく左右されることもある点に注意しましょう。また、民間病院やクリニックで勤務する場合は、なるべく一つの医療機関に勤め続けることが重要となってきます。その理由の一つは、勤続年数による給与の向上です。基本的にどの医療機関でも勤続年数が多くなればなるほど、給与も高くなっていきます。もう一つの理由は退職金です。常勤医として一定年数以上勤務しているならば、退職するときに退職金を貰える場合が多いです。退職金は勤続年数によって決まるので、長く勤めれば勤めるほど大きな金額となります。
年収以外にも、転職を検討する際に気を付けたいポイントはいくつかあります。実際に、下記のような項目を医療機関ごとにまとめてみると比較がしやすくなるでしょう。年収を優先するのか、働きやすさを優先するのか、どちらもバランスの良い職場を探すのかは人それぞれです。納得のいく職場を選べるようにじっくりと検討することをおすすめします。
- 給与の内訳や昇給ルール
- 当直回数やオンコール回数
- 有給休暇取得率
- 退職金の算定方式や勤続要件
- 学会費や研修費、家賃の補助(福利厚生)
- 兼業規定
40代での開業を検討する
開業を目指す場合、「40代の間に......」と検討される先生も少なくありません。50代でも開業できないわけではありませんが、ローン返済の都合もあり金融機関から融資が受けにくくなります。大学病院などで経験を積んで開業をしようと考えている場合、30代後半~40代前半くらいを目途に計画を立てるとよいでしょう。
40代という年代は、医師としては経験の豊富さの表れですが、金融機関から見ると働ける期間が少ないと見られてしまうのです。自己資金だけで開業するのは困難も多いため、開業志向のある先生は早いうちから開業計画を立てておきましょう。
セカンドキャリアやキャリアの複線化を考える
40代は臨床経験が豊富になり、従来の働き方に加えて、新しいキャリアを模索しやすい年代です。常勤1本だけでなく、複数の職場や仕事を組み合わせて収入や労働時間のバランスを取る選択肢もあります。
たとえば、産業医や企業での勤務、自由診療や在宅診療にかかわる形などが考えられます。それぞれの勤務先の特徴は下記のようになります。
- 産業医:企業における健康管理や労務衛生にかかわる。嘱託産業医は非常勤での勤務
- 企業:臨床知識を活かして開発やマーケティングに関与する
- 自由診療:保険診療のみでは治療選択肢が限られる疾患に対して、新たな治療選択肢を提供でき臨床の幅が広がる。
- 在宅診療:医療機関のみでなく患者宅での医療に携わることで、医療に対する解像度を上げられる
これらの勤務先を組み合わせた働き方の例として、下記のようなパターンが考えられます。
- 週4常勤 + 週1非常勤 (外来/在宅/美容など)
- 週3産業医 + 週2臨床
常勤先1つで転職を考えるのと比べて、複数の勤務先を組み合わせることで時間の自由度や専門性の幅を広げることが可能
となります。まとめ
今回は40代医師のキャリアプランについて見てきました。20〜30代を経て、臨床経験を積んだ40代医師にとっては、医局での勤務を続けることが王道のパターンではあります。一方で、民間病院やクリニックへの転職、開業、そしてキャリアの複線化といったさまざまなキャリアへの挑戦も十分可能な年代です。
このような中、どのような道を歩むべきか迷ってしまう方も少なくないでしょう。身近に自身とは少し変わったキャリアを歩んでいる方がいれば話を聞いてみるのをおすすめします。身近に相談できる人がいない場合、多くの医師の転職に関わりキャリアパスの知識も豊富な専門コンサルタントへの相談を検討してみてはいかがでしょうか。
 
                    
                

 
                                    
                                
                                 
                         
                                    
                                 
                                    
                                 
                                    
                                


