放射線科医は、外来や入院などで特定の患者さんを受け持つのではなく、他科の医師と協働して、多くの症例の診断にあたる診療科です。おもな業務は検査となりますが、大規模な医療機関では高度な設備を用いた治療を担うケースもあります。
勤務医として働くのはもちろん、開業や遠隔画像診断業務など、活躍の場は幅広いと言えるでしょう。
このコラムでは、放射線科医の平均年収や仕事内容に加え、多様な働き方、AI導入の影響などを解説します。
*1:2025年9月時点の「ドクタービジョン」掲載求人をもとに、平均値を算出しています。

執筆者:中山 博介
放射線科医の平均年収
全診療科の平均年収が1,631万円*1であるのに対し、放射線科医の平均年収は1,441万円*1。今回の調査で対象とした20の診療科の中で最も低い水準でした。
<【診療科別】平均年収ランキング*1>
| 順位 | 診療科 | 平均年収(万円) |
|---|---|---|
| 1位 | 美容外科 | 2,674 |
| 2位 | 形成外科 | 2,173 |
| 3位 | 産婦人科 | 1,844 |
| ︙ | ||
| 17位 | 救急科 | 1,566 |
| 18位 | リハビリテーション科 | 1,551 |
| 19位 | 病理科 | 1,550 |
| 20位 | 放射線科 | 1,441 |
放射線科医の年収が低い要因
放射線科医の年収が他科と比べて低い要因は、おもに下記の点が挙げられます。
- 当直やオンコール業務が少ない
- オンコール待機があっても、実際の出勤回数が少ない
- 平均勤務時間や時間外労働が少ない
少し古いデータにはなりますが、労働政策研究・研修機構が勤務医を対象に実施した調査によると、主たる勤務先における月あたりの日直・宿直が0回と回答した医師の割合は放射線科医がトップでした(日直なし:60.5%、宿直なし:59.6%)。
さらに、オンコールの呼び出しが0回と回答した割合も55.2%*2と、全診療科で最も高い結果になっています。
背景には、放射線科医の業務内容や科の特性があります。
画像診断の業務では、休日や夜間に撮影された場合は救急科や内科・外科などの医師が自ら読影し、放射線科医が翌診療日に後追いで読影するのが一般的です。放射線科医が当直やオンコールで緊急対応を求められるのは、腹腔・胸腔出血に対するカテーテル治療など比較的まれなケースであるため、時間外労働が少ない傾向にあります。
2020年の厚生労働省の調査によれば、病院勤務医(常勤)の週あたりの平均勤務時間は全診療科平均で56時間22分であるのに対し、放射線科は52時間54分*3と短くなっています。また、2023年の同調査では、年間1,860時間以上の時間外・休日労働をしている医師の割合も全診療科の中で最も少ない*4とされています。
このように、放射線科は他科と比べて時間外手当や休日手当がつきにくいため、年収が上がりにくい傾向にあります。しかし、その分ワーク・ライフ・バランスをとりやすい点は魅力とも言えるでしょう。
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地域別の年収傾向
実際の年収は年齢、勤務形態、勤務地の所在(地域)などでも異なります。ここでは地域ごとの傾向として、まずは都道府県ごとの平均年収ランキングを見てみましょう。
<放射線科医の平均年収【都道府県別】*1>
| 順位 | 都道府県 | 平均年収(万円) |
|---|---|---|
| 1位 | 青森県 | 1,750 |
| 広島県 | ||
| 3位 | 北海道 | 1,681 |
| 4位 | 宮崎県 | 1,625 |
| 5位 | 富山県 | 1,600 |
| 6位 | 高知県 | 1,575 |
| 7位 | 長野県 | 1,563 |
| 8位 | 京都府 | 1,550 |
| 奈良県 | ||
| 熊本県 |
これを地域ごとにまとめると、下表のようになります。
<放射線科医の平均年収【地域別】*1>
| 地域 | 放射線科医の平均年収(万円) | |
|---|---|---|
| 1位 | 北海道 | 1,681 |
| 2位 | 東北 | 1,475 |
| 3位 | 関東 | 1,466 |
| 4位 | 北陸・信越・東海 | 1,462 |
| 5位 | 近畿 | 1,428 |
| 九州・沖縄 | ||
| 7位 | 中国・四国 | 1,427 |
| 全国平均 | 1,441 |
都道府県別に見ると、都心部よりも地方都市の年収が高い傾向が見られます。ランキングの上位を占めているのも、青森県や広島県、北海道をはじめとする地方県です。
地域別に見ると、突出して高い北海道を除く各地域に大きな差はありませんが、西日本は全体的に年収が低めの傾向です。
都道府県や地域によって年収差が生じるおもな要因は、各エリアにおける放射線科医の需給バランスの違いにあります。
日本医学放射線学会の報告によると、高収入エリアである北海道や青森県では人口100万人あたりの放射線科の医師数が少ない一方で、CT・MRI検査の件数は多くなっています*5。このように、放射線科医の需要に比例して年収も高くなる傾向にあると考えられます。
対照的に、西日本では放射線科の医師数に対してCT・MRIの検査件数が少なく、相対的に需要が低いことが年収の低さの背景にあると言えるでしょう。
勤務医の就労実態と意識に関する調査|労働政策研究・研修機構(*2)
医師の勤務実態について│厚生労働省 第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会(2020年9月)(*3)
医師の勤務実態について│厚生労働省 第18回医師の働き方改革の推進に関する検討会(2023年10月)(*4)
CTおよびMRI検査における放射線科医の潜在的業務量の国別および日本の地域別の差異(Kanako K. Kumamaru,et al. Jpn J Radiol 36:273-281,2018 和訳)|日本医学放射線学会(*5)
放射線科医の仕事内容・働き方と年収の傾向

放射線科医の主たる仕事内容は各種検査画像の読影です。
レントゲンやCT・MRIなど、広く普及している画像検査はもちろんのこと、認知症やがんの検査で使用されるPET-CTを含めた核医学検査、IVR(インターベンショナルラジオロジー)も含まれます。
医師であれば、診療科を問わずある程度の読影は可能です。しかし読影が難しい専門的な所見は、その道のプロである放射線科医だからこそ見抜けることもあり、他科の医師から頼られる存在です。
画像診断のほかにも、放射線を用いたがん治療や、IVR(画像下治療)など、放射線科医に求められる仕事は多岐にわたります。
また、放射線科医は勤務医として働く以外にも、開業やフリーランスなど多様な働き方があり、それぞれ業務内容や年収も異なります。ここからは、働き方ごとの特徴を見ていきましょう。
勤務医
放射線科医の一般的な働き方は、病院で勤務医として働くことです。
2022年の厚生労働省の調査によると、病院に従事する医師数(勤務医)に対して診療所に従事する医師数の割合は、全診療科で50.9%であるのに対し、放射線科医は8.5%*6にとどまっています。このことから、放射線科は病院で勤務医として働く医師が多いことがわかります。
さらに、放射線科は業務を行う上で、CT・MRI、PET-CTやIVRなどの高額な医療機器が必要となるため、個人での導入が通常困難であり、病院に属する医師が多い傾向にあります。
勤務医のおもな業務内容は下記のとおりです。
- 各種画像検査の診断
- がんに対する放射線治療の計画・実施
- IVRによる病変の切除・焼灼・開通
一般的に、勤務医は激務な印象を持たれがちですが、放射線科医の場合は基本的に緊急対応が少なく、予定された業務が多いことから、時間外や休日勤務が少ない傾向にあります。2022年の調査によると、病院に勤務する放射線科医全体の女性医師の割合は25.2%*6となっており、出産や育児で多忙な女性医師も比較的ワーク・ライフ・バランスを保ちやすい診療科と言えるでしょう。
一方で、時間外や休日勤務が少ないからこそ、他科と比べて年収は低い傾向にあります。
開業医
放射線科医のセカンドキャリアとして、開業も一つの選択肢です。
放射線科医で開業する場合、下記のような形が一般的です。
- 内科の標榜
- 画像診断クリニックの運営
- 遠隔画像診断サービスの提供
放射線科医であっても内科を標榜できるため、一般内科として地域の患者さんのプライマリケアを行うケースは少なくありません。
2023年の医療経済実態調査によると、内科開業医の平均年収(損益差額)は2,754万円*7と報告されています。内科を標榜した放射線科医でも同等の収益が得られれば、勤務医の平均年収を大きく上回る可能性があると言えるでしょう。
また、放射線科医としてのキャリアやスキルを活かすのであれば、画像診断クリニックの運営や遠隔画像診断サービスの提供も選択肢の一つです。
画像診断クリニックとは、個人でCTやMRIを導入し、他院から紹介された患者さんの画像診断に特化するクリニックのことです。高額機器での画像検査を一手に引き受けることができます。
しかし、運営には近隣のクリニックからの患者紹介や高額な設備投資が必要であり、幅広い人脈や開業資金が不可欠です。
一方、近年増加傾向にあるのが遠隔画像診断サービスを提供するクリニックです。
遠隔画像診断とは、オンラインで画像所見を共有し、放射線科医が遠隔で読影・診断する方法を指します。自施設ではCTやMRIを導入せず、他院で撮影された検査画像のデータを専用のクラウドで共有して読影を行うため、コストを削減しつつ、放射線科医としての強みを活かすことができるでしょう。
遠隔画像診断にはアルバイトとしての働き方もあり、次の段落で詳しく紹介します。
第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和5年実施-|厚生労働省(*7)
└【「新型コロナウイルス感染症関連の補助金(従業員向け慰労金を除く)」を除いた損益差額】の千の位を四捨五入した数値
フリーランス
放射線科医の中には、非常勤として複数の医療機関でアルバイトするフリーランス医師も少なくありません。最近では直接医療機関に足を運ばず、自宅で遠隔画像診断アルバイトに従事する医師も増えています。
遠隔画像診断のアルバイトは、個人で遠隔画像診断支援サービスを導入したり、サービスを提供する企業に非常勤として登録したりすることで、他院で撮影された検査画像を自宅のパソコンで読影して報酬を得る働き方です。
場所や時間にとらわれない自由な働き方ができ、放射線科医としてのスキルを活かせる点が魅力と言えるでしょう。
また、時差を利用した働き方として、海外で 夜間に撮影された検査画像を日本の日中に読影するサービスを展開している企業も存在します。こうした企業の取り組みに参画することで、放射線科医の国際的な地域偏在を解消しつつ、報酬を得ることができます。
AIの普及で放射線科医の仕事はどうなる?

近年、医療従事者の負担軽減や医療の質の向上のため、医療業界においてもDX化は急務となっています。なかでも医療用AIの開発は以前から進められてきました。
とくに画像診断領域はビッグデータを得られやすいため、AIとの親和性が高い分野と言えるでしょう。
こうしたAIの普及によって放射線科医の負担軽減が期待される一方で、「放射線科医の仕事がAIに代替されるのでは」という懸念も生じています。
しかしながら、AIによって放射線科医の仕事が極端に減る、もしくは無くなるような可能性は低いと考えられます。
そもそもの放射線科の医師数は、人口100万人あたり58人(※)と非常に少なく、放射線科医1人あたりの業務量は世界最大の水準と言われています。オーバーワークを解消するためにも、画像診断AI導入による業務の効率化は急務と言えるでしょう。
AIの加速度的な進歩は今後も期待されますが、医療分野でAIが社会的な信頼や責任を背負えるかどうかは不透明であり、現状あくまで最終的な判断を下すのは放射線科医です。AIは仕事を奪う"敵"ではなく、業務をサポートしてくれる心強い"味方"と考えたほうが良いでしょう。
(※)2024年(令和6年)10月1日現在の全国人口1億2,380万2千人*8、2024年の放射線科医数7,533人*6をもとに算出
保健医療分野におけるAI開発の方向性について|厚生労働省
明石敏昭,待鳥詔洋,青木茂樹:AIと内科診療 2)AIによる画像診断の現状とこれから.日本内科学会雑誌 111(9):1770-1775,2022
放射線科医の数と業務量の国際比較―日本放射線科専門医会ワーキンググループ報告(Working Group of Japanese College of Radiology,Rad Med 26:455-465, 2008 和訳)|日本医学放射線学会
人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口│総務省統計局(*8)
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医療AIとは?現場で期待される役割、国の施策や倫理的課題を医師が考察
まとめ:ワーク・ライフ・バランスを保ちやすく、需要も高い放射線科

放射線科医は、他科の医師から依頼を受けて画像読影や血管内治療、放射線照射を行うため、頼りにされる存在です。時間外や休日労働が少なく、他科と比べて年収は低い傾向にありますが、その分ワーク・ライフ・バランスを保ちやすい診療科と言えます。
今後は医師の偏在解消を目的として、遠隔画像診断のさらなる普及が見込まれるため、AIが発展しても放射線科医の需要が減ることはないと言えるでしょう。
勤務する医療機関や働き方によって、得られるスキルや資格、年収は異なります。自身のキャリアビジョンやライフスタイルに合った職場を選び、満足できるキャリアを構築していきましょう。
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