「結婚や出産の予定を前提に、長く働けないと医療機関から見られてしまうのではないか」
「育児や家庭と両立しながらキャリアを継続するための具体的な転職ノウハウを知りたい」
転職を考える女性医師の中には、このような悩みを抱える方が少なくありません。医師という職業は専門性が高く、社会的な役割も大きい一方で、夜間対応や長時間勤務といった過酷さを伴うこともあります。そのため、家庭とキャリアの両立をどう図るかは大きな課題となります。
しかし実際には、女性医師の求める働きやすさを理解し、採用や受け入れに積極的な医療機関は増えています。実際に当社(株式会社メディカルリソース)が2024年8月に実施した「女性医師採用に関する調査」では、回答した248件の医療機関のうち80.2%が「女性医師の採用に積極的」と回答しました。つまり、多くの医療機関が女性医師の存在を必要とし、働きやすい環境づくりを進めていることが分かります。
本記事では、女性医師が転職活動の中で抱える不安や、面接でよく聞かれる質問、さらに履歴書や面接での工夫点を整理しながら、キャリアと家庭を両立できる転職のノウハウを解説します。実際の調査結果やコンサルタントのアドバイスを交えて紹介しますので、ご自身の転職活動に役立てていただければ幸いです。

アドバイザー:T.S
2018年入社 担当エリア:関東
女性医師が転職活動で特に不安を感じていること

引用元|弊社ドクタービジョンが行った女性医師採用に関するアンケート調査結果
女性医師が転職活動を行う中で特に多く寄せられる不安は以下の通りです。
- 仕事と家庭の両立
- キャリアの継続性・専門性の維持
- 職場環境・人間関係
これらは表面的に見れば「よくある悩み」に映るかもしれませんが、実際の転職活動に直結する重要ポイントばかりです。順に見ていきましょう。
仕事と家庭の両立
女性医師が最も不安に感じるのは、仕事と家庭(育児や介護)の両立です。特に0歳~小学校低学年の小さなお子さんを持つ場合、急な発熱や学校行事への対応が避けられず「それを理由に採用されないのではないか」という声が多く聞かれます。

実際の採用現場では、欠勤や早退のリスクは想定内とされることが多く、必要以上に気負う必要はありません。大切なのは「どのようにカバーするか」を具体的に伝えることです。例えば「夫や両親の協力」「ベビーシッターの利用」といった体制を示すだけで、採用側に安心感を与えられます。
実際、株式会社メディカルリソースの調査では医療機関側が「急な欠勤や早退」を懸念点に挙げつつも、「女性医師を採用して困った事例はあるか」という問いに対して、69.8%医療機関が「実際には困ったことは特にない」と回答しています。つまりリスクは想定されているものの、現場では十分に対応できていることが多いのです。
キャリアの継続性・専門性の維持
もう一つ大きな不安は「キャリアや専門性の継続について」です。出産や育児などで臨床から離れると、専門医資格の更新や新しい治療法へのキャッチアップが難しくなるのでは、と不安な先生も多いのではないでしょうか。

実際の採用現場では、ブランク期間そのものよりも「その間にどのように専門性を意識していたか」「復職後にどう成長したいか」が重要です。例えばオンライン講習の受講や論文への関心など、小さな取り組みでも継続していれば評価につながります。
さらに同調査では、「男女で活躍事例に差はない」と医療機関が回答しており、ブランク自体は必ずしもマイナス評価にはなりません。むしろ、育児経験を通じて「患者さまの気持ちを理解する力が強くなった」「時間管理能力が高まった」といった強みを前向きに伝えることで、プラスの評価につながります。
職場環境・人間関係
「育休や時短勤務は迷惑に思われないか」「理解ある同僚に恵まれるか」など、職場環境や人間関係を重要視する先生は多いです。できれば同じくらいのお子さんがいたり、育児経験のある先生が勤務したりといった環境を理想とする方は多いのではないでしょうか。

医療機関側の声を聞くと、女性医師の受け入れを前向きに捉える傾向は強まっています。同調査結果では、多くの医療機関が女性医師採用に積極的と回答しています。女性医師を歓迎する職場は確実に増えており、孤立する心配は過去ほど大きくありません。選考時には「女性医師の勤務実績があるか」を確認すると安心です。
【転職コンサルタントが解説】女性医師が面接でよく聞かれる質問と効果的な回答例

引用元|弊社ドクタービジョンが行った女性医師採用に関するアンケート調査結果
転職活動を進める中で避けて通れないのが「面接」です。履歴書や職務経歴書でどれだけ経験や実績を示しても、最終的には面接でのやり取りが採用可否を大きく左右します。特に女性医師の場合、会話の中で「ライフイベント」や「勤務条件」に関する質問が出てくることが多い傾向にあります。
それは、医療機関が単に家庭の事情を問題視しているからではなく、組織としてどのように支援できるかを判断するために必要な情報を求めているからです。したがって、こうした質問に対しては「自分の制約を正直に伝えつつ、どのように工夫して貢献できるのか」をセットで語ることが大切です。
ここでは、実際の面接でよく聞かれる代表的な質問を4つ取り上げ、それぞれの背景と効果的な回答例を紹介します。
- 退職理由と志望動機
- キャリアプラン
- 家庭・ライフイベント
- 勤務条件
退職理由と志望動機
性別を問わず、一般的に面接で多く聞かれるのが「退職理由」と「志望動機」です。退職理由として「子育てや家庭の事情」を挙げること自体に問題はありません。実際、多くの医療機関が「配偶者の転勤」「出産・育児」などを理由とした離職に理解を示しています。前述の調査でも、女性医師の急な退職理由として「配偶者の転勤」が挙げられるケースがあるとしつつ、それ自体を否定的に捉えているわけではありませんでした。
注意したいのは「志望動機」が弱い場合です。「子どもが小さいので」「生活に合わせたいから」といった説明だけでは、医療機関に対して「自分の事情を優先していて、ここで働きたい理由がないのでは」と映ってしまいます。採用側は、先生がどのくらいの熱意を持って自院で働きたいのかを知りたいのです。
【効果的な志望動機の回答例】
「女性患者さまからのニーズが高い婦人科検診や内視鏡検査の分野で、安心して受診していただける環境を提供したいと思っています。実際に子育てを経験している立場として、患者さまの気持ちに寄り添った対応ができる点が私の強みです。こうした視点を活かし、貴院が掲げる「患者ファーストの医療」に一層貢献していきたいと考えております。」
前述の調査では、38.7%の医療機関が「女性医師を希望する患者の声がある」と回答していることからも「患者ニーズに応えたい」という視点を志望動機に盛り込むのも効果的でしょう。
キャリアプラン
「今は子育てで精一杯」「将来のことまでは考えられない」という先生も多いですが、採用側はあくまで「どのくらいの期間を働けるか」「今後どのように自院と関わっていく意欲があるか」を知りたいと考えています。長期的なキャリアプランを完璧に描けなくても、仮のイメージを持っているだけで、医療機関側に安心感を与えることができます。
【効果的な回答例】
「現在は下の子が低学年で、放課後はまだ一人にしておけないため16時までの勤務を希望しております。ただ、日中は限られた時間の中でも効率的に診療を行えるよう心がけて参ります。子どもが高学年になれば帰宅後も一人で過ごせるようになるため、その際には勤務時間を延長し、外来枠の拡充や当直・オンコール業務にも積極的に携わりたいと考えております。長期的に安定して勤務し、貴院の診療体制に幅広く貢献していきたいと思っています。」
こうした回答は「今後さらに貢献していく姿勢」を示すことができ、採用側にとって非常にポジティブな印象を与えます。
家庭・ライフイベント
「将来的に出産の予定はありますか」「今後の家庭との両立をどう考えていますか」といった質問は、会話の中で間接的に聞かれることが多いものです。採用側はあくまで「長期的な戦力として期待できるか」を知りたいだけで、家庭を理由に不採用にするわけではありません。
【効果的な回答例】
「将来的には出産や育児の可能性もあると考えていますが、それを理由にキャリアを停滞させるつもりはありません。現時点では、医師として臨床の現場に立ち、経験を一つひとつ積み重ねることを最優先に考えております。」
このように答えることで、「将来的な視野も持ちつつ、医師としての成長意欲がある」というバランス感覚をアピールできます。
勤務条件
勤務時間や当直の有無など、具体的な条件について確認されることが多いです。時短希望であれば「何時まで勤務可能か」を明確にし、急な欠勤への対応策も示すと医療機関にとって安心材料となります。
前述の調査では64.9%の医療機関が女性医師採用のための制度を整備または予定していると回答しており、そのうち60.4%が時短制度を導入しています。なお、2025年4月から段階的に施行されている「育児・介護休業法」の改正により、看護休暇・残業免除の対象拡大や、短時間勤務の代替としてのテレワーク追加など、柔軟な働き方を後押しする動きも進んでいます。勤務条件については遠慮せず、具体的に伝えることがむしろ信頼につながるでしょう。
【効果的な回答例】
「現在は家庭の事情から16時までの勤務を希望しています。ただし、診療の区切りや患者さま対応など業務上必要な場合には、柔軟に延長できるよう調整いたします。また、急な欠勤が発生しないよう、近隣の病児保育施設や学童保育を事前に登録しており、想定外の事態にも対応できる体制を整えています。」
こうした回答をすることで「最大限配慮している」ことを示せます。
【女性医師の転職を成功に導く】履歴書の工夫と面接における注意点

転職では、履歴書と面接をどう乗り切るかが重要なポイントになります。ここからは、どのような対策をすれば効果的なのかを、以下にわけて詳しく解説します。
- 採用担当者が注目する履歴書の具体的な工夫点
- 面接時に気をつけるべき服装や身だしなみ、話し方
採用担当者が注目する履歴書の具体的な工夫点
履歴書では、ブランク期間や育児との両立をネガティブに捉えられないよう、前向きな表現で記載することが重要です。職歴の欄にブランク期間がある場合は、「育児のため休職」と簡潔に記載し、その期間中に行った学習活動や資格更新の取り組みなどがあれば付記しましょう。向上心をアピールできます。
さらに、志望動機の欄では、家庭の事情だけでなく、医療機関の特色や診療方針に共感した点を具体的に記載すると効果的です。「貴院の予防医療への取り組みに共感し、健診業務を通じて地域の健康増進に貢献したい」といった形で、医療機関への具体的な関心を示しましょう。
併せて、自己PRでは育児経験を通じて得られた患者さまへの共感力や、限られた時間での効率的な業務遂行能力などを強みとして記載し、医療機関にどれくらい貢献できるかをアピールするのも重要です。
面接時に気をつけるべき服装や身だしなみ、話し方
女性医師の面接では、男性医師と比べて服装に関する問題が指摘されるケースは比較的少ないとされています。多くの先生がオフィスカジュアルやスーツを着用しており、特別な準備は不要な場合が多い傾向にあります。
ただし、肌の露出度合いには注意が必要です。医療従事者として清潔感のある服装を心がけるようにしましょう。爪や香水についても極端でなければ問題視されるケースは少ないものの、医療現場での勤務を想定した控えめなスタイルが望ましいとされています。

話し方については、自信の無さが伝わらないよう注意が必要です。復職を検討する女性医師の中には、ブランクへの不安から声が小さくなったり、マスク着用時に表情が読み取りにくくなったりするケースが見られます。特にオンライン面接では対面での面接よりも暗い印象を与えやすいため、意識的に明るいトーンで話すようにしましょう。
女性医師のキャリアを支える!満足度の高い医療機関を見極める方法

転職を考える際に最も大切なのは「転職先で本当に満足して働けるかどうか」です。給与や勤務地だけでなく、育児や家庭との両立、キャリアの継続性、職場環境など、多角的に判断する必要があります。ここからは、女性医師が満足度の高い職場を選ぶために意識すべきポイントを3つのステップに分けて解説します。
- 転職後に満足度が高いと感じる職場の具体的な特徴を洗い出す
- 逆質問で院内保育や更衣室の状況などを確認する
- 条件交渉によって希望の働き方を実現する
Step1.転職後に満足度が高いと感じる職場の具体的な特徴を洗い出す
女性医師が転職後に高い満足度を感じる職場には、いくつかの共通した特徴があるとされています。例えば、以下のような点です。
- 複数診療体制を採用しており、急な欠勤時にも業務が分担できる
- 多様な症例を経験でき、スキルアップできる
- 指導やフォローをしてくれる先輩医師がいる
- 事前に聞いていた時間通りに帰宅できる
- 医局や院内施設が清潔で開放的な雰囲気である
- 院内保育が整備され、子育てと両立しやすい
- 職員食堂があり、食事をおろそかにせずに済む
- 学校行事や慣らし保育などで休暇が柔軟に取れる
【職場環境】
【福利厚生】
これらの条件は面接の質問でも確認することではありますが、整備だけされていて形骸化している可能性も0ではありません。
例えば「16時までの時短勤務」と書かれていても、残業が常態化していると家庭との両立は難しくなります。実際の環境は転職コンサルタントを通じるなどして見極めることが、転職満足度につながる第一歩です。Step2.逆質問を通じて、step1で挙げた優先度の高い特徴を確認する
面接の最後に設けられる逆質問の時間は、職場環境を確認する貴重な機会でもあります。特に女性医師にとって気になるのは以下のポイントではないでしょうか。
- 育児と仕事の両立を支援する体制(院内保育、時短・フレックスの実績など)
- 院内設備(保育所、更衣室、授乳室など)の整備・使いやすさ
- チーム体制や人員配置(欠員時のサポート体制など)
- 女性医師の定着率やキャリア継続のサポート体制
ただし、注意したいのは「環境面の質問ばかりにならないこと」です。環境面だけに終始すると「働きやすさだけを求めているのでは」と受け止められるリスクがあります。そこで、先生からは業務に関心を持っていることを示す以下のような質問を交えると効果的です。
「よく扱う症例や、特に注力している疾患領域を教えてください」
「治療方針の検討や情報共有はどのようなフローで行われていますか?」
「診療やカンファレンスでは、どのように他職種と連携されていますか?」

こうした質問は採用側に「この先生は意欲がある」と映り、好印象につながります。一方で、院内保育や時短勤務の実績といった環境面は、事前に転職コンサルタントに依頼して確認してもらうとよいでしょう。医療機関側も「環境面よりも業務について話したい」と思っているため、質問のバランスを工夫すると選考の通過率も高まる可能性があります。
Step3.条件交渉によって希望の働き方を実現する
理想的な働き方を実現するためには、適切な条件交渉が不可欠です。勤務時間や当直の有無、時短勤務の詳細など、自分にとって譲れない条件を明確にし、それらを実現できるか確認すると良いでしょう。
ただし、条件交渉は一方的に要求するのではなく、医療機関のニーズと折り合いをつける姿勢が求められます。「家庭と両立するために当面は時短勤務を希望しますが、数年後には当直や長時間勤務も可能になります」といった柔軟な伝え方は好印象です。
また、条件交渉に関しても転職コンサルタントに代わりに行ってもらうのが現実的です。転職コンサルタントは医療機関との信頼関係があるため、先生本人が言いにくいことも適切に交渉できます。その結果、面接本番では待遇交渉ではなく「自分がどう貢献できるか」に集中できるのです。
自分の希望を最大限に実現するためにも転職コンサルタントに相談を
日本調剤グループの株式会社メディカルリソースが運営する「ドクタービジョン」では、医師転職専門のコンサルタントが、これまでの経験や適性を踏まえてキャリアプランを一緒に考え、履歴書作成から面接対策、条件交渉、内定後のフォローまで一貫してサポートします。
さらに、コンサルタント自身が医療機関に足を運んで情報収集を行っており、求人票には載っていない現場の雰囲気や人間関係といった情報も提供可能です。こうした情報は、転職後の後悔を防ぐ上で非常に重要です。
ドクタービジョンの転職コンサルティングサービスは無料で利用可能です。安心して条件を整理し納得のいく転職を実現するために、まずはお気軽にご相談ください。
転職は不安を解消して理想の働き方を手に入れる方法の1つ

女性医師にとって転職は、育児や家庭との両立を理由にキャリアを諦めるのではなく、理想的な働き方を実現するための積極的な戦略と言えます。女性医師の働きやすさを重視する医療機関が増えているのもあり、現在の職場で働き続けることが難しい場合でも、自分に合った環境を見つけることは十分に可能です。
転職を通じて、時短勤務でも高年収を実現したり、育児との両立がしやすい診療科に移ったりと、医師としてのキャリアを継続しながら充実した生活を送るのは、決して難しい話ではないでしょう。不安や条件整理を一人で抱え込まず、転職コンサルタントの力を借りながら自分に合った環境を探していきましょう。
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