新専門医制度の基幹施設の選び方

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公開日:2020.10.21

新専門医制度の基幹施設の選び方

新専門医制度の基幹施設の選び方

新専門医制度は、質の高い専門医を養成し、よりよい医療を国民に提供すべく発足した制度です。2018年の制度開始以来、臨床初期研修を終えた若手医師が専攻医として専門医取得に向けた研修を積んでいます。しかし、「転科」が難しいためどのように進路を決めていけばよいのかよく分からない医師も多いはずです。とくに、どの基幹施設を選ぶかによって研修の進め方や研修内容は大きく異なります。

そこで今回は、新専門医制度における基幹施設の選び方について詳しく説明します。

新専門医制度での「基幹施設」とは?

基幹施設のイメージ

これまで、専門医資格は各学会独自の基準による認定が行われてきました。しかし、学会によって基準の難易度には大きな差があり、「専門医」といっても医学的な質の高さはそれぞれ異なっていたのが事実です。

そこで、学会によらず高いレベルの専門医を養成すべく発足したのが新専門医制度です。中立な立場である日本専門医機構が認定したプログラムを満たす研修を修了してはじめて専門医試験の受験資格を得ることができます。

医師は初期臨床研修を終えると、19の「基本領域」のいずれかの専攻医となって、日本専門医機構が定めるプログラムに即した5年間の研修を行います。そして、さらに専門性を高めるため「サブスペシャルティ領域」の専門医を目指して研鑽を積んでいくことになります。新専門医制度での研修は1つの施設のみで行うのではなく、基幹施設に所属し、いくつかの連携施設をローテートしながら行うことが原則です。

基幹施設は、指導医数や手術件数など日本専門医機構が定める基準を満たした医療機関が認定されます。そのため、規模の大きな病院に集中しやすく、地方部では選択の範囲が狭くなることが指摘されています。

基幹施設以外の研修施設で行う研修も

基幹施設は原則的に地域の中核となる急性期病院が認定されますが、そこで学ぶことができるのは高度な急性期医療や先進的な医療なので、いわゆる「コモンディジーズ」を学ぶのに適していません。そこで、コモンディジーズに対する医療や地域医療を学ぶのに適した医療機関が連携施設となって、ローテート式の研修を行っていくのです。

連携施設の認定は臨床研修指定病院が望ましいこと、専攻医が研修するための環境が整っていること、指導医が在籍していることなどが要件とされています。一方で、内科であればプログラムのひとつとして内視鏡研修、救急研修、病理研修など専門性が高い分野の研修や医学研究なども行うことができますが、それらの研修を行う施設には指導医が在籍しないなど要件に満たない場合もあります。そのため、全ての要件が揃わない施設でも「特別連携施設」としてプログラムに定めることもでき、最大で1年間の研修を行うことが可能です。

新専門医制度の基幹施設の選び方

基幹施設のイメージ

新専門医制度での研修プログラムは日本専門医機構が認定しているとはいえ、基幹施設によって内容や流れは様々です。施設によってその後に進むサブスペシャルティ領域にも影響を与える可能性があります。では、研修の要とも言える基幹施設を後悔なく選択するには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?詳しく見てみましょう。

選び方のポイント1:指導医の数や手術件数などの充実度

日本専門医機構は基幹施設を認定するにあたって、指導医数や手術件数などに一定の基準を設けていますが、その充実度には差があります。将来的に高度な急性期医療に携わることを希望している医師は、指導医や手術件数などが充実している施設を選ぶのがおすすめです。また、基本領域を決める際には将来的にどのサブスペシャルティ領域に進むのかもある程度は決めておかなければなりませんが、自身が希望する領域に強みのある施設を選択するのもひとつの方法と言えます。その領域の医療が充実した施設を選ぶとよいでしょう。

選び方のポイント2:ローテートのプログラム

新専門医制度では、基本領域の研修は基幹施設と連携施設をローテートしながら行います。研修プログラムは日本専門医機構が認定を行いますが、基幹施設によって様々な特色のある研修が行われます。高度な急性期医療だけでなく、幅広い医療の場で研修を行い、自身に合った進路を決めていきたいと考える医師は連携施設での研修が充実しているプログラムを選ぶのがおすすめです。

選択の際は、基幹施設だけの特色ではなく連携施設で行われる研修の内容や特徴についてもしっかりチェックするようにしましょう。実際に見学に行って自らの目で確かめたり、すでに研修を開始している先輩医師から情報を得たりするのも重要です。

選び方のポイント3:連動研修が可能かどうか

新専門医制度は基本領域とサブスペシャルティ領域の二階建て構造になっているのが特徴のひとつです。しかし、二階建て構造にすることでそれぞれ決まった期間の研修が必要となるため、サブスペシャルティ領域の専門医資格取得が遅くなることが問題とされています。そのため、日本専門医機構は、それぞれの領域で同様の研修を行う場合は研修を「連動」し、サブスペシャルティ領域での研修の短縮を認めています。

基本領域を選択する段階で、すでに将来選択するサブスペシャルティ領域も決まっている医師は、連動研修を行うことができる施設を選ぶとよいでしょう。

自分にとってよりよい選択をするために

基本領域の研修は、メインとなる基幹施設と連携施設をローテートしながら行いますが、基幹施設では高度な急性期医療、連携施設ではコモンディジーズに対する医療の研修を行うことになります。

研修の充実度は大きく異なるのが現状であり、基幹施設の選択は研修自体を左右するといってもよく、慎重な選択が求められます。今回紹介した3つのポイントに注意してよりよい研修先を選んでください。

基幹施設を選択する際は、他者からの評判などが気になるものですが、将来の目標とする医師像は人それぞれです。目標によって適した研修先も異なりますので、まずは自身がどのような医師になりたいか、どのような医療に携わりたいかしっかり考え、自分に合った研修先を自分自身で決めていきましょう。

ドクタービジョン編集部

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