女性医師の育休Q&A!現役ママ医師のリアルを聞く

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。
医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

働き方

公開日:2022.10.31

女性医師の育休Q&A!現役ママ医師のリアルを聞く

女性医師の育休Q&A!現役ママ医師のリアルを聞く

最近では女性医師が増えていることもあり、以前に比べ育休取得率は上昇傾向にあります。しかし、無理に職場復帰をして、最終的には離職するケースも少なくありません。育休を取得したあとも医師としてキャリアを積み続けるには、無理なく両立できる体制を整えることが大切です。

そこで今回は、女性医師の育休取得状況や育休に関するQ&A、復職時のポイントなどについて現役のママであり医師として活躍される成田亜希子先生に詳しく解説していただきました。

成田亜希子先生プロフィール写真

執筆者:成田 亜希子

詳しいプロフィールはこちら  

女性医師の育休取得状況

女性医師の育休取得状況

出産や育児を期に第一線を退く女性医師は少なくありません。そもそも女性医師の育休取得率は80%を超える他職種の女性育休取得率と比較すると、取得割合は低いと言えるでしょう。とはいえ、産休・育休を経て職場復帰を果たす女性医師もたくさんいます。

日本医師会による「女性医師の勤務環境の現状に関する調査報告書」によれば、女性医師の育休取得率は平成21年は39.2%だったのに対し、平成29年では59%まで上昇しています。女性医師の育児休業取得率の推移だけを見れば、女性医師も育休を取得しやすくなってきていることが分かります。

女性医師の育休取得期間

次に、女性医師の育休取得期間について見ていきましょう。同上の資料によれば、平成29年では取得した育休期間は7~12か月が最多の40%であるものの、5~6か月22%、3~4か月17%、1~2か月14%と、早めに切り上げて復帰を果たしているケースが多いことも分かります。

女性医師にとって育休を取得する時期は、専門医へ向けての研鑽など医師としてのキャリアを積む大切な時期と重なるケースも多々あります。そのため、本人の希望で早めに育休を切り上げるケースもあると考えられますが、「代わりの医師がいない」「職場の理解が得られない」といった理由で早めに切り上げざるを得ないケースも少なくないでしょう。

先輩ママ医師が答える育休Q&A

先輩ママ医師に聞く育休Q&A

せっかく育休を取得するのであれば、スムーズで有意義な育休生活を送れるようにしたいものです。ここでは、女性医師の育休取得や復帰後のポイントについて、育休取得歴2回の筆者が自身の経験を踏まえて回答します。

育休の期間はどれくらい取るのが良いですか?

基本的に育休は、申し出ることにより最長で子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで取得できるので、育休の期間はご自身の希望に合わせるのが理想です。「ギリギリまで取得したい」という人もいれば、「キャリア形成のために早めの職場復帰を希望する」という人もいるでしょう。育休期間に"正解"はありませんから、ご自身の希望を職場と話し合って決めていきましょう

育休を取得する前にしておくとよいことがあれば教えて下さい。

育休は職場復帰を前提に利用できる制度です。育休中は赤ちゃんとの生活で時間の余裕がなくなりがちなので、産後休暇や育休を取得する前に復帰後の生活を見据えた準備を始めておくことが大切です。具体的には、"保活"やシッターさんの手配など安定した勤務ができる体制を整えるための準備を行い、万が一の時に備えて病児保育なども下調べしておくとよいでしょう。

育休中にしておくとよいことはありますか?

育休中は育児に全力を注げる貴重な期間です。できるだけ赤ちゃんとの時間を大切にして、悔いのない時間を過ごすことをおすすめします。ただし、医師は患者さまの前に立てば「ブランクがある」という言い訳が通用しません。育休中でもスキマ時間をうまく活用して勉強を継続していくとよいでしょう

育休を取得してよかったこと、もっとこうすればよかったと思うことがあれば教えて下さい。

今しかない子どもとの時間を確保できたため、育休取得はとても有意義なものでした育児に慣れた状態で復帰できたので、仕事にも集中しやすかったと思います。しかし、やはり医師としてのブランクができたことで復帰後は戸惑うことも多くありました。育休中にもう少し勉強したり、最新のトピックスにアンテナを張ったりしておくべきだったなと感じました。今では学会などもオンラインで参加できますので、上手く活用することをおすすめします。

復帰をするにあたって大変だったことは何ですか?

一番大変だったのは、子どもの急な発熱などへの対応体制を整えることでした。保育所に通い出すといろいろな感染症をもらってくるようになるので、予期せぬ発熱や体調不良などが起こりやすくなります。保育所からの急な呼び出しもあり、勤務に穴を開けてしまうこともありました。子どもが体調を崩しても、病児保育の空きがなく、病気のときの預け先がない...ということも少なくありません。いろいろな緊急事態を想定して、家族に協力を頼むなど前もって対策しておきましょう

職場復帰!先輩ママ医師の1日のタイムスケジュール

職場復帰!先輩ママ医師の1日のタイムスケジュール

育休を経て職場復帰する女性医師の働き方はさまざまです。出産前とほとんど変わらずフルタイムで勤務するケースもあれば、時短勤務制度などをうまく活用して育児と仕事の両立を目指すケースもあります。

職場復帰したママ医師の、1日のタイムスケジュールの代表例を見てみましょう。これから職場復帰を目指す人はぜひ参考にして下さい。

フルタイムでキャリア形成を図る

出産前と変わらず、フルタイムで職場復帰を果たす医師の場合は、次のようなタイムスケジュールが一般的です。

5:30 起床、準備
7:30 出勤。途中で保育所へ寄り、子どもを送る
8:00 勤務開始
18:30 勤務終了
19:00 帰宅途中で保育所へ寄り、子どものお迎え
19:30 帰宅。食事、入浴、翌日の準備、子どもの寝かしつけなど
21:00 片付けなどの家事
22:00 勉強などの「自分タイム」
0:00 就寝

時短制度で育児との両立

時短制度などを活用して育児と仕事との両立を図る医師の場合は、次のようなタイムスケジュールが一般的です。

6:00 起床、準備
7:30 出勤。途中で保育所へ寄り、子どもを送る
8:00 勤務開始
15:30 勤務終了
16:00 帰宅途中で保育所へ寄り、子どものお迎え。買い物なども済ませる
16:30 帰宅。食事、入浴、翌日の準備、子どもの寝かしつけ、片付けなどの家事
21:00 勉強などの「自分タイム」
23:00 就寝

先輩ママ医師に聞く両立のコツ

先輩ママ医師に聞く両立のコツ

最後に、出産や育児を経ても無理なく医師としてのキャリア、経験を積んでいくコツをご紹介します。

時短勤務など制度の活用

現在、厚生労働省はフルタイムより短い時間の就労であっても勤務医を正規雇用扱いにするよう求める通知を各都道府県知事に出しています。医療機関によって制度は異なり、実際の労働時間や給与などの扱いに差はありますが、多くの医療機関で時短勤務を取り入れている傾向があります。育児との両立に自信がない場合は、まずこのような負担が少ない制度を活用して職場復帰するのも一つの方法です。

常勤にこだわらずスポットなどで臨機応変に働く

近年、医師の働き方は多様であり、必ずしも常勤での勤務にこだわる必要はなくなっています。育児が落ち着くまでは、これまでの経験を活かして臨機応変な勤務が可能なスポットバイトや定期非常勤などで働くのもおすすめです。コロナ禍では、自宅勤務も可能なオンライン診療のスポットバイトなども多くなっているので、無理なくできることから始めていきましょう。好条件のスポットバイトを効率よく探したい、子育てと両立して収入を増やしたいという方は、こちらも参考にしてみてください。

頼れる人を作る

働くママ医師にとって、両親や友人など身近にいる頼れる人は最大の味方といえるでしょう。急な保育所の呼び出しなどにいつでも対応してくれる人がいることは、育児と仕事を両立するうえで大きな支えになります。両親や友人など近くに頼れる人がいる環境を作るほかにも、シッターサービスなどを活用し必要時にサポートを受けられる体制を整えていくのもよいですね。

育休を取得する際は、復帰後の準備も入念に

女性医師の育休取得率は、以前に比べて高くなっているとはいえ、ほかの職種よりは取得率が低い現状にあります。また、早めに育休を切り上げるケースも多く、職場復帰後は育児との両立を難しく感じる場面も多いかもしれません。

しかし、働き方や周囲のサポート次第では、育児と上手く両立しながら医師としてのキャリアを積んでいくことも可能です。育休期間は今しかない子どもとの時間を大切にし、自らが理想とする復帰後の生活を実現するために、家族ともよく話し合って育児と仕事の両立体制を整えていきましょう。

成田 亜希子

執筆者:成田 亜希子

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の診療を行ってきた。自身は二児の母。育児中は医療行政に関わり、国立保健医療科学院や結核研究所で感染症対策などを含めた公衆衛生分野の研鑽に励んだ。

現在は、医師である夫の研究留学に帯同しアメリカ在住。日本のクリニックと連携してオンライン診療部門の立ち上げと改革に邁進している。

今の働き方に不安や迷いがあるなら医師キャリアサポートのドクタービジョンまで。無料でご相談いただけます