「特定機能病院」は高度な医療を提供する医療機関であり、大学医学部の附属病院や、がんセンターのような病院を指します。医療技術の開発や、研修・教育機能を併せ持つことも特徴です。2026年4月には特定機能病院の承認要件が見直され、これまでの機能に加えて「地域医療への人的協力」という新たな役割が明確化されました。
このコラムでは、特定機能病院の概要や特徴、医師として働く際のメリット・デメリットなどを見ていきます。ぜひ最後までご覧ください。

執筆者:Dr.SoS
特定機能病院の定義と役割
特定機能病院とは
特定機能病院制度の趣旨として、厚生労働省は下記のように定めています。
高度医療の提供、高度の医療技術の開発及び評価、医療の高度の安全の確保、高度の医療に関する研修並びに地域における医療の確保を実施する能力等を備えた病院について、厚生労働大臣が個別に承認するもの。
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001018535.pdf(2026年7月24日閲覧)
(リンク元:厚生労働省webサイト「特定機能病院について」)
特定機能病院は、2024年10月時点で88施設存在します*1。これは全国に8,000施設ほどある病院のうち*2、1%程度であり、多くを大学病院の本院やがんセンターが占めています。
すべての都道府県に存在しますが、1施設しかない県がある一方で、東京都には16施設が集中するなど*1、所在地に偏りがあります。
2026年に行われた制度の見直しでは、特定機能病院の中でも役割に応じた3つの類型が設けられました。分類は以下のとおりです(図中の「基礎的基準」「発展的基準」は後述)。
| 特定機能病院A | 大学病院本院 |
|---|---|
| 特定機能病院B | ナショナルセンター(NC)、国立健康危機管理研究機構(JIHS) |
| その他 | 制度見直し前から承認を受けている病院のうち、新たな要件の一部を満たさない病院(経過措置としての位置付け) |
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001714431.pdf(2026年7月24日閲覧)/
厚生労働省「基礎的基準及び発展的基準の考え方(案)」pp.2-4
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001564539.pdf(2026年7月24日閲覧)

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001714431.pdf(2026年7月24日閲覧)
(リンク元:厚生労働省webサイト「特定機能病院について」)
これにより、大学病院本院として教育・研究・地域医療支援機能を担う病院と、特定領域で高度かつ専門的な医療を提供する病院とが、より実態に合わせて評価されるようになったと言えるでしょう。
特定機能病院と一般病院の違い
特定機能病院の概要を理解する上で、一般病院との違いを見てみましょう。
そもそも「病院」とは、20床以上の病床を有するものと定義され(0〜19床は「診療所」)、以下の6つに分けられています。
- 一般病院
- 特定機能病院
- 地域医療支援病院
- 臨床研究中核病院
- 精神科病院
- 結核病院
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/25-2/dl/zentai.pdf(2026年7月24日閲覧)
これらはそれぞれ、医療において果たす役割が異なります。特定機能病院は、先述のとおり高度の医療提供が中心です。
これに対して「地域医療支援病院」は、かかりつけ医の支援が中心となります。多くは市民病院など、地域医療で中心的役割を果たす病院が該当し、2025年9月時点で全国に719施設あります*3。「精神科病院」「結核病院」は、それぞれ専用病床のみを有する病院です。
「臨床研究中核病院」は臨床研究等の中心的役割を担う病院で、研究件数や論文数などの条件を満たす必要があります。現在は特定機能病院の一部が臨床研究中核病院として承認されています。
これらに該当しないものが「一般病院」です。一般的な医療を提供する病院で、数としては最も多く、とくに民間病院が該当する傾向にあります。
令和7年版厚生労働白書 資料編|厚生労働省
地域医療支援病院について|厚生労働省(*3)
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特定機能病院に対する診療報酬の評価
特定機能病院が担う高度な医療機能は、診療報酬上も評価されています。
具体的には、入院患者の算定方法が一般病院とは異なります。一般病院では「一般病棟入院基本料」が、特定機能病院では「特定機能病院入院基本料」が算定されます。
点数は看護配置によっても異なりますが、2026年度診療報酬改定では特定機能病院の類型(A~C)新設に合わせて、下記のように定められています。
-
【一般病院】
- 急性期一般入院料1:1,874点 【特定機能病院】
- 特定機能病院A入院基本料:2,146点
- 特定機能病院B入院基本料:2,136点
- 特定機能病院C入院基本料:2,016点
※「特定機能病院C」は、先述した3類型の「その他」が該当します。
※特定機能病院はいずれも一般病棟、7対1入院基本料の場合
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年7月24日閲覧)
同じ入院でも、特定機能病院に対する診療報酬は一般病院より10%ほど高く設定されているのが特徴です。2024年度の診療報酬改定時には特定機能病院の類型がなく、一般病棟の7対1入院基本料は一律1,822点だったため、全体的に引き上げられていることがわかります。
特定機能病院の承認要件見直しのポイント
特定機能病院として認められるためには、いくつか承認要件が設けられています。2026年の見直しでは、新たな役割も追加されました。ここでは、従来の基本的な要件を確認した上で、どのような変更が行われたのかを具体的に見ていきましょう。
承認要件の厳格化
特定機能病院の承認要件として、これまで下記のような内容が定められていました(一部抜粋)。
- 病床数:400床以上
- 人員配置:医師は通常の2倍程度の配置が最低基準で、半数以上がいずれかの専門医。薬剤師や看護師等も一般病院の1.5~2倍強が最低基準
- 構造設備:集中治療室、無菌病室、医薬品情報管理室が必要
- 査読のある雑誌に掲載された英語論文数:年70件以上 など
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001018535.pdf(2026年7月24日閲覧)
これらに加え、2026年に行われた承認要件の見直しでは、下記の要件が追加されています。
- 地域医療への人的協力:常勤医師換算数原則60人以上
- 原則として定められた21の診療科を有していること
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001018535.pdf(2026年7月24日閲覧)
見直しに伴い、特定機能病院にはこれまで以上に幅広い役割が求められるようになりました。
とくに大きな変更点は、承認要件に「地域医療への人的協力」が加わったことです。医師派遣の実績は、派遣先医療機関における常勤医師換算数を基本に評価されることになりました。この仕組みによって、医師が多い地域から少ない地域への派遣など、医師偏在の是正に資する取り組みが重視される方針です。
従来設けられている医療提供、教育、研究、医療安全に関する要件も、より具体的に整理されました。教育面では、一定数の専攻医らの受け入れや、幅広い基本診療科の専門研修プログラムを基幹施設として担うことが示されています。診療体制についても、従来の16診療科に加え、病理診断科、臨床検査科、総合診療科の設置が求められています。
こうした見直しによって、特定機能病院は高度な医療を提供するだけでなく、医師を育成し、地域医療を支える拠点としての役割がより明確になったと言えるでしょう。
基礎的基準と発展的基準
今回の見直しでは、特定機能病院として満たすべき「基礎的基準」が整理されました。その上で、個々の病院が地域の実情をふまえて自主的に実施する取り組みを、「発展的基準」として評価する方針です。
たとえば研究面では、基礎的基準として査読付き英語論文の数が挙げられています。これに対して発展的基準では、多施設共同研究への参加や症例登録体制、研究費の獲得、治験実績などが評価対象となります。また、被引用数が各分野の上位10%以内に入る「TOP10%論文」については、評価が上乗せされます。
このように発展的基準では、基礎的基準で求められる最低限の体制・実績に加えて、研究・教育・医師派遣などの取り組みがどの程度実効性を持って機能しているかも評価される方向となっています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001714431.pdf(2026年7月24日閲覧)
(リンク元:厚生労働省webサイト「特定機能病院について」)
医師の働き方への影響
承認要件の見直しは、特定機能病院で働く医師のキャリア形成にも影響する可能性があります。
見直しにより、専攻医数や幅広い基本診療科の専門研修プログラムが重視されることで、若手医師にとっては教育体制の整った環境で研修を受けやすくなることが期待されます。専門医の育成拠点としての役割も一層強まるでしょう。
一方、地域医療への人的協力が明確化されたことで、大学病院本院などでは関連病院や地域の医療機関への医師派遣がより重視される見通しです。専門性の高い医療と地域医療の双方を経験できる機会となる反面、勤務地の変更や異動がキャリア・ライフプランに影響する場合もあります。勤務先を検討する際は、関連病院や派遣の方針も確認しておくとよいでしょう。
特定機能病院における業務の特徴

ここからは、特定機能病院で働く場合の業務内容や、そのほかの病院と比較した場合のメリット・デメリットについて見ていきます。
特定機能病院における医師の業務内容
医師の業務の基本は診療行為であり、これは特定機能病院であっても大きく変わることはありません。下記のような業務が挙げられます。
- 患者さんの診療
- カンファレンスへの参加
- 学会発表や論文執筆
- 研修医や学生の指導
ただし、特定機能病院の機能・目的に伴って、通常とはやや異なる性質の業務も発生します。おもな違いを見ていきましょう。
対象疾患の違い
特定機能病院は、その性質から希少・難治性疾患や重症例の患者さんが多く通院・入院する傾向があります。一般病院では実施されることの少ない検査や治療にあたる機会も多いでしょう。
教育の位置付けの違い
大学病院では、医学生の教育(学生講義や臨床実習)が業務内容に入ってきます。医学部卒業後は自大学で臨床研修を受ける医師が多いため、研修医教育も重要になります。
2026年の承認要件見直しでは、高度医療に関する研修体制や専門研修プログラムの充実も重視されており、次世代の医師を育成する教育機関としての役割も、より明確になったと言えるでしょう。
勤務医の人数の違い
所属する医師や他職種の人数が多いため、情報共有のためのカンファレンスが重視される傾向にあると言えます。また、高度な医療知識・技術が必要なことに加え、施設要件に論文数も含まれることから、医療内容や結果を学会講演や論文でアウトプットすることも求められやすいでしょう。
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特定機能病院で働くメリット
続いて、特定機能病院で医師として働くメリット・デメリットを考えてみます。
メリットとしては、下記のようなことが考えられます。
- 最新の医療に触れることができ、キャリアアップにつながる
- 学術的活動の機会が多い
- 医学教育に携わることができる
- 所属する医師数が多いため、多様な人材に出会える
高度な医療の提供や技術開発・教育が責務であるため、最新の医療に触れることで自身のキャリアアップを図ることができるでしょう。技術開発や論文執筆に関わることで、学術的評価が得られる可能性もあります。学生や研修医指導を通して、医学教育に携わることも可能な環境です。
また、医師の数が多いことで、さまざまなバックグラウンドの医師が存在し、多様性を学ぶことができるでしょう。専門性の高い医師が多いことから、高度な知識や技術を学び、スキルアップする機会が得られやすい環境と言えます。
特定機能病院で働くデメリット
一方で、下記のような点はデメリットと言えるかもしれません。
- 経験症例が偏る場合がある
- 雑務や会議などが多い傾向にある
- 所属医師・スタッフ数が多く、給与が低い傾向にある
- 関連病院や地域の医療機関への異動・派遣が生じる場合がある
専門性の高い治療を提供するため、入院・外来いずれも希少・難治性疾患が多い傾向にあります。このため一般的な疾患(common disease)の経験を積むことが難しいほか、経験できる症例が偏る可能性があります。
また、特定機能病院はいわゆる大病院であり、勤務するスタッフの人数が多いことから、意思決定のための会議や委員会の数・頻度が増える傾向にあると考えられます。医師も参加を求められやすい立場であり、人によっては負担に感じるでしょう。
医師数が一般病院より多いことで、タスク・シェアや他職種へのタスク・シフトが進みづらく、いわゆる雑務が多くなります。一方で大学病院をはじめとした特定機能病院は、一般病院と比較して給与水準が低い傾向にあります。
また、地域医療への人的協力が承認要件として明確化されたため、関連病院や地域の医療機関への異動・派遣が、勤務地や生活、ライフプランに影響する可能性も考慮しておきたいところです。
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特定機能病院で働くには

それでは、実際に特定機能病院で働くためにはどうすれば良いのでしょうか。
特定機能病院の多くを大学病院が占めるため、まずは大学医局に所属することが近道です。
その上で、高度医療を提供するための技術を持つ、最新の検査・治療に関する知識を積極的に吸収する、といった自己研鑽に励むことのできる人材であることが望ましいでしょう。医学研究にも携わるため、業界の現状や課題を把握し探求していくリサーチマインドを持つことも必要と言えます。
もちろん、どの医療機関で働く場合でも自己研鑽は必要ですし、リサーチマインドを持つことが望ましいのですが、特定機能病院にはそのような素養を持つ医師がよりふさわしいと言えるでしょう。
勤務したいと考えている特定機能病院が、現在所属している医局とは関連のない機関の場合は、医師向けの転職コンサルティングサービスを利用するのも選択肢の一つになると思います。まずは、希望する条件の求人募集がないか、サイトで探してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回は特定機能病院について見てきました。多くは大学病院本院が占め、高度な医療の提供や研究開発、教育に関する役割が求められる病院群です。高度な医療に携わることで、スキルアップやキャリアアップの機会が得られやすいと言えるでしょう。そのためには最新の医療を学ぶ姿勢や、より良い医療を提供するためのリサーチマインドが重要です。
2026年には承認要件の見直しが行われ、地域医療への人的協力や高度な医療提供などがより明確に整理されました。また、特定機能病院A・B・その他という類型が設けられ、診療報酬上も病院の類型や機能に応じた評価へ見直されています。
特定機能病院での勤務を検討する際は、それぞれの病院が担う役割や教育・研究体制、医師派遣の方針も確認し、自身のキャリアプランに合うかを検討すると良いでしょう。
このコラムが特定機能病院について理解を深める一助となれば幸いです。




