「産休・育休でしばらく休みましたが、以前と同じ働き方ができるか不安です」
「子育てで医師としてブランクがありますが、以前と同じ年収で働けるのでしょうか」
医療系の総合人材サービス会社である弊社では、女性医師からこのような悩みをご相談いただくことも少なくありません。出産や育児といったライフイベントで休職すると、復職後の待遇がどうなるのか不安に思うのは自然なことです。
結論から言えば、ブランクがあっても年収が下がるとは限らず、むしろ上がる可能性もあります。ご自身の強みを整理し適切に伝えることで、ブランクを感じさせない働き方を実現できるでしょう。
今回は、多くの先生や採用担当者と関わってきた弊社コンサルタントが「女性医師の復職の実態」や「年収を下げにくくするためのコツ」について解説します。「週4日勤務で1,200万円の条件で転職(復職)に成功した実際の事例と要因」、「年収の維持・アップさせやすい医療機関の特徴」もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

アドバイザー:T.S
2018年入社 担当エリア:関東
女性医師の復職で年収は下がる?実態と想定のギャップ

女性医師の復職で年収は下がるのか、まずは以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- 復職時の年収への不安はなぜ生まれるのか
- 自分の年収を低く見積もる女性医師が多い背景
- 復職時の年収が想定より上がるケース
復職時の年収への不安はなぜ生まれるのか
女性医師が復職に際して年収に不安を感じる背景には、いくつかの要因があります。
- ブランクによる臨床スキル低下の懸念
- 時短勤務などによる労働時間の制約
- 当直・オンコールが難しいことによる収入面の影響
- 医療機関側が育児中医師の採用に消極的なのではという不安
実際の市場では女性医師の需要は高く、条件交渉次第では想定以上の年収を得られる場合もありますが、そうした情報が十分に共有されていないことも不安の一因となっています。
医師不足が深刻化している現在、育児中の女性医師であっても高い需要があり、適切な医療機関を選べば想定以上の年収で復職できる可能性は十分にあります。まずは転職コンサルタントを通じて正確な市場価値や年収相場を確認することをおすすめします。
自分の年収を低く見積もる女性医師が多い背景
多くの女性医師が、育児との両立を重視するあまり希望年収を低めに設定してしまいます。
「時短勤務だから高い給与は望めない」
「ブランクがあるから年収は下がって当然」
こうした思い込みが、本来得られるはずの適正な年収を逃す原因となっている場合があるのです。その結果、医療機関側の立場を過度に配慮し、条件交渉を控えめにしてしまう場合があります。

例えば「週4日勤務なら年収800万円程度」と自己判断される方もいますが、実際には同条件で1,000万円以上を提示する医療機関も存在します。特に健診クリニックや訪問診療では、時短勤務でも高収入が期待できます。これらの医療施設では基本給に加えて診療件数による出来高制で給与が決まることも多く、以下のような理由から短時間でも件数をしっかり積める仕組みができています。
- 健診クリニック:フローが定型化されていて枠稼働率が安定
- 訪問診療:あらかじめ訪問先やルートが決まっており効率がよい
さらに、乳腺・婦人科などの女性領域や女性患者宅への訪問では女性医師の指名が入りやすく需要が多いことも、時短でも収入が落ちにくい要因になっています。年収の上限を決めつけず、高収入な求人にも目を通すようにしましょう。
復職時の年収が想定より上がるケース
面接では希望条件を伝えるだけでなく、実際の業務内容に関心を持って質問しながら、長期的に働く意欲を示すことで、採用側に好印象を与えられます。こうした姿勢は「即戦力」や「定着の見込み」として評価されやすく、年収が想定よりも上がるケースがあります。
具体的な質問としては、
「1日あたりの患者数や注力されている領域について教えてください」
「当面は16時までの時短勤務を希望しますが、子どもの成長に合わせて勤務時間を延ばし、外来枠の拡大や当直にも対応していきたいと考えています。」
など、業務内容に関心を持ち、組織のニーズを理解しながら長期的な勤務意欲を伝えると良いでしょう。採用側は「現場理解が早く、長く貢献してくれる人材」と判断しやすくなります。

希望条件の提示や時短勤務の実績といった環境面は事前に転職コンサルタントに依頼して確認してもらうとよいでしょう。医療機関との条件交渉を代行してくれるだけでなく、育児中ならではの制約事項も採用側へ伝えられるため、入職後のトラブルを防ぎやすくなります。ご自身で交渉するよりも、有利な条件を引き出せる可能性も高まります。
女性医師のブランク年数が年収に与える影響

ブランクの期間が長いほど、年収にどのような影響を与えてしまうのか気になる先生もいるでしょう。ここからは、以下のパターンにわけて詳しく解説します。
- ブランク期間が1~3年の場合
- ブランク期間が4年以上の場合
ブランク期間が1~3年:年収への影響は少ない
ブランク期間が1~3年程度の短期間である場合、年収への直接的な影響は比較的小さいとされています。専門医資格を維持できていれば、フルタイム換算での年収が大きく下がることは少ないようです。医師歴をベースに年収が決定される医療機関も多く、ブランク期間そのものが年収を左右する決定的要因にはなりにくいでしょう。
ブランク期間が1~3年でも年収が10%程度下がる場合がありますが、これは主に当直回数の減少などの勤務条件の変更によるものです。医師としての基本的な評価は維持されているケースが多いため、過度な心配は不要と言えるでしょう。前職の給与水準が明確であることや、専門医資格を取得していれば、それらを適切にアピールすることで年収の大幅な低下を防げます。
ブランク期間が4年以上:年収に影響が出る場合がある
ブランク期間が4年以上の長期にわたる場合、専門医資格の更新や最新の医療知識のアップデートが求められるため、復職当初の給与水準が前職を下回る可能性があります。特に外科系や手技が多い診療科では技術の維持が難しく、臨床経験がほぼゼロに近い状態からの再スタートとなるケースも見受けられます。
このような場合、常勤での復職は書類審査が厳しくなる傾向にあり、非常勤からスタートする方が本人と医療機関、そして患者さまにとっても望ましい選択となる場合が多いでしょう。実務経験を積みながら、徐々に給与水準を前職レベルまで回復させていく形になります。
【転職コンサルタントが解説】復職をする際に年収を維持・アップさせやすい医療機関の特徴
具体的にどのような医療機関なら復職後も高年収を維持・アップさせやすいのでしょうか。転職コンサルタント目線で見ると、次のようなタイプの医療機関は復職先として有力な選択肢になります。
クリニック・健診機関
もっとも多くの先生が復職先としてイメージするのが、健診クリニックや人間ドックを中心とした医療機関ではないでしょうか。当直やオンコールがなく、時短勤務にも対応しやすい環境が整っていることが多く、育児中の先生にとっては働き方の柔軟さが魅力と言えます。
美容医療・自由診療
診療時間が比較的安定しており夜間勤務がないため、生活リズムを整えやすいことが特徴です。年収面では自由診療は保険診療に比べて単価が高いため、年収も高くなる傾向があります。接遇や専門知識の習得が求められる場合もありますが、対人スキルを活かしたい先生には適した環境と言えるかもしれません。
特定の専門病院
特定の専門病院(内視鏡専門クリニックなど)は、専門性を磨きたい先生にとって有力な選択肢となります。専門医資格の取得やスキルアップにつながりやすく、キャリア形成を重視したい先生におすすめの環境です。需要の高い分野では高待遇が期待できる点も大きな魅力と言えるでしょう。
地域の基幹病院
地域の基幹病院は、医師数が多く初期研修医を受け入れている大規模な病院です。年収は水準的であることが多いものの、復職する環境としては非常に整っています。複数診制が導入されているため休みを取りやすいのが特徴で、子育てや家庭との両立を考える先生にとっては心強い環境と言えます。
また、常勤としてキャリアを積み直しやすく、専門医取得の支援が受けられる点も魅力です。長期的なキャリア形成を見据えた復職先として適しているでしょう。

小規模クリニックでは「即戦力」としての働きを求められることが多く、ブランクがある場合は負担になりやすい傾向があります。その点、基幹病院はより柔軟に対応してもらえる可能性が高く、安心して復職に踏み出しやすい環境です。
訪問診療
訪問診療はあまり馴染みがないと感じる方もいるかもしれませんが、復職後の選択肢として非常に魅力的です。訪問先がある程度決まっているため時間の管理がしやすく、夜間対応がなければ育児との両立もしやすい働き方が可能です。
需要が高い分野であることから年収も上がりやすく経験を問われにくい点も特徴で、ブランクがある先生にとっても取り組みやすい分野と言えるでしょう。
週4勤務で年収1,200万円!復職を成功させた事例

36歳・内科の女性医師 イトウ先生(仮名・専門医資格なし)が、復職に成功した事例を紹介します。この先生は、後期研修終了直後に出産のために休職。年子で二人目を出産した後、下の子が1歳になってからスポット勤務を開始しました。
転職(復職)時に描いていたキャリアは「時短勤務に対応できる健診クリニックで外来も担当しながら、予防医学を学んでいきたい」というものであり、希望していた条件は、
- 週4日勤務・当直なし
- 健診や人間ドック中心の業務
- 年収はブランクを考慮し800~900万円を想定
慎重に希望を絞り込みつつ、理想をやや低めに見積もっていた状況でした。しかし実際には、週4日勤務・当直なし・年収1,200万円という好条件での復職が決定。本人の想定を大きく上回る結果となりました。
復職の成功要因
今回の復職が高条件で実現できた背景には、次の2つの要素があると言えます。
- 経験よりも「意欲」と「方向性」を具体的に示したこと:専門医資格はなかったものの、後期研修での臨床経験を踏まえて「健診業務を通じて予防医学に貢献したい」という今後の学び意欲を面接で明確に伝えた
- 面接前の情報共有と事前交渉がスムーズだったこと:転職コンサルタントが、育児中ならではの制約(保育園送迎時間・夜間勤務不可など)を事前に医療機関へ伝えていたため、条件面でのすれ違いがなく、最初から前向きな交渉ができた
このように、この先生は「現状の制約よりも、これからどう働いていきたいか」を明確に描いていました。面接ではこの前向きな姿勢が伝わり、結果として好条件での復職につながったと言えます。

面接では、これまでの経験をただ列挙するよりも「これからどう成長していきたいか」を明確に伝えることが重要です。 医療機関は「現状のスキル」だけではなく「今後どの方向に伸びていく医師なのか」を重視しています。
例えば今回のように、
「健診業務を通じて予防医学の知見を深めたい」
「地域医療の現場で慢性疾患のフォローアップや在宅支援に関わりたい」
といった将来像を具体的に言葉にできると印象が良くなります。
また、育児や家庭との両立による制約(勤務時間・当直不可など)がある場合は「代替案」や「前向きな見通し」とセットで伝えるのが効果的です。
例えば、
「夜間勤務は難しいですが、朝の外来枠や早番シフトには柔軟に対応できます」
「現在は保育園の送迎があるため夕方の勤務は難しいのですが、子どもが小学校高学年になる頃には勤務時間を延ばしたいと考えています」
このように「対応できないことを正直に伝えること」と「これから広げていきたい働き方」の両方を伝えることで、医療機関にも前向きにキャリアを築いていく姿勢が伝わります。また、こうした情報は今回の事例のように事前に転職コンサルタントへ共有しておくと、面接時の条件調整がよりスムーズに進みます。
復職を考える女性医師が年収以外で特に重視する条件

復職にあたり、多くの先生が重視する確認事項には以下のようなものが多い傾向にあります。
- 勤務時間と残業の程度
- 当直 / オンコールの有無
- 院内保育の有無と質
- 休暇の取得しやすさ
- 物理的な環境(更衣室や院内の清潔さ)
- 育児中の先生が働いているか
- 医療機関のフォロー体制
中でも「勤務時間と残業の程度」は大きな関心事です。お子さんの送迎時間に間に合うか、急な残業がないかどうかは、家庭と両立できるかを左右します。当直やオンコールの有無も同様に、多くの先生が気にされる点です。
お子さんが小さいうちは院内保育の有無についても重視される先生が多いです。さらに、同じように育児中の先生がいると、助け合いや理解を得やすく、時短勤務でも気兼ねなく働けるのではないかといった声が聞かれます。

求人を検討する際は「仕組みや制度があるか」だけでなく、その運用や実際の雰囲気まで確認しておくことが大切です。例えば院内保育であれば、預かり時間は何時までか、病児保育にまでカバーされているかをチェックするようにしましょう。院内保育がなくても提携先の保育施設がある場合もありますので、よく確認するようにしてください。
また休暇や時短勤務の取得実態は制度だけでは判断できません。実際にどの程度柔軟に利用できるか、経営層や院長の考え方、職場の風土によっても大きく異なります。こうした情報は求人票には載っていないため、転職コンサルタントを通すと確認がしやすいでしょう。
女性医師が復職先を選ぶときにチェックしておきたい項目

復職先を検討する際には、年収の高さだけでなく安心して働き続けられる環境かどうかも重要です。求人票や面接の場面で、次のような点を確認しておくと判断材料の一つになります。
- 短時間勤務制度や短時間正規雇用制度の記載がある
- 就労支援事業を取り入れている
- 民間機関の女性医師サポートを受けられる
- 男性医師の育児休業取得率が高い
短時間勤務制度や短時間正規雇用制度がある
短時間勤務制度や短時間正規雇用制度が整備されている医療機関では、勤務時間を柔軟に調整しながらも正規雇用としての待遇を受けられる環境があると考えられます。非常勤ではなく正規雇用として働けるため、福利厚生やキャリアアップの機会も確保しやすく、長期的な視点でのキャリア形成ができるでしょう。
就労支援事業を取り入れている
医師の就労支援事業に積極的に参加している医療機関は、女性医師のキャリア継続を組織的にサポートする体制が整っている可能性が高いと考えられます。
例えば、復職支援研修プログラムの提供やメンター制度の導入など、具体的な支援策を実施している医療機関では、ブランクがある医師でも安心して復職できる環境があると言われています。長期的なキャリア形成を見据えた働き方が可能な場合が多いでしょう。
また、各都道府県・自治体では、女性医師が仕事と家庭を両立しやすい職場環境を整えて再就業の促進をするため、病院や医師会に相談窓口を設置しています。国の推進もあって、院内保育所についても2020年には43.8%と増加傾向にあります。場合によっては近隣の託児施設を提携している場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
民間機関の女性医師サポートを受けられる
女性医師を対象とした民間のサポート機関と提携している医療機関は、女性医師の働きやすさ向上に真剣に取り組んでいると言えます。キャリアカウンセリングや復職支援研修、育児相談など、多様なサポートを受けられる環境があれば、復職後も安心して働き続けられるでしょう。例えば、日本医師会が運営している「女性医師支援センター」では、以下の支援を実施しています。
- 都道府県医師会と協力のもと講習会を開催
- 女性医師の相談窓口の設置
- 託児サービス併設の促進や補助
- 職業紹介事務所や就業先の紹介
- 医師確保の支援
第三者機関のサポートを利用できる体制が整っていると、職場内では相談しにくい悩みについても適切なアドバイスを得られる可能性があります。こうした包括的な支援体制が整っている医療機関を選ぶのも、年収を維持・向上させるためのポイントです。
男性医師の育児休業取得率が高い
男性医師の育児休業取得率が高い医療機関は、育児と仕事の両立に対する理解が組織全体に浸透していると考えて良いでしょう。性別に関係なく育児支援を行う文化が根付いている職場では、女性医師が育児を理由に休暇を取得したり時短勤務を選択したりすることに対しても、周囲の理解と協力を得やすい環境が構築されている可能性が高いと言えます。
こうした医療機関では、育児中の医師を特別扱いするのではなく、誰もが働きやすい環境作りを目指している傾向にあります。結果として、女性医師が罪悪感を持つことなく育児と仕事を両立でき、高いモチベーションを維持しながら診療に従事できるでしょう。
復職における年収の悩みは転職コンサルタントに相談しよう!

女性医師の復職において、年収への不安は多くの方が抱える悩みですが、キャリアへの適切な準備と戦略があれば想定以上の条件で復職するのも可能と言われています。自分の市場価値を過小評価せず、育児との両立を支援する医療機関を選び、高年収と働きやすさの両立を目指してみましょう。
ただ、自分一人では難しい面もあるため、転職コンサルタントのサポートを活用し、年収だけでなく勤務条件や職場環境も含めた総合的な視点で復職先を検討することをおすすめします。
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