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インタビュー 公開日:2021.11.12

「仕事と家庭を両立するならサステイナブルな働き方を」女性医師の結婚・育児とキャリア<産婦人科医・稲葉可奈子先生>

「仕事と家庭を両立するならサステイナブルな働き方を」女性医師の結婚・育児とキャリア<産婦人科医・稲葉可奈子先生>

厚生労働省の調査によると、全医師における女性医師の割合は、年々増加傾向にあります。それに伴い、「医師としてのキャリアを大切にしながら、家族との時間もより充実したものにしたい」と考え、仕事と家庭の両立を目指す若手女性医師も増えてきました。

産婦人科医の稲葉可奈子先生は4児の母、「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」代表として、多分野で活躍されています。結婚や妊娠・出産などのライフイベントとHPVワクチン啓発活動に対して、稲葉先生はどのような考えで臨まれたのでしょうか。結婚や妊娠・出産に対する考え、臨床現場に復帰する際に重視した条件、「みんパピ!」設立の経緯と活動に込めた思いについてお話を伺いました。

結婚を機にキャリアを諦めるつもりはなかった

キャリアで結婚を諦めるつもりはなかった

稲葉先生は初期研修中にご結婚されたと伺いました。研修中でお忙しい時期だったと思うのですが、このタイミングでご結婚を決断された理由についてお聞かせください。

この時期を選んだというよりも、相手と出会い、結婚まで話が進んだのが、この時期だったからです。結婚自体をためらうような理由は全くありませんでした。

結婚も妊娠と出産も、人生の一大イベントですよね。妊娠と出産はその後の育児期間を含めて、勤務形態や就業時間などに影響を与えます。一方で、結婚そのものは住居が変わり通勤事情などが変化することはありますが、それ以外の影響は実はそれほど多くありません

お子さまについては、どのように考えていらしたのですか。

結婚と同じように、恵まれるのであれば子どもは欲しいと思っていました。結婚後も、子どもをもつことについての考え方は変わらなかったです。

そうだったのですね。出産後は育児で忙しくなりますが、育児に専念するためご自身のキャリアを中断しようとは考えなかったのですか?

産婦人科医としての仕事が大好きですし、そもそも仕事と育児は両立できると思っていたので、出産を機に仕事を辞めて育児に専念しようとは考えていませんでした

夫と衣食住はもちろん、仕事と育児に対する価値観もマッチしていると感じたことも大きかったです。

周囲の理解に助けられ、何事もポジティブな思考に転換

稲葉先生は大学院在籍中に一人目のお子さまをご出産されていらっしゃいます。産後どのくらいで研究に戻られたのですか?

産後2週間ほどです。「本当はもっといろいろなことができるし、やりたいのに」と心の中で思いつつ、そのときの自分にできることを少しでもやろうと目の前の研究に注力していました。

産後2週間で復帰されるとは、ものすごいバイタリティですね!

無理して早く復帰したわけではなく、もともと元気なのもあり、ありがたいことに産後の体調もよく、研究する余力があったので。無理してまで復帰するものではないと思いますし、産後の体調は本当に人それぞれなので、それぞれのペースでよいと思います。また、産婦人科は女性医師の数が多いことと、婦人科診療や出産に関わる機会が多い環境であることから、女性医師の出産や育児を好意的に受け入れる土壌が整っています。なので、妊娠中・育児中でもバリバリ活躍している先輩の女性医師は多かったです

学業と育児を両立するにあたり、当時辛いと感じたことはありますか?

それが、辛くて耐えられないなどの育児に対して極端なマイナス感情を抱くようなことは、全くありませんでした。大学院生は研究スケジュールを自分で調整しやすかったことも大きいです。

もともと「心配事があっても、状況に応じてうまく対応すれば乗り越えられるだろう」というマインドだったので、育児に対しても「仕事と両立できるよう頑張ろう」と前向きに考えていました。問題にぶつかったら都度立ち止まって考えるというよりも、一歩でも歩みを進めながら対処方法を考えて、さらに次の一歩を踏み出そうというイメージですね。

環境と周囲からの理解に助けられたことと、何事もポジティブに向かい合おうとする性格だったので、学業と育児を両方満喫できたと考えています。

二人目以降は、どのように仕事と育児を両立されているのですか。

今は東京大学の医局の関連病院に勤務しており、日中は子どもを保育園に預けてお迎えに間に合うように仕事を終わらせています。仕事終わりに我が子と会うと、どれだけ疲れていても元気が湧いてきます。

夫は会社員で毎日夜遅くまで働いていますし、実家もすぐ頼れる距離ではないので、平日夜の育児はワンオペです。急に熱が出てお迎えが必要になったときには、夫と相談してスケジュール調整することもあります。

お互いの職場が育児に対して理解があることと、「育児中はそういうこともあるよね」と快く送り出して下さるほかの先生方には本当に感謝しかありません。

家庭内と職場内それぞれで支え合いながら育児をされているのですね。昨年からコロナウイルス感染症が流行していますが、子どもとの関わり方に与えた影響はありますか?

どこの家庭も同じとは思いますが、人混みへの外出は控えるようになりました。上の子どもたちは家庭以外に学校や保育園でも説明を受けているのか、給食の時にしゃべらない、マスクをつけること、感染流行中はお出かけが難しいことなど理解してくれています。そういった変化で子どもがストレスを感じていないかなどには気を配るようにはしています。

また、家庭では、気をつけてほしいことは引き続き意識してもらいつつ、コロナを過度に怖がりすぎることのないよう教えています。

仕事と育児の両立で大切なのは持続可能性

仕事と育児の両立で大切なのは持続可能性

これまでは、ご結婚と育児に対するお考えを伺ってきました。次に、稲葉先生が歩んでこられたキャリアをお聞かせください。

高校生の頃は研究に興味があったのですが、医学部生時代の病院実習がきっかけで、臨床現場に強く惹かれるようになりました。実習を通して臨床の仕事の魅力を知り、私の性格も考えた結果、臨床医の道を選択しました。

産婦人科を選んだのは、スペクトラムの広さがとても魅力的だったためです。産婦人科では内科診療もすれば手術を行うこともあります。周産期医療のように、産婦人科だから関わることができる診療もあります。なにより、月経、妊娠、出産などのウィメンズヘルスの悩みを抱える患者さまに対して、同じ女性であり経験者として寄り添えることは、診療時アドバンテージになると考えました

結婚を機に上京して東京大学の医局に所属し、関連病院での勤務ののち大学院生として基礎研究に従事しました。そして、大学院の後半から関連病院へ勤務しました。

医局から関連病院へ派遣される際は、要望などは伝えていましたか?

最低限、現実的に勤務できるために必要な条件だけお伝えするようにしています。それは置かれている環境によって異なりますが、私の場合、まだ子どもが小さいですし平日はワンオペなことから、時間外業務や当直は難しい。なので、仕事と育児を両立できるよう、定時退勤しやすく当直業務のない職場を希望しました

復職されるにあたり感じたことや印象的だったことについてお聞かせください。

仕事には、頑張ればどうにかできることと、そうでないことがあります。どうしてもできないことに直面した際は、できないことを悔やむのでなく、自分のなかで折り合いをつけて今の自分にできることを頑張ろうと思っています。当直業務などできない代わりに、日中の診療にしっかり専念することで自分に与えられた責務を果たしています。

あとは、仕事と育児を両立するには周囲からの理解とサポートが重要だと痛感しました。理解をしてくれる職場には本当に感謝しています。それを当たり前と思わずに、できることは最大限努力することと、逆の場合も助け合うことが大切だと思います。

この記事の読者のなかには、育休・産休からの現場復帰を検討している女性医師もいると思います。稲葉先生からアドバイスはありますか?

育児に対する考え方と家事分担の内訳はご家庭ごとに異なります。勤務形態や当直可否などの条件がアンマッチな状態で働き続けることは過度な負担を招きます。サステイナブル(持続可能)な働き方を実現するためにも、ご自身が求める条件とその優先順位を事前に確認することが重要です。そして、必ずしも要望が通るとは限りませんが、伝えないことには状況を把握してもらえないので、医局に所属している場合はしっかりと要望を伝えるのがよいと思います。

家庭やご実家からのサポートを見込めるなら、ご自身が経験を積みたい診療をできる現場を希望するなど、復職をキャリア形成のネクストステップにするのも選択肢のひとつだと思います。

「HPVワクチンもう接種しましたか?」からはじめる女性のQOL向上

稲葉先生が代表理事を務める「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の取り組みについて、ご多忙ななかで新しい取り組みを始めようと思ったきっかけと、活動に対する思いをお聞かせください。

日本におけるHPVワクチンや子宮頸がん予防について、産婦人科医としてどうしても見過ごすことができず、数年前から個人的に啓発に取り組んでいました。産婦人科医だけからの啓発では限界があると感じていたころ、これらの問題に対し社会全体で関心をもつ方が増え始めたことと、問題意識をもつ小児科や公衆衛生を専門とする医師が集まったことを受けて「みんパピ!」を立ち上げました。

子宮頸がんは好発年齢が比較的若く、20〜30代の女性が子宮頸がんのために結婚や妊娠を経験する前に子宮を手放すだけでなく命を失ってしまうこともあるのです。まだ小さい子どもを残して亡くなってしまうこともあるため、子宮頸がんは「マザーキラー」と呼ばれることもあります。

世界を見渡すと、子宮頸がん撲滅まであと一歩というところまで進んでいる国もあります。しかし日本では、HPVワクチン接種率も子宮頸がん検診受診率も低く、子宮頸がんおよび前がん病変の件数は減っていないのが現状です

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、子宮頸がんおよび前がん病変以外に、男性の中咽頭がんや肛門がん、性感染症の尖圭コンジローマなど、さまざまな病気を引き起こすことがわかっています。HPV感染は防げることを知ってもらうと同時に、一人でも多くの方にHPVワクチンについて正確な情報を知ってもらいたく、「みんなで知ろう」を合言葉に啓発活動を行っています。

HPVワクチンを知らない方なら知るきっかけに、知っている方ならピンとくるキャッチフレーズですね。稲葉先生は、今後どのようなキャリアを歩みたいとお考えですか?

日本はHPVワクチン接種率が長年1%未満だったのがようやく少し増えてきたところで、まだまだみなさんにちゃんと知ってもらうための働きかけが必要です。いずれは日本でも子宮頸がんが撲滅されることを目指して、課題とやりたことはたくさんありますが、今は育児の時間も必要な時期なので、仕事と家庭を両立させながら、HPVワクチン啓発活動を続けます。

将来的には、女性のヘルスリテラシー向上にも注力していきたいです。生理痛は我慢しなくていい、臨まない妊娠をしないですむ方法など、知っていれば現状を改善しうる女性のヘルスケア問題はたくさんあります。生理にフォーカスしたテレビ番組が昨年はじめて地上波で放送され出演させて頂いたのですが、世の中の関心の高まりを感じています。「女性はもっと快適に過ごしていいんですよ」と、一人の女性として産婦人科医として世間に情報発信していきたいです。

最後に、この記事を読んでいる若手女性医師に向けてメッセージをお願いします。

医師は病院で診療するのが仕事、と思われがちです。しかし実際には、医薬品が適切に使用されるよう医学的な専門知識を専門機関で活かしたり、厚生労働省で医療政策に携わったり、医師が活躍できる場所は医療機関以外にもたくさんあります。医師がさまざまな場所で活躍すると、日本の医療はもっとよくなっていきます。

これから先、仕事と家庭を両立させたい医師が増えてくるでしょう。バランスのとれた働き方やキャリアプランを模索する中で悩んだときには、少し視野を広げアンテナを張ってみてください。

稲葉可奈子先生の写真

稲葉可奈子(いなば・かなこ)先生

医師・医学博士・産婦人科専門医。京都大学医学部卒業後、東京大学大学院で博士号取得。現在は関東中央病院産婦人科勤務。4児の母。HPVワクチン接種や子宮頸がん予防の啓発を中心とするプロジェクト「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」の代表を務める。

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稲葉可奈子
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