診療や当直、学会準備などで多忙な毎日を送る中、「趣味に割く時間がない」「休日は寝るだけで終わってしまう」と感じている医師の先生方も多いのではないでしょうか。
しかし、最近はバーンアウト対策やQOL向上の観点から、「医師こそ趣味を持つべき」という考え方も注目されています。趣味は単なる息抜きではなく、ストレス軽減や仕事の集中力アップ、キャリアを長く続けるうえでの"投資"とも言えるからです。
このコラムでは、医師にとって趣味が重要な理由や、医師に人気の趣味、履歴書で好印象を与える趣味の選び方について解説します。筆者自身の経験も交えながら、医師が取り組みやすい具体例も紹介します。
「毎日が仕事で終わってしまう」「もっと自分の時間を大切にしたい」と感じている人は、ぜひ読み進めてみてください。あなたの働き方を変えるきっかけが見つかるはずです。

執筆者:Dr.SoS
医師にとって趣味が重要な理由
まず、医師にとって趣味を持つことが重要かどうか、考えてみましょう。
医師における趣味には、ストレスを解消することで「バーンアウト」(燃え尽き症候群)を防ぐ"守りのメリット"と、仕事にプラスの作用を与える"攻めのメリット"の両方が期待できます。
気分転換・ストレス解消になる
近年「医師の働き方改革」が進められているものの、医師は業務時間が不定期になりやすく、長時間労働が問題になることも多い職業です。
患者さんの生死にかかわる場面も多いため、その職業柄、精神的なプレッシャーやストレスを感じやすい仕事だと言えます。
こうした状況から、ときには休職や、最悪の場合過労死に至るケースも存在します。
たとえば厚生労働省が2018年に実施した調査では、臨床研修医の約1.2%*1が研修の中断を経験しています。これは医学部の1クラス(約100人)に1人程度存在する計算になり、決して珍しいことではないと言えるでしょう。
趣味を持ち、医師としての責務から一時的に離れる時間を作ることは、気分転換やストレス解消につながります。また、休職やバーンアウトのリスクを減らす効果も期待できるでしょう。
臨床研修の中断・未修了について|厚生労働省 平成29年度第3回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(2018年1月)(*1)
令和8年度からの私立大学医学部の収容定員の増加に係る学則変更認可申請一覧│文部科学省
└大学別医学部入学定員一覧
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仕事に良い影響を与え得る
「趣味に時間を使うと、本業の勉強やスキルアップに使える時間が削られるのでは?」と心配になるかもしれませんが、趣味は仕事にも良い影響をもたらすと考えられます。
たとえばアウトドアなど体を動かす趣味は、睡眠の質や体力の向上につながるため、手術や外来などの集中力が必要な日常業務にも役立つでしょう。
文章作成や動画サイトへの投稿などのインドアな趣味は、思考の整理やアウトプット力の向上に役立ち、カンファレンスや学会発表、患者さんに対する説明がスムーズになるなどの効果が期待できます。
実際に医師を対象とした調査では、趣味が充実しているほど職業意識やエンゲージメントが高いという報告*2があります。
医師に人気の趣味を紹介

ここでは、医師に人気の趣味を具体的に見ていきましょう。
「アウトドアかインドアか」、「1人でできるかみんなで楽しむか」という2つの軸で整理していきます。
アウトドア×1人でできる趣味
まずは、体を動かすことでリフレッシュでき、運動習慣も身に付けられる個人向けの趣味を紹介します。
具体的には、ランニングやジョギング、ハイキング・登山などが挙げられます。とくにランニングはノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生や、京都大学皮膚科教授の椛島健治先生など、著名な医師にも人気な趣味です。
より気軽に取り組める例として、筆者がリリース当初から10年ほど続けている位置情報ゲーム「ポケモンGO」(Niantic, Inc.、株式会社ポケモン)もおすすめです。ゲームを楽しみながら歩くモチベーションを維持することも、アウトドアな趣味の一つと言えるでしょう。
【所外活動】山中伸弥所長が東京マラソンを完走しました│京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
【リレーエッセイ】危険と遊びに満ちたUTMBへの冒険(医学専攻皮膚生命科学講座皮膚科学椛島健治教授)│京都大学大学院医学研究科・医学部
『ポケモンGO』公式サイト
アウトドア×交流を楽しむ趣味
仲間と一緒に体を動かして楽しめる趣味もあります。
具体的には、ゴルフやテニス、ラグビーやサッカーなどが挙げられます。
とくにゴルフは開業医やベテラン医師だけでなく、若手医師にも人気です。ゴルフはほかの人と時間をかけてコースを回るためコミュニケーションを取りやすく、親睦を深めるのにも適したスポーツです。安倍晋三元首相とドナルド・トランプ米大統領が「ゴルフ外交」で親しい関係を築いたエピソードは有名でしょう。
また、ゴルフは用具の準備やプレー代などの費用がかかる分、個人年収や世帯金融資産が多い層に人気な傾向があると言われています。
既知の医師同士の仲を深められることに加え、他業種のハイクラス人材と接する機会も得られる趣味と言えるでしょう。
インドア×1人でできる趣味
自宅などでコツコツ続けやすい趣味も幅広くあります。
たとえば、読書や映画・演劇の鑑賞、文章作成(ブログなどの運営)、イラスト作成など体力的な負担が少ないものから、筋トレやエアロバイクなど体を動かすものまでさまざまです。近年は資産運用やポイ活など、実用的な趣味に取り組む医師も少なくありません。
とくに筋トレでは重量や回数、資産運用では資産額や収益など、目標を数値化しやすいのも特徴です。このため続けやすく、習慣化しやすい趣味と言えるでしょう。筆者も最近はジムに通って運動記録をつけたり、食事や体重・体脂肪率の推移をグラフ化したりするなどの工夫をしています。
また、このコラムのような文章を書くことも、趣味の一つと言えるかもしれません。
インドア×交流を楽しむ趣味
インドアの趣味でも、ほかの人と一緒に楽しめるものがあります。
たとえば、合唱や楽器演奏・音楽サークルのほか、料理やワイン会、オンラインゲームなどが該当します。
こうした趣味はアウトドアな趣味と比べて体力的な負担が少なく、本業が忙しい場合や年齢を重ねても続けやすいのが特徴です。とくに料理やワインにこだわりのある医師は多いため、会話のきっかけとしても役立つでしょう。
学会や講演会などで全国を訪れる機会の多い医師であれば、現地の食事や旅館・温泉を開拓して見識を広げるのもおすすめです。
履歴書の自己PRにつながる趣味

履歴書には趣味や特技の記載欄が設けられており、どのように記載すれば良いか悩む人も多いのではないでしょうか。
ここでは、自己PRにつながる趣味の書き方について考えてみましょう。
交流が伝わる趣味
まずは、コミュニケーション力をアピールできる趣味は定番と言えるでしょう。たとえば、ラグビーやテニスなどのチームスポーツや、合唱・バンド活動などは共同で行うため、他者と協力する力が培われます。
履歴書には「医局メンバーと月に2回フットサルを行い、地域の大会にも出場しています」など、具体的な頻度やかかわり方を書くと、「この先生なら就職先でも良い人間関係を築けそうだ」と評価されやすくなるでしょう。
自己管理が伝わる趣味
1人で楽しむ趣味の場合は、自分のコンディションや時間を適切にコントロールできる力をアピールすると良いでしょう。
たとえばランニングであれば、下記のような目標設定が考えられます。
- 下肢の筋力を高めるため、週1回ウェイトトレーニングをする
- 月間300 kmを目標に走る
- 目標タイムを設定した上で年2回マラソン大会に参加する
このように計画を立てて地道に実行し、成果を上げていれば強力な自己PRとなるでしょう。
面接でも「自己管理ができて継続的に努力できる先生」といった印象を与えやすく、活躍への期待につながるかもしれません。
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趣味の時間をどう確保するか
趣味の重要性や具体例がわかっていても、「時間が確保できない」と悩む人も多いでしょう。ここでは日常生活の中でできる工夫や、それでも難しい場合の働き方の見直しについて紹介します。
有給休暇・研究日や隙間時間の活用
いきなり大きく生活を変えるのは難しいかもしれませんが、少しずつ趣味のための時間を作ることは可能です。
たとえば当直明けの日は午前中に睡眠時間を確保して、午後は趣味に充てるのも一つの方法です。学会に参加する場合は前後に有給休暇を利用して、旅先で観光やグルメを楽しむのも良いでしょう。
勤務先によっては「研究日」が設けられていることがあります。アルバイトや外勤が入る場合も多いかと思いますが、昼休みに近所のお店のランチを開拓したり、エアロバイクやストレッチなどの軽い運動を取り入れたりするのも選択肢の一つです。
また、隙間時間の活用も、趣味の時間を確保するための重要な戦略です。なんとなく残業してしまうことが多い人は、定時で帰ることを心がけることで、帰宅後にギター練習をするなど趣味を楽しむ時間を作れます。通勤中についSNSを眺めてしまう習慣があれば、その時間を電子書籍での読書に充てることも一案です。
タイムブロッキング
「趣味は余暇時間で」が理想ではありますが、実際はなかなか時間を取れないことが多いかと思います。
そこで、意識的に趣味の時間を割り振る「タイムブロッキング」という手法がおすすめです。たとえば「毎週金曜日の18~19時はジムで運動する」など、あらかじめカレンダーに趣味の時間を入れておきます。
"元気があればやる"のではなく、予定として組み込むことで習慣にしやすくなります。
働き方や環境の見直し
職場が人手不足で日常臨床の負担が重い、あるいは有給休暇が取りづらい文化が根強いなど、個人の工夫では趣味の時間を確保できない場合もあるでしょう。
このような場合は趣味を諦めるのではなく、働く環境を変えて趣味の時間を確保するのも一つの選択肢です。
たとえば、下記のような方法が考えられます。
- 当直や残業の少ないクリニックに転職して、平日夜の時間を確保する
- 勤務地を変えて通勤時間を短縮し、朝活をする
- 週4勤務に変更して、週1日は趣味に投じる時間を作る
もちろん理想通りの職場が見つかるとは限りませんが、現在の環境で趣味の時間を増やすことが難しいと感じている人は、転職を検討してみるのも良いでしょう。
まとめ

医師や医学生にとって、趣味は「ぜいたく品」や「無駄な時間」ではなく、心身の健康や仕事の質、キャリアの持続可能性を支える大事な"インフラ"と言えます。
リフレッシュすることで仕事にも良い効果が期待でき、「医師としての自分」から一時的に離れることで得られるメリットは多数あります。ゴルフや旅行、グルメなどは定番ですが、多忙な業務の合間にできるランニングやジム通いなども根強い人気があります。
医師の仕事に没頭していると、趣味の時間を確保するのが難しいと感じることもあるかもしれません。まずは意識的に時間を作るよう心がけることが、充実した毎日への第一歩になるでしょう。
趣味を楽しめる医師は、患者さんにも優しくなり、自分にも余裕が持てるようになります。自分の「好きなこと」を大切にしながら、自分らしい医師人生と働き方をデザインしていきましょう。



