2026(令和8)年度診療報酬改定において、医療DXに関連する加算の仕組みが大きく見直されました。従来の「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」は再編され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられています。
今後は、オンライン資格確認やマイナ保険証、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどをどれだけ診療に活用できているかが、これまで以上に重要となるでしょう。
このコラムでは、2026年度診療報酬改定における医療DX加算の変更点を整理し、新加算の方針や点数、施設基準、算定に向けた実務上のポイントを解説します。

執筆者:Dr.SoS
医療DXの概要と、診療報酬上の従来の位置付け
医師の働き方改革のもとで業務効率化が求められる中、「医療DX」(DX:デジタルトランスフォーメーション)はますます注目され、具体的な取り組みが加速しています。2024(令和6)年度の診療報酬改定でも医療DXは重視され、「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が新設されました。まずはこれら2つについて、簡単に整理しておきましょう。
医療DX推進体制整備加算は、デジタル技術によって医療の質を高める体制を評価してきた項目です。2025年4月からはマイナ保険証の利用率や電子処方箋の導入状況により、加算1〜6の区分(初診時に8〜12点)で運用されてきた経緯があります。
医療情報取得加算は、オンライン資格確認(オン資)を通じて得られる患者さんの薬剤情報や健康診断結果などを活用し、質の高い診療を提供する体制を評価してきた項目です。こちらは2024年12月の健康保険証の新規発行停止に伴う見直しを経て、初診時1点・再診時1点(3カ月に1回)という仕組みで運用されてきました。
令和8年度診療報酬改定の基本方針│厚生労働省
医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて|厚生労働省
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2026年度診療報酬改定における医療DX加算の変更点
2026年6月から実施されている2026年度診療報酬改定では、これまで医療DX関連の評価として用いられてきた「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が廃止され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられました。
厚生労働省は、この加算を新設する趣旨について次のように定義しています。
医療DX関連施策の進捗状況を踏まえ、普及した関連サービスの活用を基本としつつ、更なる関連サービスの活用による質の高い医療の提供を評価する観点から、診療録管理体制加算、医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の評価を見直す。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年7月2日閲覧)
今回の再編は、医療DX施策について「導入を促す段階」から「実際の活用を評価する段階」へ移行させる狙いがあります。
今後は、オンライン資格確認やマイナ保険証への対応に加え、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなどの活用状況が、より問われることになるでしょう。
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電子的診療情報連携体制整備加算の算定区分・点数
2026年度診療報酬改定で新設された電子的診療情報連携体制整備加算は、従来の制度から変わり、外来(初診・再診)だけでなく入院医療においても算定可能となった点が特徴です。点数は、医療DX関連サービスの活用度や要件の達成状況に応じて、それぞれ設定されています。
外来では、初診時に「電子的診療情報連携体制整備加算1・2・3」の3区分が設けられています。再診時には月1回2点の算定が可能となり、従来の制度より点数が引き上げられたことで、継続通院する患者さんへの算定がしやすくなりました。
【電子的診療情報連携体制整備加算(初診料)】
| 初診 | 算定点数(月1回) |
|---|---|
| 加算1 | 15点 |
| 加算2 | 9点 |
| 加算3 | 4点 |
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年7月2日閲覧)
一方、入院では「電子的診療情報連携体制整備加算1・2」の2区分が設けられ、入院初日に限り算定可能です。
【電子的診療情報連携体制整備加算(入院基本料など)】
| 入院 | 算定点数(入院初日) |
|---|---|
| 加算1 | 160点 |
| 加算2 | 80点 |
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年7月2日閲覧)
入院において外来よりも高い点数が設定された背景には、医療情報システムの安全管理やサイバーセキュリティ対策など、より包括的な体制整備が求められる実情があると考えられます。
どの区分を算定できるかは、施設基準をどれだけ満たしているかによって決まります。当然ながら、点数の高い区分ほど電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなどに関して、より多くの施設基準を満たす必要があり、ハードルが高まると言えるでしょう。
電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準
ここでは、電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準について見ていきましょう。
まず、外来における加算1〜3のいずれを算定する場合でも、共通の基本要件として以下の7項目が求められます。最も点数の低い区分である加算3は、これらの要件を満たすことで算定可能です。
(1)オンライン請求を行っていること。
(2)診療報酬明細書を患者に無償で交付していること。
(3)オンライン資格確認を行う体制を有していること。
(4)医師又は歯科医師が、オンライン資格確認等システムを利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること。
(5)マイナ保険証利用率が、30%以上であること。
(6)マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有していること。
(7)明細書発行に関する事項、医療DX推進の体制に関する事項等について、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイトに掲載していること。
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf(2026年7月2日閲覧)
より点数の上がる加算2や1を目指すには、上記の基本要件に加え、さらに高度なDX活用が求められます。
具体的には「電子処方箋」「標準化された電子カルテ」「電子的な情報共有」に関連する3要素のうち、いずれか1つを満たすことで「加算2」が算定可能となり、最上位の「加算1」を算定するには、これらすべてを実装していることが条件となります。
なお、入院における電子的診療情報連携体制整備加算でも、外来と共通する基本要件が求められます。その上で、医療情報システムの安全管理やサイバーセキュリティ対策に関する要件も設定されています。
入院加算2の施設基準には、下記のような項目が必要です。
- 「安全管理ガイドライン」への準拠
- 専任の医療情報システム安全管理責任者の配置
- 少なくとも年1回程度の情報セキュリティ研修 など
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/kihon080305.pdf(2026年7月2日閲覧)
さらに点数の高い入院加算1では、上記に加えて下記も求められます。
- オフライン保管を含む複数方式での医療情報システムのバックアップ
- 非常時対応のための業務継続計画(BCP)の策定と定期的な訓練・演習
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/kihon080305.pdf(2026年7月2日閲覧)
このように、外来よりも入院の方が、情報管理体制や非常時対応まで含めた厳格な運用が求められていると言えるでしょう。
電子的診療情報連携体制整備加算のハードルと対策
電子的診療情報連携体制整備加算を算定する上で、大きな関門になるのがマイナ保険証利用率30%以上という要件です。これは、外来・入院を問わず求められる項目となっています。
この要件の難しさは、院内のシステム整備だけでなく、患者さんがマイナ保険証を使うかどうかが影響する点にあります。医療機関側でオンライン資格確認の体制を整えていても、受付での案内が不十分だったり、患者さんに利用メリットが伝わっていなかったりすれば、利用率は伸びにくくなります。
制度上、「体制が整備されていること」だけでなく、「実際に利用されていること」まで評価対象になっている点が、実務的なハードルを高めていると言えるでしょう。対策としては、以下のような地道な運用改善が必要です。
- 受付でマイナ保険証の利用を一律に案内する
- カードリーダー前で操作方法を補助する
- 院内掲示や自院のホームページで利用方法を分かりやすく周知する
また、上位の算定区分を目指す場合は、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応も必要になります。既存の電子カルテやレセプトコンピューターで要件を満たせるとは限らないため、システム改修の要否や導入スケジュールについて、早めにベンダーへ確認しておくことが大切でしょう。
まとめ
2026年度診療報酬改定では、従来の「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が再編され、「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました。今回の見直しは、医療DXの評価軸が「体制整備」から、マイナ保険証や電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどの「活用」へ移りつつあることを示しているとも言えるでしょう。
算定区分は、外来(初診時・再診時)、入院時で分かれ、施設基準に応じた点数が設定されています。どの区分でもマイナ保険証利用率30%以上は必須要件となっており、上位区分を目指す場合は、電子処方箋や電子カルテ連携への対応も必要です。
2026年度以降の医療DX加算に対応するには、足元の要件を満たすだけでなく、その先の制度見直しも見据えて準備を進めることが重要となります。今後の医療DX普及状況に合わせて、診療報酬上の評価項目や施設基準が見直されていく可能性があるため、医療機関には継続的な対応が求められるでしょう。
令和8年度診療報酬改定について
└個別改定項目について
令和8年度診療報酬改定説明資料等について│厚生労働省
└令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】
└令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等
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