病床機能報告制度とは、病床を有する医療機関が、自院の病棟ごとの役割(病床機能)を都道府県へ報告する制度です。現在は「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4区分で整理されています。
しかし、各区分の境界がわかりにくいといった課題や、今後の高齢者救急の増加を見据え、2027年度より区分の変更が予定されています。
さらに、2026年10月からは病棟単位の報告に加え、医療機関単位の役割を可視化する医療機関機能報告制度も施行予定です。このコラムでは、病床機能報告制度の概要や変更点、新設される医療機関機能報告制度の考え方について解説します。

執筆者:Dr.SoS
病床機能報告制度とは

病床機能報告制度とは、医療機関が自院の病床機能を都道府県知事へ報告する仕組みのことです。2014年に施行された制度で、一般病床・療養病床を有する病院・有床診療所が対象となります。報告は原則として、G-MIS(医療機関等情報支援システム)を通して行います。
では、なぜこのような仕組みが必要なのでしょうか。たとえば、地域内に同規模の回復期病院が複数ある一方で、急性期病院が一つもない状況では、医療提供体制に偏りが生じてしまいます。この場合、回復期病院を減らして急性期病院を増やすといった調整が必要になるかもしれません。
つまり、地域における病床の「機能分化」と「連携」を進めるために必要な情報を収集することが、病床機能報告制度の目的と言えるでしょう。
報告の際は、病棟単位で医療機能の「現状」と「今後の方向」をそれぞれ1つ選択します。実際の病棟にはさまざまな病期の患者さんが入院していますが、該当する患者さんが最も多い区分を選ぶのが基本です。
2026年度時点の病床機能区分は、下記の4つに分けられています。
| 高度急性期機能 |
|
|---|---|
| 急性期機能 |
|
| 回復期機能 |
|
| 慢性期機能 |
|
https://www.mhlw.go.jp/content/001593767.pdf(2026年5月14日閲覧)
病床機能報告│厚生労働省
令和5年度病床機能報告の実施等について│厚生労働省
医療機関等情報支援システム(G-MIS)│厚生労働省
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病床機能報告制度の課題と包括期の導入
現行の制度における課題
病床機能報告制度は、地域の医療提供体制を可視化する上で重要な仕組みですが、下記のような課題も指摘されています。
- 高齢者救急の増加など、社会情勢を十分に反映できていない
- 病床機能区分ごとの違いがわかりづらい
制度が始まった2014年と比べると、医療を取り巻く社会構造は変化しています。2040年を見据えた「新たな地域医療構想」では、高齢者救急の増加や在宅医療ニーズの拡大が大きなテーマとされており、従来の「治す医療」だけでなく、早期離床や在宅復帰支援を含めた「治し支える医療」の重要性が強調されています。
また、病床機能報告制度は各医療機関が独自の判断で機能を選択する仕組みのため、実態の捉え方にばらつきが生じやすい側面も否定できません。
たとえば、同じ「急性期一般入院料1」を算定する病床であっても、急性期として報告されている割合は都道府県によって約55〜100%*1と開きがあります。これは、高度急性期と急性期、あるいは急性期と回復期の境界がわかりづらいことが一因と言えるでしょう。
包括期の新設・目安となる入院料の設定
増加する高齢者救急の受け皿として、従来の「回復期」を「包括期」として位置付ける方針が示されています。
包括期は、従来の回復期機能や回復期リハビリテーション機能を包含した新しい区分で、2027年度に導入予定です。これまでの役割に加え、高齢者などの急性期の患者さんに対して、治療と早期リハビリを行う「治し支える医療」の提供が定められています。
従来の区分と新たな区分を整理すると、以下のとおりです。
| 従来の区分 | 新設予定の区分 | 変更点 |
|---|---|---|
| 高度急性期機能 | 高度急性期機能 | なし |
| 急性期機能 | 急性期機能 | なし |
| 回復期機能 | 包括期機能 | 従来の回復期機能に下記が追加 "高齢者等の急性期患者について、治療と入院早期からのリハビリ等を行い、早期の在宅復帰を目的とした治し支える医療を提供する機能" *1 |
| 慢性期機能 | 慢性期機能 | なし |
https://www.mhlw.go.jp/content/001593767.pdf/ https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001613447.pdf(2026年5月14日閲覧)
2024年度の診療報酬改定で導入された地域包括医療病棟(地メディ病棟)は、包括期の役割を理解するための例としてわかりやすいでしょう。従来の回復期が担ってきたリハビリ機能に加え、急性期治療(救急患者の受け入れ)を並行して担う点が、施設基準に盛り込まれています。
また「病床ごとの違いがわかりづらい」という課題に対して、今後は機能区分ごとに「目安となる入院料」が明示される方針です。たとえば包括期機能では、以下の入院料が挙げられています。
- 地域一般入院料
- 地域包括医療病棟入院料
- 回復期リハビリテーション病棟入院料
- 地域包括ケア病棟入院料 など
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001613447.pdf(2026年5月14日閲覧)
このように客観的な指標にもとづく整理が進むことで、報告の精度が高まり、地域差やばらつきの縮小が期待できるでしょう。
医療機関機能報告制度の新設

ここまで見てきた病床機能報告制度は、「病棟単位」で役割を報告する仕組みでした。しかし実際の現場では、救急搬送を多く受け入れる病院の中に緩和ケア病棟や回復期病棟が併存するなど、1つの医療機関が複数の機能を担うケースが少なくありません。
さらに、2040年を見据えた地域医療構想の見直しでは、入院医療だけでなく外来・在宅医療、介護との連携を含めた医療提供体制を構想する必要があるとされています。
こうした背景をふまえ、「医療機関単位」で役割を報告する医療機関機能報告制度が新設されることになりました。2025年12月に成立した医療法等の一部を改正する法律(改正医療法)にもとづき、2026年10月1日の施行が予定されています。想定されているおもな役割は、以下の4つです。
| 医療機関機能 | 役割 |
|---|---|
| 高齢者救急・地域急性期機能 | 高齢者救急を受け止めつつ、必要に応じて早期退院や地域復帰につなげる役割 |
| 急性期拠点機能 | より高度な救急・手術などを集中的に担う拠点的役割 |
| 在宅医療等連携機能 | 在宅医療の実施や他機関(医療機関・介護施設・訪問看護など)と連携した24時間対応・入院対応を通じて、地域医療を支える役割 |
| 専門等機能 | 上記3つの機能に当てはまらないものの、集中的なリハビリテーションや中長期の療養など地域で必要な専門的機能を担う役割 |
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001659995.pdf(2026年5月14日閲覧)
加えて、大学病院本院などが担う「医育及び広域診療機能」も重要な役割として位置付けられています。
このように、病床機能報告制度では「病棟の役割」を見るのに対し、医療機関機能報告制度では「医療機関全体として何を担うか」を可視化することが目的となっています。今後は、地域における自院の役割分担を考えることが重要になるでしょう。
病床機能報告制度の今後の展望
2026年度診療報酬改定
病床機能報告制度の見直しや医療機関機能報告制度の新設は、2026(令和8)年度診療報酬改定の方向性と合致しています。とくに急性期医療の評価については、病棟単位だけでなく病院全体の役割を重視する流れが明確になりました。
この方針に基づき、2026年度診療報酬改定では急性期病院一般入院基本料が新設されることになりました。これは、地域で病院が果たす救急搬送の受入や手術実績などの機能に着目し、病院の実態に応じた施設基準を設けるものです。
具体的には、救急搬送・全身麻酔手術の件数、人口の少ない地域における救急搬送受入状況などをふまえ、以下の2区分が導入されています。
- 急性期病院A一般入院料
- 急性期病院B一般入院料
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年5月14日閲覧)
急性期病院A一般入院料では、相当程度の急性期医療実績に加え、自宅などへの退院割合が8割以上であること、常勤医師数が一定以上であることなどが施設基準として求められます。急性期病院B一般入院料でも、地域において急性期医療を提供する体制や、一定程度の急性期医療実績が必要です。
今回の改定は、単に「この病棟が急性期かどうか」を問うだけでなく、「病院全体として地域でどのような急性期機能を担うのか」を、より明確に評価する方向へ進んでいると言えるでしょう。
病棟から病院へ―影響と医療機関の対応
一連の制度変化により、医療機関の役割はこれまで以上に定量化・可視化されていくと考えられます。「病棟単位」と「医療機関全体」の両面から役割が示されることで、自院の特色をより明確に打ち出せるようになるでしょう。
たとえば、救急や手術を強みとする「急性期拠点」を目指すのか、あるいは高齢者救急や在宅復帰支援を含む「包括的な医療」を担うのか―自院の立ち位置を整理することは、患者さんや地域住民だけでなく、働くスタッフの役割理解にもつながります。
一方で、こうした制度変化は、地域における役割の重複や機能分化の議論を加速させる可能性があります。急性期拠点病院を目指す場合は相応の実績を伸ばす必要があり、医師確保や看護配置、設備投資といったコスト増への対応は課題となり得るでしょう。
自院の患者像や人的資源、地域での役割をふまえれば、無理に高機能急性期を目指すのではなく、高齢者救急の受け皿や在宅医療連携を強みとする戦略も現実的です。症例や退院先、救急搬送数、手術件数などを改めて分析し、どの機能を主軸にするのかを中長期的に検討することが重要でしょう。
まとめ

「病床機能報告制度」は、病床を有する医療機関が自らの役割を都道府県知事に報告する仕組みです。2014年に始まった制度ですが、2027年度には社会の変化に合わせ、回復期が「包括期」として位置付けられる予定となっています。
これにより、高齢者など急性期の患者さんを受け入れる機能が診療報酬制度で明確に評価され、地域医療における役割が改めて定義されることになります。
従来の病棟単位での報告に加え、医療機関全体としての役割を報告する「医療機関機能報告制度」も2026年10月から始まります。2026年度診療報酬改定で新設された「急性期病院一般入院基本料」も含め、医療機関全体としての方向性が評価される流れになってきました。
一連の制度変更・新設によって、医療機関が地域で果たす役割が可視化されます。これにより、自院の強みをアピールして「選ばれる病院づくり」につなげる効果や、スタッフが共通の目的に対して一丸となれる組織づくりへの波及が期待できるのではないでしょうか。
このコラムが病床機能報告制度を理解する一助となれば幸いです。
令和7年度病床機能報告 報告マニュアル<①基本編>│厚生労働省
新たな地域医療構想策定ガイドラインについて│厚生労働省(*1)
地域医療構想及び医療計画等に関する検討会 新たな地域医療構想 とりまとめ(案)│厚生労働省
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