近年、医療機関から患者さんへの情報発信の手段は、従来の看板や公式サイトだけでなく、ポータルサイトやSNSなどにも広がっています。患者さんの信頼を得るためにも、専門医資格を持っていることを"広告する"ことの重要性もますます高まっていると言えるでしょう。
しかし、医療に関する広告表示は「医療法」や「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(以下、「医療広告ガイドライン」)によって厳しく規制されています。規定に反する表記は、患者さんの不利益を招くだけでなく、行政指導や措置命令、さらには罰則の対象となるおそれがあります。
2028年度末には学会認定専門医の広告を認める経過措置が終了する予定のため、改めてルールを理解し広告表示を見直す必要があるでしょう。
このコラムでは、広告表示が認められている専門医資格(以下、広告可能な専門医)の範囲と表記方法、注意すべきポイントや今後の展望について見ていきます。ぜひ最後までご覧ください。

執筆者:Dr.SoS
「専門医資格の広告表示」に関するルール

専門医資格にはさまざまな種類がありますが、広告可能な専門医は限られています。まずは、専門医資格に関する広告が認められている範囲やその背景など、基本的なルールから見ていくことにしましょう。
「広告可能な専門医」とは、「医療広告ガイドライン」上で看板・ポスター・webサイトなどでの広告表示が認められている専門医資格のことで、以下が該当します。
日本専門医機構認定の専門医
日本専門医機構が認定する基本19領域の専門医資格は、広告可能です。具体的には、以下の診療科が該当します。
内科、小児科、皮膚科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、病理、臨床検査、救急科、形成外科、リハビリテーション科、総合診療
https://jmsb.or.jp/ippan(2026年1月30日閲覧)
一方、アレルギーや膠原病・リウマチ内科、消化器外科などのサブスペシャルティ領域については、基本的には広告を認める方針で議論が進められていますが、詳細な取り扱いは本稿執筆時点で確定していません。
学会認定の専門医(経過措置)
日本専門医機構による新専門医制度開始前から存在する学会認定の専門医資格についても、当面の間は広告が認められています。具体的な資格は、厚生労働省のwebサイト*1で確認できます。非常勤医師の場合でも広告可能ですが、常勤と誤認を与えないよう、勤務形態の明記が必要です。
ただし、認定元が混在している状況を解消するため、日本専門医機構の認定(19の基本領域)と同一の専門性がある学会認定専門医については2028年度末をもって経過措置期間が終了し、広告不可となる見込みです(後述)。
一般の皆様へ│日本専門医機構
└基本領域およびサブスペシャルティ領域一覧
医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名(厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定するもの) 等について(令和5年2月)│厚生労働省(*1)
専門医名称の表記方法
専門医資格を記載する際は、認定団体名を含む"正式名称"を使わなくてはいけません(例:〇〇学会認定◯◯専門医)。「◯◯専門医」という記載だけでは広告が認められないため、注意しましょう。
認定団体は通常、日本専門医機構や関連学会が該当します。事実と異なる団体名、たとえば「厚生労働省認定◯◯専門医」のような記載は虚偽広告(広告禁止事項)として扱われるため注意しましょう(虚偽広告については後述)。
具体的な記載方法については、厚生労働省が公開している「医療広告ガイドライン」の事例紹介を確認すると良いでしょう(下図)。

https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf(2026年1月30日閲覧)
医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について(平成31年1月)│厚生労働省
医療広告ガイドラインに関するQ&A(平成30年8月)│厚生労働省
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)│厚生労働省
専門医の広告表示が重要な理由
2020年の厚生労働省の調査によると、医療機関を選ぶ際の理由として「専門性が高い医療を提供している」ことは、「医師による紹介」や「交通の便がよい」という回答に並び、上位を占める要因の一つとなっています。
また、医療機関を受診する際には、事前に情報収集をする人が多く見られます。外来患者さんの「医療機関にかかる時の情報の入手先」は、「家族・友人・知人の口コミ」に次いで、「医療機関が発信するインターネットの情報」が挙げられています。
とくに若い世代ほどインターネットから情報を得る傾向があり、0〜39歳までの年齢層では40%を超え、40〜64歳でも38.0%*2と高い数値を示しています。
これらの結果をふまえると、専門性の高い医療を提供していることを、看板やパンフレット、インターネットなどで適切に広告することは、経営の安定につながる重要な要素と言えるでしょう。
専門医の広告表示に注意が必要な理由
医療情報は公益性の観点から、広告内容が医療法や「医療広告ガイドライン」によって厳しく制限されています。受療行動に強く影響すると考えられる専門医資格の記載は限定されており、自由に広告できるわけではありません。
広告の記載ルールに違反することは、患者さんの不利益につながるだけでなく、行政指導や措置命令、場合によっては罰則や行政処分に至る危険性もあるため注意が必要です。
医療広告ガイドラインから読み解く広告規制の全体像
ここでは専門医資格の広告規制をより深く理解するために、医療広告規制の全体像について見ていきましょう。
医療広告では、医療法に基づいて規定されている「広告可能事項」に該当する内容のみの記載が"原則"です。
ただし、限定解除要件を満たせば、広告禁止事項を除いて記載可能となる例外が存在します。
全体像を図示すると下記のようになります。

https://www.mhlw.go.jp/content/001304521.pdf(2026年1月30日閲覧)
このうち、「広告可能事項」と「限定解除下で広告可能」となる条件(=限定解除要件)、「広告不可」となる内容について、順に見ていきましょう。
医療法における広告可能事項
「広告可能事項」には下記のような項目があります。
- 医師または歯科医師であること
- 診療科名
- 医療機関の名称、電話番号、住所、管理者の氏名
- 保有する医療施設(手術室やICU、ドクターヘリの有無)や医療機器(CTやMRIなど)の配置状況
- 診療に従事する医師の氏名・年齢・性別・略歴・専門医資格など
- 診療日もしくは診療時間、予約による診療実施の有無
- 医療機関において提供される医療の内容
- 認定施設であること(医療機能評価の結果、ISO認証、Joint Commission International認定など) など
https://www.mhlw.go.jp/content/001304521.pdf(2026年1月30日閲覧)
専門医資格についても広告可能事項に含まれていますが、先述のとおり「広告可能な専門医」に限られることに注意しましょう。
駅やビルで見かける医療広告がどれも同じような内容に感じられるのは、広告可能事項が厳しく制限されているためと言えます。
医療法における限定解除要件
医療広告では広告可能事項が制限されることで、客観性や正確性が担保され、患者さんの保護につながっています。
一方で、広告の内容が制限されすぎると、医療機関の情報を主体的に入手したい患者さん側の利益が損なわれるおそれもあります。このバランスを取るために設けられているのが「限定解除要件」です。患者さんなどが自ら求めて入手する情報については、一定の要件を満たすことで広告可能事項の"限定が解除される"仕組みになっています。
具体的な要件は下記①・②(自由診療の場合は①~④)であり、すべてを満たす場合、限定解除が認められます。
①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
https://www.mhlw.go.jp/content/001304521.pdf(2026年1月30日閲覧)
たとえば、睡眠専門医(日本睡眠学会認定)や抗加齢専門医(日本抗加齢医学会認定)、女性ヘルスケア専門医(日本女性医学会認定)は広告可能な専門医に該当しない資格ですが(本稿執筆現在)、限定解除要件を満たしていればwebサイトなどで記載することは問題ありません。
限定解除を活用することで、患者さんにより届く情報を提供できるようになります。医療機関の広報を考える上では、この仕組みを活用することが望ましいでしょう。
広告について│日本抗加齢医学会
医療法における広告禁止事項
限定解除要件を満たしても、何でも自由に広告可能というわけではありません。
下記のような広告は、いかなる場合も広告が認められない「禁止事項」として、医療法および「医療広告ガイドライン」に定められています。
- 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
- 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)(日本一、No.1、日本有数の~など)
- 誇大な広告(誇大広告)
- 公序良俗に反する内容の広告 など
https://www.mhlw.go.jp/content/001304521.pdf(2026年1月30日閲覧)
一例として、実在しない専門医資格(たとえば"クロイツフェルト・ヤコブ病専門医"など)を作って表記するのは虚偽広告に該当し、限定解除要件を満たしていても広告不可となります。
広告規制の対象
広告規制の対象になるのは、チラシ・パンフレット・ポスター・看板・新聞・テレビCMなど多岐にわたります。
一方で、学術論文や学会発表、新聞記事や患者さんが自ら掲載する体験談などは広告に該当しません。ただし、掲載にあたり金銭などの取引があれば広告(ステルスマーケティング)と見なされるため、個別の判断が必要です。
低コストで広報に用いられることが多いwebサイトやSNSも、2018年6月の医療法改正によって広告規制の対象となっています。
なお、院内掲示や院内で配布するパンフレットは、すでに受診している患者さんへの情報提供であり、医療広告規制の対象ではありません。
一度来院した患者さんに継続的に受診してもらうことは、新規の患者さんに来ていただくのと同じくらい重要なため、積極的な情報提供が大切と言えるでしょう。
広告可能な専門医に関する経過措置と今後の展望【2028年度まで】

2026年1月現在、広告可能事項に含まれる専門医資格は、先述のとおり日本専門医機構認定と各学会認定のものが混在している状況です。学会認定専門医の広告が認められるのは、あくまで経過措置に過ぎません。
基本領域に対応する以下の学会認定専門医は、2028年度末で経過措置期間が終了し、広告表示ができなくなることが決まっています。
小児科・皮膚科・精神科・外科・整形外科・産婦人科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・脳神経外科・放射線科・麻酔科・病理・救急科・形成外科・リハビリテーション科
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001232585.pdf(2026年1月30日閲覧)
一方、サブスペシャルティ領域については、機構認定専門医が広告可能と認められておらず、学会認定専門医の経過措置期間がいつ終了するかは未定の状態です(本稿執筆現在)。
今後も広告表示を考える先生方は、2028年度末の経過措置終了に向けて、改めて自身や勤務医の保有資格を確認し、自院の看板やwebサイトの表記を確認しておくと良いでしょう。保有資格は、できれば機構認定専門医に移行しておくほうが安心かもしれません。
まとめ
医療機関による情報発信は、原則として広告可能事項の範囲内に限られており、例外として限定解除要件を満たす場合のみ、より幅広い内容の広告が可能となります。ただし、限定解除の要件を満たしても、誇大広告や比較優良広告などの禁止事項は広告できないため、注意が必要です。
専門医資格の記載は広告可能事項に含まれており、患者さんに来院してもらうという観点でも重要性の高い項目です。一方で、広告可能な専門医は限られていることや、団体名と正式な資格名を記載する必要があるなど、ルールや注意点が存在しています。
2028年度末には基本領域と重なる学会認定専門医の経過措置期間が終了し、今後は専門医機構認定専門医のみが広告可能になる見込みです。早めに資格の確認を行い、看板・webサイトホームページの表記内容に齟齬がないかチェックしておく必要があります。
正確かつ過不足のない表示は法令遵守だけでなく、患者さんが求める専門性の可視化、すなわち患者さんから信頼を得ることにも直結します。このコラムが、広告可能な専門医を理解する一助となれば幸いです。



