医師の副業について現役医師が解説。自分らしく働く上でおすすめの仕事や注意点とは

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働き方

公開日:2023.07.05

医師の副業について現役医師が解説。自分らしく働く上でおすすめの仕事や注意点とは

医師の副業について現役医師が解説。自分らしく働く上でおすすめの仕事や注意点とは

「多様な働き方」「ワーク・ライフ・バランス」「キャリア形成」など労働に関する新たな考え方が広がる昨今、医師を取り巻く環境にも変化が起きています。特に2024年4月から医師にも適用される「働き方改革」は、医師の働き方そのものを大きく変える可能性があります。

そのような状況の中、自分らしく働き、自分らしく生きていくために副業をする医師が増えています。副業をする理由はさまざまですが、本業以外の業務をすることで収入の柱を増やすだけでなく、本業にもプラスの効果をもたらすことが期待されます。

この記事では、医師免許や医療知識を活かせる仕事の種類や、医師が副業をする上での注意点について紹介します。

副業解禁って何のこと?医師は副業していいの?

2018年1月、厚生労働省が作成した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をきっかけに、多くの企業で副業解禁の流れが起きています。

「解禁」というからには、それまで禁止されていたということ。しかし医療業界においては、多くの医師が副業をしてきました。外病院の外来を医局の先輩から引き継いだ、自治体からの依頼でコロナワクチン接種会場の問診に行った、他の医師が急に行けなくなった当直のヘルプに行った...これらはいずれも「副業」にあたります。医師は常勤以外の医療機関でこのような診療を行うことが多く、医師にとって副業は身近なことと言えます。

近年は医師の副業の種類も多様化し、業務形態もさまざまです。また、2024年4月に本格運用される「働き方改革」により、新たに注意しなければならない点が出てきます。医師は副業をしても良いのでしょうか?何か制限はあるのでしょうか?順に解説していきます。

研修医と公務員医師以外は原則副業可だが、確認が必要

「副業をしてはいけない」医師としてまず挙げられるのが、研修医(初期研修医)です。

研修医は医師法により「臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならない」と定められています。研修の支障になり得る行為は慎む必要があるため、診療のアルバイトは禁止されています。そのほかの副業をするのも現実的ではないと言えるでしょう。

また、公務員医師についても、国家公務員法や地方公務員法により職務に専念する義務が定められています。公務員医師には、国立や県立・市立病院といった公的病院に勤務する医師(ただし独立行政法人である公的病院に勤務する場合、公務員法は適用されません)、刑務所や拘置所といった矯正施設に勤務する医師、医科自衛官、厚労省の医系技官などが含まれます。副業をするには許可が必要であったり、勤務先が公的機関などに限られたりする場合があります

そのほかの医師は、原則として副業をすることが可能です。ただし各医療機関特有の事情がある可能性もあるため、必ず職務規定を確認しましょう

2024年4月以降は時間外労働の上限規制に注意

2024年4月から運用される医師の働き方改革では、長時間労働を是正するため医師の時間外労働に上限が設けられるようになります。規制の対象となるのは主に常勤病院における時間外労働ですが、ここに副業の労働時間も通算されるのです。各医療機関により労働時間の上限は異なりますが、上限を超えて副業をすることはできません

ただし医師の副業には、当直勤務のように勤務時間と比較して労働量が少ないケースがあります。副業先が「宿日直許可」を得ている場合宿直や日直による労働時間は労働時間規制の適用除外となります。そのため副業先の宿日直許可の取得状況を確認する必要があります。

医師が選ぶ主な副業は「常勤以外の診療業務」

医療イメージ_カルテと聴診器

多くの医師が選ぶ主な副業は、常勤勤務している病院以外の医療機関で行う診療です。保険診療を行うため時間あたりの報酬が高く、身に付けた知識や経験をそのまま活かすことができる点が人気の理由と言えるでしょう。常勤以外の診療業務にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。

非常勤勤務とスポットアルバイト

医師が副業として行う診療業務の勤務形態として一般的なのが、定期的に勤務する非常勤勤務と、単発で勤務するスポットアルバイトです。

副業先では、いつも勤務している病院では診ることがないような患者さまが来院することもあり、多様な経験を積むことにつながります。また、他病院の医師や職員とのつながりといった人脈形成にも役立ちます。

収入面だけが、良い副業の条件とは限りません。「特定の疾患を多く扱う医療機関に勤める」、「在宅医療を学ぶため訪問診療を行う」、「過疎地の勤務を選び総合的な医療を経験する」など、自分のビジョンに沿ったキャリアアップ・スキルアップのために副業をするという選択もあるでしょう。そのために必要な勤務条件を検討し、仕事を選ぶことも可能です。

仕事を探すには、知り合いの医師に聞いたり、求人サイトを利用したりする方法があります。医師不足に悩む地域・医療機関は多く、医師専門の求人サイトではさまざまな案件を見つけることができます。

医師の副業として人気が高まるオンライン診療

2018年3月、厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を公表し、2022年度の診療報酬改訂で「初診料(情報通信機器を用いた場合)」が設けられました。初診のオンライン診療が認められた背景には、新型コロナウイルス感染症の流行に加えて、医師の働き方改革や医師偏在への対策があります。

これを受けてオンライン診療の求人案件が増加しており、医師の副業として人気も高まっています。在宅で診療できる案件があることや、土日や夜間の診療・シフト制の採用などにより都合の良い時間に働けることなどが理由です。

初診のオンライン診療には、麻薬及び向精神薬の処方を行わない、基礎疾患の情報が把握できない場合の処方日数は7日間を超えない、などの注意点があります。オンライン診療は今後も拡大することが予想されるため、今のうちからオンライン診療のスキルを身に着けておくことは今後の備えになるかもしれません

医師免許や医療知識を活かした副業

医師免許や医療知識があることで、診療以外にもさまざまな副業の選択肢が生まれます。医療は専門性が高く、社会的に重要な分野と認識されているため、仕事のニーズや単価が高いという特徴があります。どんな仕事があるか、見ていきましょう。

医療や健康に関わる情報発信

医師が持つ医療や健康に関わる情報は、さまざまなところで求められています。自治体などの公的機関や製薬会社から依頼される講演、原稿執筆といった副業は以前から盛んに行われています。とくに教授や医長など、立場が上の医師であるほど依頼される案件も多く、重要な副業であると言えます。

近年は紙媒体ではなく、Web記事の作成や監修といった業務も増えています。必ずしも医師としての長い経験や高い専門性が求められる案件ばかりではないため、若手の医師も着手しやすい領域と言えます。経験を重ねることで専門外領域も含めた知識が広がり、アウトプットすることにより知識の定着を図ることができます。また、一般の方向けの文章作成であれば、医療に関する解説が上手になるという副産物も期待できます。

遠隔健康医療相談(オンライン健康相談)

遠隔医療の一つに「遠隔健康医療相談」(オンライン健康相談・オンライン健康医療相談)があります。代表的な遠隔医療である「オンライン診療」は保険点数が付く診療行為ですが、「遠隔健康医療相談」はそうではなく、一般的な情報提供を行う業務です。医師以外も行うことができますが、医師に求められるケースもあります。

オンライン会議システムやテキストメッセージなど、対面ではない状況で患者さまとコミュニケーションを取り、納得してもらえるような返答をするには、スキルとコツが必要です。オンライン診療の準備段階と考えることもできるかもしれません。ただし、「遠隔健康医療相談」は診療ではないため、診断を伝えたり、一般用医薬品の具体的な使用を指示したりしてはいけないことに注意が必要です。

▼遠隔健康医療相談(オンライン健康相談)に関する詳しい記事はこちら
増えるオンライン医療相談のポイントや注意点を解説

クラウドソーシングで請け負う副業

クラウドソーシングとは、不特定の人に業務を委託する仕組みのことで、副業をする人の増加とともに近年拡大しているサービスです。登録している医師も少なくなく、数百件を超える案件をこなしている方もいます

クラウドソーシングで請け負うことのできる業務は、医療に関するWeb記事のライティング、資料作成、動画制作など多彩です。医療の専門知識が必要な案件は単価が高く、効率よく収入を得ることができます。システム開発と医療の組み合わせなど、医療以外の領域に重なる案件も多く、プログラミングや動画編集などのスキルをお持ちの方や、そういったスキルを身に着けたい方は、挑戦してみると良いかもしれません。

知っておきたい、医師の副業に関わる注意点

副業で得た収入にも税金がかかり、確定申告が必要

副業で得た収入から経費を差し引いた金額が20万円を超える場合、確定申告をして税金を納める必要があります。納税は国民の義務ですから、怠ってはいけません。気付かずに申告が抜けていたという場合でも、追徴課税の対象となることがあるため注意が必要です。

副業の規模が大きくなった場合は、開業届を提出し個人事業主として業務を行うことで、節税できるケースがあります。

職務規定の確認が必要

副業をする場合は、副業をしても良いか、副業に条件や制限がないか、常勤先に必ず確認しましょう。副業が禁止されているにもかかわらず行ってしまった場合は職務規定違反となり、始末書の提出や懲戒処分、減給など何らかの処罰の対象となる可能性があります。

また、副業に力をかけ過ぎてしまい、本業が疎かになっては本末転倒と言えます。本業の支障にならない程度にとどめておくことが重要です。

まとめ

多くの医師は本業が忙しく、時間的にも体力的にも、副業をしようと考えられる人は決して多くはないかもしれません。医師は一定以上の収入が得られることの多い職業であり、副業収入が絶対に必要とは言えないでしょう。

しかしこの記事で紹介したように、副業をすることで身に付くスキルは本業に役立つ可能性があり、将来の自分の身を守る術になっていくかもしれません。自分らしいキャリアを積み、可能性を広げていくためにも、副業を検討されるのはいかがでしょうか。

Dr.Ma

執筆者:Dr.Ma

2006年に医師免許、2016年に医学博士を取得。大学院時代も含めて一貫して臨床に従事した。現在も整形外科専門医として急性期病院で年間150件の手術を執刀する。知識が専門領域に偏ることを実感し、医学知識と医療情勢の学び直し、リスキリングを目的に医療記事執筆を開始した。これまでに執筆した医療記事は300を超える。

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