サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する

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業界動向

公開日:2020.09.23

サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する

サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する

2018年から本格的にスタートした新専門医制度は、医師の専門性の質を高め、患者さまに良質な医療を提供することを目的につくられました。しかし、複雑な仕組みのため、「どのような制度なのかよく分からない...」という方も多いでしょう。

そこで今回は、サブスペシャルティ領域の専門医を目指すうえで知っておくべきことについて詳しく解説します。

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基本領域とサブスペシャルティ領域

これまで、専門医の認定は各学会が独自の基準により行ってきました。一般的には筆記テスト、口頭試問、症例レポートなどが課されますが、難易度は学会によって様々。合格率が6割程度の専門医試験もあれば、ほぼ症例レポートのみでパスできる専門医制度も...。このような専門医ごとの格差を解消し、国民に質の高い医療を提供することを目的につくられたのが「新専門医制度」です

新専門医制度では、従来の各学会による独自の認定基準ではなく、第三者機関である日本専門医機構が認定基準を定めることで診療科によらない画一した質の高い専門医の認定ができるようになると考えられています。

この新しくなった新専門医制度の特徴は、「二階建て構造」になっていること。医師は初期臨床研修を修了したら、まずは19つあるいずれかの基本領域の専攻医となり、3~5年の研鑽を積んでいきます。そして、無事に専門医資格を取得できたら、次は基本領域に関連するサブスペシャルティ領域の専門医を目指していきます。まずは、基本領域とサブスペシャルティ領域にはどのようなものがあるのか詳しく見てみましょう。

基本領域

現時点で日本専門医機構が定める基本領域は下表の19領域となっています。

基本領域のイメージ

初期臨床研修が修了した医師は、専攻医として日本専門医機構が認定する施設基準を満たした医療機関で3~5年間の研修をスタートします。以前は、初期臨床研修が終了しても属する診療科が定まらない医師や、診療科にとらわれずに幅広い医療を経験したいという医師は、後期研修医としローテートすることも可能でした。しかし、新専門医制度では、原則的に初期臨床研修の段階で専攻する診療科を決定することが望ましいのです。

また、超高齢社会の日本において、在宅医療などの需要がますます高まっていくことが予想されます。それにともない、新専門医制度では様々な疾患のプライマリ・ケアを担う「総合診療科専門医」が新たに創設されたのも大きなポイントです。

サブスペシャルティ領域

サブスペシャルティ領域は、基本領域の専門医を取得した後に目指す、専門的で範囲の狭い専門医を指します。現時点で日本専門医機構に認定されたサブスペシャルティ領域は、下表の23診療科に及びます。

サブスペシャルティ領域のイメージ

ただし、専攻するサブスペシャルティ領域は、基本領域の専門医に関連した診療科でなければなりません。たとえば、基本領域で内科や小児科の専門医を取得した医師は、サブスペシャルティ領域の循環器専門医の取得が可能です。一方で、基本領域で産婦人科の専門医を取得した医師は循環器専門医を目指すことはできません。

そのため、初期研修医の段階で基本領域を決める際には、サブスペシャルティ領域で選択する診療科を大まかに決めておく必要があります。

サブスペシャルティ領域の研修制度について

サブスペシャルティ領域のイメージ

新専門医制度では、基礎領域とサブスペシャルティ領域の二段階制の専門医取得が基本となります。このような二段階制をとることで、特定の基本領域における一定の知識やスキルを有した状態でサブスペシャルティ領域の研修をはじめられます。そのため、より効果的な研修が可能になるメリットがあります。

一方で、特定のサブスペシャルティ領域の専門医を取得するには、基本領域が限定されます。そのため、サブスペシャルティ領域の専門医を取得した医師が減少する可能性がデメリットとして囁かれています。

サブスペシャルティ領域における連動研修

通常、新専門医制度の下では基本領域の専門医資格を取得するのに3~5年、サブスペシャルティ領域の専門医に進むにはさらに3年以上の研修が必要となります。サブスペシャルティ領域の専門医として患者さまに医療を提供するには、初期臨床研修が修了した後も長く厳しい修業が待っているのです。

スキルの高い専門医を目指すには、長い時間がかかるのも当然のこと。しかし、専門医取得に時間がかかることで、患者さまに専門性の高い医療を提供するまでの空白期間が長くなるという問題もあります。そこで、日本専門医機構は、基礎領域とサブスペシャルティ領域の研修を連動することを認める方針を示しています。実際に連動研修がスタートするのは2021年4月からとされていますが、研修内容などの要件を満たす場合はさかのぼって連動研修と見なすとのこと。

ただし、連動研修ができるサブスペシャルティ領域は限られており、23領域中15領域のみで認められる見通しとなっています。今後さらに具体的な研修要件などが決まっていくことになりますが、自身の希望するサブスペシャルティ領域ではどのような研修が必要になるのかも把握しておくようにしましょう。

サブスペシャルティ領域の専門医になるために

サブスペシャルティ領域のイメージ

医師として早い段階から将来的な目標を決めなければならないのは、新専門医制度のデメリットのひとつでもあります。誤った選択をして後悔しないためにも、研修医の頃から次の点を意識しながら研鑽を積んでいきましょう。

自分の目指す専門分野を事前に固めておく

上でも述べた通り、2021年に本格的に始動する連動研修に伴い、医師は早い段階で専門分野を選択することが望まれるようになります。選択を後悔しないためにも研修中から将来を見据えて未来像をしっかりと固めておくことが大切です。

研修先のリサーチ

日本専門医機構が研修先として定める医療機関は多々ありますが、いずれも全く同じカリキュラムで研修を進めるわけではありません。研修内容はそれぞれの医療機関独自のものとなります。そのため、希望するサブスペシャルティ領域が決まったら、研修先を徹底的にリサーチし、自身が望む医師としてのキャリアを確実に踏めるところを選ぶようにしましょう。

キャリアを考えて連動研修を活用する

希望する専門分野が明確に決まっている医師は、通常より早いペースで研修を終えられるよう連動研修が可能な研修先を選ぶのがおすすめです。ただし、時間をかけてじっくりと研修を進めていきたい医師も少なくないでしょう。通常の二段階制の研修と連動研修の内容を比べ、自身が納得できる研修を行うプログラムを選ぶようにしましょう。

なりたい医師像をじっくりと考え、後悔のない選択を

本格的にはじまった新専門医制度。専門医の質を高め、患者さまによりよい医療を提供することを目的に定められた制度ですが、その特徴は「基本領域」と「サブスペシャルティ領域」の二段階制になっていること。特定のサブスペシャルティ領域の専門医を目指すには、その分野と関係のある基本領域を選択しておかなくてはなりません。

また、2021年からは基本領域とサブスペシャルティ領域の研修を連動させる「連動研修」も行われることが決まっています。連動研修は研修期間を短縮するため、第一線で活躍できる時間が長くなるメリットがある一方、早い段階から将来像を定めておかなければならないといったデメリットもあります。

連動研修を受けるか否かに関わらず、将来的に後悔のない選択をするためには、初期臨床研修中から将来を意識しながら診療に当たりる必要があるでしょう。あなたが目標とする医師像について、考える時間を十分にもつことが大切です。

ドクタービジョン編集部

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