種類が多く、使い分けや覚え方に腐心する抗菌薬。今回は代表的なセフェム系抗生物質を取り上げます。
「セフェム系抗生物質」とひとくくりに言っても、さまざまな種類があります。それぞれの特徴や注意点を押さえることで、適した薬剤を選びやすくなるでしょう。
このコラムでは、現場でしばしば用いられる注射薬(点滴静注)と内服薬(経口投与)に分けて、抗菌スペクトラムや適応疾患・代表的な使用量などを紹介します。臨床現場で役立つ早見表も用意していますので、あわせてお役立てください。
※本資料の掲載内容は筆者個人の見解も含みます。診療にあたっては最新のガイドラインや治療指針、各種薬剤の添付文書などをご確認ください。

執筆者:Dr.SoS
総論
まずは、セフェム系抗生物質に共通する特徴を見ていきましょう。
セフェム系抗生物質の薬理機序は、細菌の細胞壁合成の阻害です。これはペニシリン系と同様で、両者はいずれもβラクタム環を有することから「βラクタム系抗菌薬」とも総称されます。
ヒトの細胞が細胞壁を持たないことから、安全性が高い抗菌薬として幅広く使われています。
時間依存性に効果を発揮することも特徴で、投与期間中に血中濃度が最小発育阻止濃度(MIC:minimal inhibitory concentration)を上回る時間(T>MIC)が重要となります。このため、薬剤によって異なるものの、多くは1日に複数回の投与が必要です。
また、胆道系から排泄されるセフトリアキソンなどの例外を除き、多くは腎臓から排泄されるため、腎機能障害の症例では投与量を調節する必要があります。
適応
セフェム系抗生物質は第1~4世代に分類され、世代を追うごとに抗菌スペクトラムが広がる傾向があります。ただし、総じて腸球菌や細胞内寄生菌(リステリア・マイコプラズマなど)に対しては臨床上無効です。
副作用
セフェム系に共通する副作用には、以下が挙げられます。
- アレルギー反応(ショック・アナフィラキシー)
- 血液障害(汎血球減少・無顆粒球症・溶血性貧血)
- 肝障害
- 腎障害
- 大腸炎
- 皮疹 など
先述のとおり、セフェム系抗生物質はβラクタム環を有するため、セフェム系やペニシリン系で重篤なアレルギーの既往がある場合は交差反応をきたす可能性があります。可能であれば別薬剤の使用を検討できると良いでしょう。
大腸炎のなかでも、抗菌薬投与による菌交代現象で生じる偽膜性大腸炎が重要です。セフェム系抗生物質も原因薬となり得るため、投与中に下痢や発熱をみたら疑う必要があります。
それでは、次の段落からは薬剤ごとの特徴を紹介していきます。
注射薬
セファゾリン(CEZ)
代表的な商品名
セファメジン®α、セファゾリンNa
特徴
第1世代セフェム系に分類されます。グラム陽性球菌であるレンサ球菌や黄色ブドウ球菌(MSSA:methicillin-susceptible Staphylococcus aureus、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)に対する抗菌作用が高い一方、グラム陰性桿菌や嫌気性菌に対してはあまり使用されない薬剤です。
ただし、グラム陽性球菌であってもPRSP(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae、ペニシリン耐性肺炎球菌)やMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対しては無効なため注意しましょう。また、髄液移行性が良くないため、黄色ブドウ球菌が原因であっても髄膜炎などの中枢神経感染症では使用できません。
セファゾリンはWHOのAWaRe分類で「Access抗菌薬」に位置付けられており、一般的な感染症の第一選択または第二選択薬として使われています。なおセフェム系の注射薬でAccess抗菌薬に分類されるのは、セファゾリンとセファロチンの2剤のみです(2026年3月末現在)*1。
重要な抗菌薬でありながら、2019年には供給不足が発生しました。対策として2022年にはセフメタゾール(CMZ)、メロペネム(MEPM)とともに「基礎的医薬品」に指定され、薬価が引き上げられました。
安定確保医薬品8成分が基礎的医薬品に|日本ジェネリック製薬協会
基礎的医薬品とは|日本ジェネリック製薬協会
令和7年度薬価改定について|厚生労働省
└p.41 低薬価品の特例:基礎的医薬品
抗菌薬使用サーベイランス 抗菌薬マスター|国立健康危機管理研究機構 AMR臨床リファレンスセンター
└AWaRe分類一覧(*1)
▼関連コラムはこちら
「Access抗菌薬」とは?使用比率・一覧、AMR対策や診療報酬加算との関連【医師向け】
「後発医薬品」の現状は?バイオシミラーとの違いや使用割合、課題を解説【医師向け】
おもなスペクトラム・適応
- レンサ球菌・MSSA
- 市中発症の尿路感染症(感受性のある場合)
- 市中発症の皮膚軟部組織感染症(毛包炎・せつ・丹毒・蜂窩織炎など)
- 術後の創部感染予防
通常使用量
2 g 8時間ごと(点滴静注)
セフメタゾール(CMZ)
代表的な商品名
セフメタゾン®、セフメタゾールNa
特徴
セファマイシン系(第2世代セフェム系)に分類されます。第1世代に加えてグラム陰性桿菌や嫌気性菌(横隔膜下を含む)にもスペクトラムを持つ一方、グラム陽性球菌に対する活性はやや低いため、グラム陽性球菌が主体の感染症では通常用いられません(ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌に対しては、軽症例には使用可能との意見あり)。
グラム陰性桿菌の一つであるインフルエンザ桿菌に対しては、通常は活性を持ちますが、BLNAR(βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性)に対しては無効な点に注意が必要です。
おもなスペクトラム・適応
- レンサ球菌・MSSA・嫌気性菌
- 腹膜炎・胆管炎などの消化管感染
- 腹部・婦人科手術の術前予防投与
通常使用量
1~2 g 6~12時間ごと(点滴静注)
セフトリアキソン(CTRX)
代表的な商品名
ロセフィン®、セフトリアキソンNa
特徴
第3世代セフェム系に分類されます。第1世代に加えてグラム陰性桿菌や(横隔膜上の)嫌気性菌、PRSPやBLNARに対する抗菌活性を有しています。髄液移行性が良い点も特徴です。
半減期が長く1日1回投与が可能なため、在宅診療や入院が難しいケースの治療選択肢としても選びやすい薬剤です。
一方で、横隔膜下の嫌気性菌や緑膿菌に対しては抗菌活性を持たない点、MSSAに対する活性は第1世代より劣る点に注意が必要です。
おもなスペクトラム・適応
- 市中発症の肺炎
- 市中発症の尿路感染症
- 市中発症の細菌性髄膜炎(この場合は投与量が2 g 12時間ごと)
- 淋菌
- 梅毒
- 難治性の副鼻腔炎
通常使用量
1~2 g 24時間ごと(点滴静注)
副作用
- 胆石や胆嚢内沈殿物(胆泥)が生じ、X線やエコーで石灰化様の所見をみることがあります(偽胆石症)。多くは自然消失しますが、胆嚢炎・胆管炎、膵炎などを起こすこともあります。
- カルシウム含有製剤を配合し、肺や腎臓に結晶が生じて死亡した症例が報告されており、同時投与は控えるべきとされています*2,3。
石川周・小松康之:Ceftriaxone投与後に発生した偽胆石症の2例.日本化学療法学会雑誌 66(6):762-765,2018
医薬品安全性情報 Vol.7 No.23(2009年11月)|国立医薬品食品衛生研究所(*2)
医薬品安全使用ニュース セフトリアキソン投与時の注意点について|愛媛大学医学部附属病院(*3)
セフタジジム(CAZ)
代表的な商品名
モダシン
特徴
第3世代セフェム系に分類されます。同じ第3世代のセフトリアキソンと比べて、緑膿菌をはじめとする腸内細菌をカバーできる点が特徴です。
緑膿菌は免疫力が低下した症例で問題になることが多い菌ですが、同様の背景ではAmpC過剰産生菌も感染症の原因となり得ます。セフタジジムは緑膿菌に有効ですが、AmpC過剰産生菌への有効性は低い点に注意しましょう。
セフトリアキソンと異なり、グラム陽性球菌や嫌気性菌に対する抗菌作用は低くなっています。
おもなスペクトラム・適応
- 緑膿菌
- 院内発症のグラム陰性桿菌感染症:いわゆる「SPACE」(セラチア・緑膿菌・アシネトバクター・シトロバクター・エンテロバクター)
※AmpC過剰産生菌には無効。
通常使用量
2 g 8時間ごと(点滴静注)
セフェピム(CFPM)
代表的な商品名
マキシピーム®
特徴
第4世代セフェム系に分類されます。第3世代のセフトリアキソンの領域に加えて、セフタジジムがカバーする緑膿菌、さらにAmpC過剰産生菌にも抗菌活性を持つことが特徴です。
セフタジジムとは異なり、グラム陽性球菌に対しても抗菌活性を有します。
AmpC過剰産生菌に有効な抗菌薬は限られるため、使用時に院内のICT(infection control team、感染制御チーム)に届け出ることが一般的です。
おもなスペクトラム・適応
- 院内発症の肺炎
- 発熱性好中球減少症(FN)
- 免疫抑制患者の髄膜炎
通常使用量
2 g 8時間ごと(点滴静注)
内服薬
セファレキシン(CEX)
代表的な商品名
ケフレックス®
特徴
第1世代セフェム系に分類される内服薬です。セファゾリンと同じく、グラム陽性球菌であるレンサ球菌やMSSAに対する抗菌活性を有しています。
経口投与ではバイオアベイラビリティが高いため*4、セファゾリン投与で改善した状態から内服に移行するケースや、当初から外来で管理できる軽症例に適していると言えます。
おもなスペクトラム・適応
- 市中発症の軽症皮膚軟部組織感染症(毛包炎・せつ・丹毒・蜂窩織炎など)
- 乳腺炎
- 溶連菌咽頭炎
- 市中発症の尿路感染症(感受性のある場合)
通常使用量
250~500 mg 6時間ごと(経口)
セファクロル(CCL)
代表的な商品名
ケフラール®
特徴
第2世代セフェム系に分類されます(「1.5世代」と呼ばれることもあります)。セファゾリン・セファレキシンと同様に、グラム陽性球菌であるレンサ球菌やMSSAに対する抗菌活性を有しています。セファレキシンとほぼ同様の抗菌スペクトラムですが、1日3回投与(8時間ごと)のため、6時間ごとの投与が必要なセファレキシンよりも飲み忘れやアドヒアランスの問題が少なくなります。
一方で、バイオアベイラビリティはセファレキシンよりやや低いとされます。 また、先述したAWaRe分類においてセファレキシンがAccess抗菌薬であるのに対し、セファクロルは「Watch抗菌薬」である点が異なります。抗菌薬適正使用体制加算の条件を意識する場合は注意しましょう。
「抗菌薬適正使用体制加算」とは?AMR対策との関連や算定要件・今後の展望を考察
おもなスペクトラム・適応
- 市中発症の軽症皮膚軟部組織感染症
- 乳腺炎
- 溶連菌咽頭炎
- 市中発症の尿路感染症(感受性がある場合)
通常使用量
250~500 mg 8時間ごと(経口投与)
セフジニル(CFDN)・セフカペンピボキシル(CFPN-PI)・セフジトレンピボキシル(CDTR-PI)・セフボドキシムプロキセチル(CPDX-PR)【第3世代】
最後に、第3世代セフェム系の内服薬をまとめて紹介します。
代表的な商品名
セフゾン®、フロモックス®、メイアクトMS®、バナン®
特徴
第3世代のためPRSPやBLNARにも抗菌活性を有し、これらが原因となる中耳炎や副鼻腔炎に対する治療選択肢の一つとなります。
一方で、バイオアベイラビリティが低い傾向にあり、十分な効果を発揮するためには比較的多い投与量が必要です。乱用によって耐性菌の出現が懸念される点も注意が必要です。
広域抗菌薬のため、本来は第一選択薬となることが少ない薬剤ですが、現在の日本では必要量より多く処方されていると考えられています。国の『薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン』で使用量削減が掲げられている点に留意しましょう。
「耐性菌」とは?薬剤耐性(AMR)の原因や対策など基本事項を解説【医師向け】
おもなスペクトラム・適応
- インフルエンザ桿菌耐性株
- 急性中耳炎・急性副鼻腔炎の第二・三選択薬
副作用
ピボキシル基を有する抗菌薬であり、低カルニチン血症に伴って低血糖・痙攣・脳症などを引き起こした例が報告されています。小児、とくに乳幼児への投与は注意が必要です。
薬剤耐性(AMR)対策|厚生労働省
└薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン
薬剤耐性(AMR)アクションプラン 2023-2027|厚生労働省
診療ガイドライン/手引き・マニュアル|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
└鼻副鼻腔炎診療の手引き
└小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版
ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について(2012年4月)|医薬品医療機器総合機構(PMDA)
まとめ
今回はセフェム系抗生物質について見てきました。種類が多いですが、世代ごとに分けて考えることで抗菌スペクトラムや対象疾患を整理しやすくなるでしょう。
ドクタービジョンでは、セフェム系のほか、ペニシリン系やニューキノロン系など、主要9系統の頻用抗菌薬を一覧表でまとめたPDFを用意しています。無料でダウンロードできますので、気になる先生はこの機会にダウンロードしてみてください。
岡秀昭:感染症プラチナマニュアル Vol.8 2023-2024.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2023
青木眞:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版.医学書院,2015
薬剤耐性(AMR)対策|厚生労働省
└抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・入院編(*4)
各種薬剤 添付文書(医療用医薬品 情報検索|医薬品医療機器総合機構)
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