診療報酬改定は2年ごとに行われ、その都度、改定に関する適切な情報のアップデートと組織対応が必要になります。2026(令和8)年度もさまざまな見直しが実施されました。
このコラムでは、筆者の専門領域であるリハビリテーション分野に焦点をあて、回復期リハビリテーション病棟や疾患別リハビリテーション、リハビリテーション管理に関する改定などについて、背景にある議論や関連するエビデンスにも触れながら、現場への影響を含めて解説します。

執筆者:三田 大介
2026年度診療報酬改定から読み取れる方向性~量と質の両立~
今回の改定から読み取れるメッセージは、「リハビリテーションの量と質の両立」です。休日を含めたリハビリテーション体制を整備することによって提供量を底上げする一方、実績指数や多職種連携、摂食嚥下・排尿・退院支援などを評価することで、質の向上も求める内容となっています。
ここからは、回復期リハビリテーション病棟・疾患別リハビリテーション・管理・多職種連携に分けて、おもな改定内容を解説します。
回復期リハビリテーション病棟に関する改定

入院料における休日リハビリテーションの見直し
まず、「回復期リハビリテーション病棟入院料」の見直しです。 これまでの制度では、休日を含むすべての日にリハビリテーション提供体制が求められるのは、入院料1・2のみでした。今回の改定では、入院料3・4にも同様の要件が追加されています。これにより、入院料1から4までの区分において、曜日を問わない提供体制の整備が必要になりました。
これは亜急性期を対象としたPeirisらの、週6日のリハビリテーションが機能回復に有用だとする報告*1にも合う改定です。
これまで休日にも十分なリハビリテーションを実施していた施設にとっては、大きな変更ではないかもしれません。一方、従来は入院料3・4を算定しており、休日の提供量が少なかった施設にとっては、療法士のシフトや勤務形態の見直しが必要になります。場合によっては医師にもかかわる、施設全体の就業規則や労働契約の見直しが必要となる大きな変更点です。
Casey L Peiris,et al.:Additional Saturday rehabilitation improves functional independence and quality of life and reduces length of stay: a randomized controlled trial.BMC Med 11(198),2013(*1)
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重症患者の範囲と実績指数の見直し
入院料の算定要件となる重症患者さんの基準についても見直しが行われました。
日常生活機能評価10点以上という基準は維持されましたが、FIM(機能的自立度評価法)による基準は55点以下から21点以上55点以下へ変更されています。また、対象疾患に高次脳機能障害と脊髄損傷が新たに追加されました。
重症患者さんの新規受入割合は、入院料1・2では40%以上→35%以上に、入院料3・4では30%以上→25%以上に引き下げられています。退院時に日常生活機能評価またはFIMが改善した割合を求める要件も廃止されました。これは単純な緩和というより、重症の範囲を整理したうえで、受入割合や改善率の要件を見直した改定と考えられます。
一方、リハビリテーション実績指数については、逆に厳しくなる方向に改定されました。入院料1では40以上から42以上に、入院料3では35以上から37以上に引き上げられています。これまで実績指数の基準がなかった、入院料2・4にも32以上という要件が新設されました。
回復期リハビリテーション強化体制加算の新設
今回の改定でとくに注目されているのが、「回復期リハビリテーション強化体制加算」の新設です。この加算の要件は以下のとおりです。
【回復期リハビリテーション強化体制加算の施設基準】
イ 回復期リハビリテーション病棟入院料1の施設基準を満たしていること。
ロ リハビリテーションの効果に係る実績の指数が四十八以上であること。
ハ 退院前訪問指導について、十分な実績を有していること。
ニ 排尿自立支援加算に係る届出を行っている保険医療機関であること。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年9月3日閲覧)
歩行・トイレ動作の自立に対する評価が高まったものの、これまでの入院料1の実績指数条件が40以上だったことをふまえると、「ロ」の「48以上」という要件は非常に厳しいものと言わざるを得ません。
日本慢性期医療協会の調査では、回復期リハビリテーション病棟や療養病棟などへの新規の入院患者さんのうち10.6%が、膀胱留置カテーテルを挿入された状態で入院していました*2。
上記「二」のとおり、新加算で排尿自立支援加算の届出が要件に盛り込まれた背景には、このような情勢も加味されているのでしょう。算定できるようになるための講習やチーム運営は決して楽なことではありませんが、患者さんの排尿自立を支援できる体制づくりは重要と言えます。
急性期機能を有する病棟からの膀胱留置カテーテル持ち込み患者とその実態についての調査 結果報告│日本慢性期医療協会(*2)
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疾患別リハビリテーションに関する改定
2026年度の改定では、回復期以外の病棟でも幅広く提供される「疾患別リハビリテーション」についても、充実した介入が求められています。とくに離床を伴わない訓練に関する算定基準は、これまでにない内容にも踏み込むものであり、より必要性の高いリハビリテーションの提供を促すメッセージとも感じられます。
早期リハビリテーション加算の見直し
「早期リハビリテーション加算」は、これまで多くの疾患別リハビリテーションにおいて、発症や手術、急性増悪などを起算日として30日間、1単位につき25点を算定するものでした。
今回の改定では、入院日から起算して3日目までは1単位につき60点、4日目から14日目までは25点に見直されています。算定できる期間は短くなりましたが、入院直後の評価は大きく引き上げられました。ただし、他院から転院した患者さんの場合、起算日は転院日ではなく転院前の医療機関に入院した日となるので注意が必要です。
休日リハビリテーション加算の新設
急性期病院においても、休日のリハビリテーション介入を促す改定が行われています。休日に疾患別リハビリテーションを実施した場合、1単位につき25点を算定できるようになりました。対象期間は疾患によって一部異なりますが、発症・手術・急性増悪など所定の起算日から30日目までです。
これまで急性期病棟における休日のリハビリテーションは、診療報酬上では十分に評価されていませんでした。今回の加算新設は、急性期病院でも休日に療法士を配置し、平日と同様に充実したリハビリテーション介入を行う後押しになると考えられます。一方で、実際に休日の提供量を増やすためには、スタッフのシフトや勤務体制の見直しも必要になるでしょう。
急性期脳卒中の患者さんを対象に研究を行ったKinoshitaらの報告では、週7日のリハビリテーションが有用であるとしており*3、エビデンスにも合う改定となっています。
離床を伴わない訓練に関する算定基準の新設
今回の改定では、リハビリテーションの訓練内容に基準が設けられたことが特徴です。
ベッド上から移動せず、ポジショニングや拘縮予防などを目的とした他動的な訓練のみを20分以上行った場合、所定点数の90%での算定(10%減算)となります。患者さん1人につき1日2単位までという制限も設けられました。
注意が必要なのは、すべてのベッド上訓練が減算されるわけではないことです。以下の患者さんについては、減算対象から除外されます。
- 救命救急・集中治療などの管理下にある患者さん
- 15歳未満の小児
- ベッド上からの移動が難しく、3単位以上の個別療法が医学的に必要であると医師がとくに認めた患者さん
※この場合には、離床が難しい医学的理由や長時間のリハビリテーションが必要な理由、訓練内容を、診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf(2026年9月3日閲覧)
リハビリテーション管理に関する改定

リハビリテーション領域では、文書の作成や患者さんへの説明など管理業務も重要です。2026年度の改定では、事務負担の軽減やタスク・シフトの意図が読み取れます。具体的にどのような見直しが行われたのか、見ていきましょう。
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計画書様式の統一
これまで違いがわかりにくかったリハビリテーション実施計画書とリハビリテーション総合実施計画書の様式が統一されました。
記載内容も整理され、栄養やICF(国際生活機能分類)をふまえた項目を含めて、患者さんの状態を一体的に把握する構成となりました。一方で、患者さんや家族の署名欄は廃止されています。
計画書の説明は、医師だけでなく看護師やリハビリテーションスタッフも行えるように緩和されました。ただし、「リハビリテーション総合計画評価料」を算定するためには、これまでと同様に多職種で評価し、共同して計画書を作成する必要があります。
回復期リハビリテーション病棟では引き続き医師による説明が必要であるため、注意が必要です。
計画書の作成や説明そのものが不要になったわけではありませんが、多職種で役割を分担しやすくなったことは、現場にとって大きな変更と言えます。
目標設定等支援・管理料の廃止
これまでは、介護保険サービスへの移行が予見される場合、適切な説明文書を作成することで「目標設定等支援・管理料」を算定することができました。今回の改定ではこれらが廃止され、同時に未算定時の減算も廃止されました。
現場にとっては書類業務の削減になり、患者さんにとっても類似の書類が1つ減ることで混乱を防げるため、実情に即した改定のように思えます。
算定項目はなくなりましたが、Plantらが「目標設定はセラピスト主導になりやすい」*4と指摘しているとおり、患者さんを主体とした目標設定が重要なことに変わりはありません。
退院時リハビリテーション指導料の要件化
「退院時リハビリテーション指導料」についても、算定対象が見直されました。これまでは当該医療機関に入院していた患者さんが対象でしたが、改定後は、入院中に疾患別リハビリテーション料や「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」、「早期離床・リハビリテーション加算」などを算定した患者さんに限定されます。
今回の変更は、実際に入院中のリハビリテーションにかかわった患者さんに対象を絞ることで、ただ漫然と算定するのではなく、目的を明確にさせる意図が感じられます。
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多職種連携に関する改定

近年では、リハビリテーション栄養という概念も普及してきています。リハビリテーションを効率良く実施していくためには、訓練だけでなく、栄養や口腔の面からの支援も重要です。今回の改定では、これらを多職種で取り組んでいく方向性が示されました。
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の拡充
急性期病棟におけるリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、従来の1日120点から、加算1の150点と加算2の90点に分けられました。
加算2では、療法士の配置や休日のリハビリテーション提供割合、ADL(日常生活動作)が低下した患者さんの割合といった基準が一部緩和されています。これにより、多くの施設が取り組みやすくなるでしょう。
また、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟でも算定可能となりました。急性期だけでなく、患者さんが地域へ戻るまでの過程でも、一体的な支援を広げようとする改定と言えるでしょう。
これらはYoshimuraらによる「リハ・栄養・口腔の三位一体アプローチが、身体機能や筋力などの改善に関連している」という報告*5にも合致しています。
Yoshihiro Yoshimura,et al.:Triad of rehabilitation, nutrition support, and oral management improves activities of daily living and muscle health in hospitalized patients after stroke.Clin Nutr ESPEN 63:837-844,2024(*5)
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摂食嚥下機能回復の推進
「摂食嚥下機能回復体制加算」1・2では、摂食嚥下支援チームに配置する言語聴覚士の要件が「専従」から「専任」へ変更されました。これにより、言語聴覚士が疾患別リハビリテーションなどの業務を掛け持ちしながら、同チームにも参加することが可能となります。
これまで人員確保の課題から届出が難しかった施設にとっては、体制を整えるきっかけになるでしょう。
医科歯科連携の推進
自施設に歯科医師がいない病院では、患者さんの口腔内の問題を把握しても、なかなか治療することはできません。
今回の改定では、連携する歯科医療機関へ患者さんを紹介し、入院中に歯科診療が行われた場合に、医科側が600点を算定できる「口腔管理連携加算」が新設されました。これに対応し、依頼を受けて歯科医師が入院患者さんへの訪問診療を行った場合、歯科側も500点の「医科連携訪問加算」を算定できます。
Suzukiらは、歯科衛生士の配置が回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカムを改善させるという報告*6をしています。理想は自施設で歯科医師・歯科衛生士を配置することですが、それができない場合にも、このような加算の存在が適切な治療を促す後押しとなるでしょう。
まとめ
2026年度診療報酬改定では、早期や休日のリハビリテーションを評価することで提供量を底上げする一方、実績指数や訓練内容、多職種連携を通じて質の向上も求められました。
制度への対応は現場の負担にもなりますが、改定の意図を理解し、自施設の体制や提供しているリハビリテーションの内容を見直すことが重要です。
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