在宅医療にかかわる際、多くの医師が直面する悩みの一つは、診療報酬の複雑さではないでしょうか。往診料・在宅患者訪問診療料・在宅時医学総合管理料・在宅自己注射指導管理料など、関連する算定項目は多岐にわたります。2024(令和6)年度診療報酬改定では「在宅医療DX情報活用加算」という新たな項目も登場しました。
経営の観点だけでなく、実際の臨床現場で「この患者さんにはどの算定項目を適用できるのか」と悩むケースも少なくないでしょう。
このコラムでは、在宅医療にかかわる主要な点数を往診・訪問診療・総合管理料・がん在宅医療などの切り口で整理していきます。開業医や在宅担当医はもちろん、将来在宅医療にかかわりたいと考えている先生方にも参考になれば幸いです。
▼このコラムは、執筆時点で施行中の診療報酬制度(2024(令和6)年度診療報酬改定)に基づいて解説しています。2026(令和8)年度診療報酬改定に関する最新情報は厚生労働省のページをご確認ください。

執筆者:Dr.SoS
在宅医療に対する診療報酬の扱い
診療報酬における在宅医療の位置付けはおおまかに、往診料・在宅患者訪問診療料などの行為ごとの評価と、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料などの月ごとの包括評価に分類されます。
これらの評価項目に人工呼吸器などの指導管理料や、検査・注射・投薬・処置料が追加されます。また、がん終末期においては在宅医療との関連が深く、特別な点数が設定されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf(2026年3月5日閲覧)
まずはこのような"レイヤー構造"を意識することで、在宅医療の診療報酬点数について理解しやすくなるでしょう。各レイヤーにどのような内容が含まれるかは、後ほど詳しく解説します。
在宅療養支援診療所とは
在宅医療の診療報酬は、医療機関が「在宅療養支援診療所(在支診)」または「在宅療養支援病院(在支病)」となることで全体的に増加する仕組みになっています。したがって経営面ではこれらの取得を目指すことが望ましいですが、複数の施設基準が定められています。
具体的には、下記のような条件を満たす必要があります。
- 24時間連絡を受ける体制の確保
- 24時間の往診体制
- 24時間の訪問看護体制
- 緊急時の入院体制 など
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf(2026年3月5日閲覧)
このように、在支診・在支病の取得は1人の医師のみでは難しく、複数の医師を確保することが求められます。
さらに「機能強化型在宅療養支援診療所」または「機能強化型在宅療養支援病院」という、より厳しい施設基準も存在します。条件として求められるのは、以下のとおりです。
- 在宅医療を担当する常勤の医師3人以上
- 過去1年間の緊急往診の実績10件以上
- 過去1年間の看取りの実績又は超・準超重症児の医学管理の実績 いずれか4件以上 など
【機能強化型在支診(単独型)の場合の基準】
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf(2026年3月5日閲覧)
どの段階までの取得を目指すかは、メリット・デメリットを比較検討することが大切です。
在宅医療に関する診療報酬点数【一覧】
ここからは、在宅医療に関する具体的な項目について見ていきましょう。おもな評価項目は以下のとおりです。
【在宅医療に関するおもな評価項目】
※点数は代表的な例を記載(同一建物居住者か否か、在支診の指定有無などで変動する場合がある)。2026(令和8)年度診療報酬改定で変更が予定されている場合はカッコで併記。
| 算定・加算項目 | 点数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 往診料 | 720点 | 基本となる診察料 |
| 在宅患者訪問診療料 | 888(890)点など | |
| 在宅時医学総合管理料 | 4,485点など ※病床あり・月2回以上の訪問診療・患者が2人以上9人以下の場合 |
月単位の包括的な管理料 |
| 施設入居時等医学総合管理料 | 3,225点など ※同上 |
|
| 在宅がん医療総合診療料 | 1,648(1,650)点など ※病床なし・処方箋交付ありの場合 |
がん患者などで算定可能な管理料 |
| 在宅療養指導管理料 | 650点など ※月27回以下の在宅自己注射の場合 |
在宅酸素療法や自己注射など、特別な治療に対する指導管理料 |
| 在宅医療DX情報活用加算 | 11点など | オンライン資格確認や電子処方箋などの活用を評価する加算 |
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html(2026年3月5日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html(2026年3月5日閲覧)
次の段落から、各項目について解説していきます。
令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省
└第2 改定の概要 1.個別改定項目について(令和8年2月13日)
└第3 関係法令・通知等(1)共通医科 1 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)「医科点数表」
往診料・在宅患者訪問診療料

まず在宅医療に対する算定の基本となるのが、「往診料」と「在宅患者訪問診療料」です。これは通常の外来診療における「初診料」や「再診料」に相当する項目と言えます。
急変時・状態悪化時などに患者さんなどからの求めに応じて臨時で行う診療は「往診料」、あらかじめ診療計画を立てて定期的に予定された訪問を行う場合は「在宅患者訪問診療料」として算定できます。
往診料については時間帯(夜間・深夜・休日)や緊急性に応じた加算が設定されています。
在宅患者訪問診療料は、診療場所が居宅か施設か、施設に併設された医療機関かどうかによって評価が変わります。有料老人ホームのように同一建物内に複数の患者さんがいる場合は、患者さん1人あたりの点数が下がる代わりに、医師の移動効率が上がる設計となっています。
訪問診療と往診の違いとは?診療報酬改定の動向も含めて医師向けに解説
在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料
「在宅時医学総合管理料」(在総管)と「施設入居時等医学総合管理料」(施設総管)は、いずれも月単位で在宅の患者さんを包括的に診ている場合の評価項目で、月に1回算定することができます。
往診料や在宅患者訪問診療料が「1回ごとの診察」を評価している一方で、これらの総合管理料は、かかりつけ医としての「継続的な管理」を評価するレイヤーと言えるでしょう。
これらは、患者さんの居住先によって算定する管理料が異なります。自宅やケアハウスなど"在宅系"の居住先であれば「在宅時医学総合管理料」が、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど"施設系"の居住先であれば「施設入居時等医学総合管理料」が対象となります。
両者とも、通院が困難な患者さんであること、療養計画書の作成や定期的な訪問診療が必要であることなどの条件は共通しています。また、在宅患者訪問診療料と同じく、単一建物内の診療患者数が増えるほど1人あたりの点数は下がる仕組みとなっています。
平成27年度在宅医療関連講師人材養成事業│厚生労働省・在宅医療助成 勇美記念財団
└p.92 総論3 居宅系施設等との連携
在宅(その6)│厚生労働省 第573回中央社会保険医療協議会 総会(2023年12月)
▼関連コラムはこちら
「かかりつけ医機能報告制度」とは?2025年度から必要な対応を一般医師向けに解説
在宅がん医療総合診療料・ターミナルケア関連

在宅医療において、多くの人がイメージするのはがん終末期の患者さんではないでしょうか。こうした患者さんを対象とした包括評価として、「在宅がん医療総合診療料」が存在します。
がん終末期の患者さんに対して提供する訪問診療や訪問看護・24時間対応などを評価する項目で、個々の訪問診察を積み上げるのではなく、在宅がん緩和ケア一式をまとめて評価するものです。
点数が高めに設定されていますが、訪問診療が週1回以上、訪問診療と訪問看護を行う日数が合わせて週4日以上であることなど、より細かな対応が求められます。
なお、同じ患者さんで在宅がん医療総合診療料と在宅時医学総合管理料を併算定することはできません。状況に応じて、どちらを選ぶか検討する必要があります。
終末期では、「在宅ターミナルケア加算」や「看取り加算」の取り扱いも重要となります。これらはターミナルケア(自宅で最期を迎えるまでのケア)を評価する項目で、2024年度の診療報酬改定で内容が見直されました。従来は「死亡日及び死亡前14日以内の計15日間に2回以上往診または訪問診療を行った患者」である必要がありましたが、改定により退院時共同指導を行っていれば算定可能となっています。
これにより、退院後まもなく亡くなることが想定されるケースに対しても要件を満たしやすくなり、在宅診療への介入をためらう懸念が軽減されたと言えるでしょう。
在宅療養指導管理料
「在宅療養指導管理料」は、特定の治療や医療機器の在宅管理に応じて算定可能な指導管理料です。
具体例には、在宅酸素療法や自己注射、在宅人工呼吸器などが挙げられます。
なかでも「在宅自己注射指導管理料」は、在宅医療にかかわらない医師にとっても比較的なじみのある管理料ではないでしょうか。これは患者さんが病態に応じて自己注射を行う場合に算定される項目です。
代表例には糖尿病治療に用いられるインスリンがありますが、ほかにも以下のような薬剤が対象となります。
- アドレナリン製剤:アナフィラキシー(エピペン®など)
- GLP-1受容体作動薬:糖尿病領域(普及が進んでいる新たな機序の自己注射薬)
- 生物学的製剤:関節リウマチ、乾癬、アトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患
とくに生物学的製剤は、その高い有効性から喘息や潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)など幅広い疾患・診療科でも用いられるようになっています。今後も算定機会の多い項目と言えるでしょう。
平成27年度 小児等在宅医療地域コア人材養成講習会│厚生労働省・国立成育医療研究センター
└p.106 各論2 在宅医療の仕組み
在宅自己注射について 参考資料│厚生労働省 第335回中央社会保険医療協議会総会(2016年8月)
保険請求QandA〈エピペン注射液(アドレナリン製剤)が在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加〉│兵庫県保険医協会
金子大樹・藤原杏奈・坂巻弘之:DeSCデータベースのレセプトデータを用いたバイオ医薬品およびバイオシミラー使用による医療費分析.新薬と臨牀72(7):563-575,2023
医薬品・医療機器等安全性情報No.406│医薬品医療機器総合機構・厚生労働省 └2.GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について
在宅医療DX情報活用加算

2024年度の診療報酬改定では、在宅医療そのものだけでなく、オンライン資格確認や電子処方箋などの情報基盤をどれだけ活用できているかも評価の対象になりました。
その一つの象徴が、新設された「在宅医療DX情報活用加算」です。在宅患者訪問診療料や在宅がん医療総合診療料に上乗せする形で「取得した診療情報・薬剤情報をふまえた在宅医療」を評価するものと位置付けられており、下記のような施設基準を満たす必要があります。
- オンライン請求を行っている
- オンライン資格確認を行う体制を有している
- 電子処方箋を発行する体制を有している
- 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有している(経過措置 令和8年5月31日まで) など
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001439601.pdf(2026年3月5日閲覧)
厚生労働省は医療DXの実現を重要視しており、オンライン資格確認や電子処方箋の導入、電子カルテ情報の標準化などは、その主要施策とされています。在宅医療DX情報活用加算が新設されたのも、この流れを反映していると言えるでしょう。
令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】│厚生労働省
医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)│厚生労働省
▼関連コラムはこちら
医療DXの現状と展望―「令和ビジョン2030」の概要、進まない理由も考察
オンライン資格確認とは?導入義務化の背景や開始に必要な手続きを解説
EHR(電子健康記録)の現状と今後の展望は?EMRとの違いやPHRとの連携も含めて解説
まとめ
在宅医療の診療報酬は、往診・訪問診療といった行為別の評価、在総管・施設総管・在宅がん医療総合診療料といった包括評価、さらに自己注射や在宅人工呼吸器などを支える指導管理料などが折り重なって計算されます。近年は医療DX推進の流れを受けて、在宅医療DX情報活用加算も加わりました。
実務面では個々の点数を覚えるよりも、「訪問診療にどの総合管理料を組み合わせるか」、「どの医療機器・治療にどの指導管理料が紐付くか」というレイヤー構造を意識すると理解が進むでしょう。
このコラムが在宅医療の診療報酬点数を理解する一助となれば幸いです。
令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】│厚生労働省 令和6年度診療報酬改定について│厚生労働省 └第3 関係法令等(2)1 診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 別表第一「医科点数表」
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