多職種連携による地域包括ケアと社会貢献を両立する【和光会グループ/山田病院】

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インタビュー 医療機関

公開日:2021.02.03

多職種連携による地域包括ケアと社会貢献を両立する【和光会グループ/山田病院】

多職種連携による地域包括ケアと社会貢献を両立する【和光会グループ/山田病院】

1925年に岐阜市に開設した内科小児科有床診療所をはじまりとして、今では医療のみならず介護、障がい、子育てと地域のニーズに応えサービスの幅を広げてきた和光会グループ。医療を背景とした質の高いサービスで岐阜市及び近隣の地域住民の生活を支えています。

今回は、そんな和光会グループで理事長を務める山田豪氏にお話を伺いました。

和光会グループ理事長山田豪氏の写真

和光会グループ 理事長(医師):山田 豪 氏

京都大学医学部附属病院、兵庫県立尼崎病院、倉敷中央病院などを経て、2015年医療法人和光会理事長、2016年社会福祉法人和光会理事長。内分泌・代謝疾患が専門だが、在宅看取りや緩和ケアなど、在宅医療にも積極的に取り組んでいる。

介護、医療、在宅。領域の横断で、よりシームレスなケアを提供

介護、医療、在宅。領域の横断で、よりシームレスなケアを提供

まず、和光会グループの特徴について伺えますでしょうか。

医療法人、社会福祉法人が一体となった経営を行い、医療、介護はもちろん、障がいや子育てを含めた事業所が連携し、質の高いサービス提供を目指しています。医療機関としては、山田病院、山田メディカルクリニック、北方在宅クリニックがあり、超急性期以外は全てやるという意識で地域包括ケアにいち早く取り組んできました。病院から在宅までシームレスに患者さんを支える体制が大きな特徴です。グループとしての一体感や変化を恐れないという組織文化があります。

また、地域とのつながりは強いです。初代の理事長を覚えていらっしゃる患者さんもいますし、介護事業を始めてからは、事業所があるさまざまな地域で地元との繋がりが強くなりました。サービスの展開エリアが広いことも特徴で、岐阜市と近郊の市町村と比較的広範囲に事業所を設けて地域をカバーしています。

なるほど。そうした地元とのつながりがあるのは、昔から地域の方たちに寄り添ったサービスを提供してきたからこそでしょうね。

そうですね。開業当時は今よりも遠くまで往診していたと聞いていますし、病院になってからも肝臓病の専門病院として遠方から多くの患者さんが来院されていました。岐阜には同規模の中小病院は数多くありますが、当グループの規模で在宅サービスを展開しているところはほとんどありませんし、医療と介護の連携には強みがあると思います。

和光会グループで岐阜市を中心に事業を展開されてきたなかで、どうして在宅医療に注力されてきたのでしょうか?

私が岐阜に戻った6年程前までは、和光会もどちらかというと施設への訪問診療が多くなっていました。しかし、岐阜市は持ち家率が高いので個人宅への訪問ニーズがありましたし、とくに岐阜市北西部や北方町、本巣市には在宅医療を提供する医療機関がほとんどなく、ほかの在宅クリニックの先生や急性期病院からも「是非やってはどうか」と勧められたことも理由の一つです。実際にやってみると、いわゆる地域包括ケアシステムや多職種連携をうまく機能させるためには在宅医療がとても重要であると実感しました。

山田理事長が地域に根ざした医療を目指すのは、どのような理由があるのでしょうか?

必ずしも自分達がやりたいことができるわけではありません。地域の実情を見たときに、それこそが現在我々が求められていることであり、やるべき医療だと思ったからです。山田病院も30年前は救急車を毎日受けていました。しかし、今は公的な医療機関を中心に、急性期医療は集約されています。以前から「治す医療から支える医療へ」、「病院完結型医療から地域完結型医療へ」というニーズがありましたので、そんな中で地域に根差した医療を提供していくのは自然の流れだと思います。

【不安なく働ける職場づくり】「和光会の医師だ」と胸を張って言える職場に

【不安なく働ける職場づくり】「和光会の医師だ」と胸を張って言える職場に

山田理事長は、職員に対してどのような職場にしたいと考えていますか?

誇りを持てる職場、また安心して働ける職場にしたいと思っています。医師が病院など職場を探す際には、やりがい、環境、給与、ネームバリューなど様々なことを検討されると思います。とくに急性期病院から当院のような地域の病院に移ろうという場合には、ワークライフバランスや給与面を重視していることが多いでしょう。ただそれだけではなく、常勤医として勤めるからには「その病院の医師だと自信を持って言える」ことも重要だと思います

いくら慢性期医療をやっているからと言って、周りから「あの病院はちょっと・・・」と言われるようでは嫌でしょうし、やはり「いい医療をやっている」と同業者からも信頼される病院でありたいと思っています。先程のなぜ地域医療をやるのかという話にも関わりますが、地域医療・地域包括ケアで一番の病院、法人になりたいと思っています

医師がプライドをもって働けるように...という意識を理事長自ら抱いていらっしゃるのが素敵ですね。医師をはじめとするスタッフたちが気持ちよく働くために、具体的にどのような点に注力されているのでしょうか?

私自身、岐阜に戻る前は、常勤としては大きな総合病院での専門医経験しかなかったので、医師が感じる不安や戸惑いはだいたい理解できます。専門外の疾患を診ることや手技についての不安はもちろん、治療目標の設定や介護との連携など、よく分からないことも多いと思います。和光会ではこういった不安を払拭し、安心して働ける環境づくりに取り組んできました。

もちろん一般的な疾患については徐々に経験を積んで慣れて頂きたいと思いますが、比較的色々な専門性を持った医師が法人内にいますので、気軽に相談できる環境を整えています。

また、山田病院では毎朝前日の緊急入院の治療方針を医師全員で確認し、なんでも相談できる時間を設けています。胃瘻交換やCV挿入なども必ずしも主治医が行う必要はありません。在宅医療でも循環器内科や精神科、皮膚科、整形外科など必要に応じて法人内の各専門医からのアドバイスをもらえるようにしています。

ですから、そういった面での不満はあまり聞きませんね。中小病院は個人プレーになりがちですが、和光会では病院、あるいは法人全体でよい医療を提供することを目指しています。病院はこじんまりとした医局ですので、コミュニケーションも取りやすいと思います。

若手が多く活躍。ワークライフバランスを保ちやすい職場

実際に働かれている方のなかには、どんな方が多いですか?

和光会の職員は1,600人ほどおりますが、「優しい」方が多いです。確かにあまりガツガツしていない、穏やかな方が多い印象です。医師については若いドクターが増えてきたのも特徴でしょう。中小病院では医師の年齢は高いことが多いですが、30代、40代の医師が入職してくれるようになりました。また、岐阜大学とは良好な関係を保っていますが、医師はいわゆる医局派遣ではないので、出身大学は様々です。

そうした若い方たちが和光会グループを選ぶのには、どのような理由があるのでしょうか。

どうでしょうか。最近の傾向としては、家を建てたり、お子さんが小学校に上がるタイミングなどでUターンで入職されることが多いので、"ワークライフバランス"でしょうか。ただ、単に「急性期病院に疲れたから」とか「楽したいから」というわけではなく、「地域医療にも興味がある」「新しいフィールドで頑張ってみたい」という方が多い気がします。そういうときに和光会を選択して頂けるのはうれしいですね。

仕事のやりがいとプライベートを両立しやすい環境が整えられているということでしょうか?

そうですね、病院の医師は夜中に呼ばれることはなく、基本的に残業もほとんどありませんので、ワークライフバランスは保ちやすいでしょう。在宅医療についても、法人全体でオンコール体制を敷いています。

また、保育施設や病児保育、夏休み、冬休みなど長期休みには法人で学童保育もあり、安心して働ける環境づくりに取り組んでいます。そのほか家庭の状況に合わせて勤務時間の調整や、法人内での異動も可能です。そのためワークライフバランスを保ちながらも、「在宅の経験を積むなどのスキルアップも可能です。

最近の取り組みとしては、頑張りや貢献を評価する目的で、受け持った患者数や重症患者数に応じて、インセンティブをつけることを始めました。こちらはまだ始めたばかりですが、なるべくやりがいをもって働いてもらえるようにと思っています。

今後のビジョンとグループへの想い

今後のビジョンとグループへの想い

和光会グループでは、SDGsへの取り組みなども積極的にされているのも印象的です。

以前から和光会グループは医療、介護とは直接関係のないことも多く取り組んできました。私も入職した時に、「なぜこんなことをやっているのか」と思うこともありましたが、グループ内での取り組みを整理、説明するのにSDGsが適していました。社会のニーズが変わるなかで、我々のような業種もSDGsに取り組むことは有益だと考えています。また、やるなら早くやるというのが我々のスタイルでもあります。

和光会グループの今後のビジョンについて教えてください。

医療に限らず、グループとして中長期計画に則り事業を進めています。それぞれ地域に必要とされる事業を行い、拡大していく方針です。具体的には、在宅医療の分野は訪問看護に注力していますし、今年は現在改装中の旧老健が障がい者施設に生まれ変わります。規模は拡大しますが、大規模化することでより効率的に、むしろ質は上げていけると思っています。

どのような医師に働いて欲しいと考えていますか?

医師に求めるのは、基本的な診療技術以外には、コミュニケーション能力や協調性、フットワークの軽さでしょうか。我々と一緒に和光会グループの発展、地域に貢献して頂ける医師をお迎えしたいです。

最後に、医師の方へメッセージをお願いします。

和光会は超急性期病院ではありませんし、岐阜に縁のない方には中々選択肢にはあがらないかもしれません。ただ色々な経験が積めますし、ご自身のスキルや経験を地域で生かすことには新しい発見があると思います。また岐阜は名古屋まですぐですし、自然も豊かで意外といいところですよ。

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ドクタービジョン編集部

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